川棚温泉物語1-2へ
●告白小説(この小説は事実をもとに作った小説です)



   温泉旅館の主人に誘われるまま、幸福な家庭と妻子を捨てて、
 男のもとに出奔した私。
 十年の純愛ののちにたち現れる男たちの数々。

川棚温泉物語  

                          不倒翁甚平


(1)彦太郎さんの愛に包まれて

 秋の彼岸が過ぎると急速に夏が去り、朝晩の冷え込みが強くなる。一雨降る毎に山の紅葉が色づきを増し、晴れた日は空が果てもなく高かった。私がここ川棚温泉に住みついてから、かれこれ十年の歳月が過ぎようとしていた。
 妻子も身寄りも棄ててしまった私には、そんな季節のうつろいを醒めた心で見守る癖がついている。家にいても道を歩いていても私の心を動かすのは、男の体だけである。それも年配の肥った男に限られる。そんな性を秘めてやがて六十二歳が近かった。

 私は、温泉旅館秀明館の主人彦太郎さんの口添えで、旅館の一階東端にある六畳間に寝起きしている。本職が按摩であるから、係の人から連絡があると、朝でも深夜でもいそいそと部屋迄出かけて、宿泊客の体を按摩してあげるのだ。もともと男好きの私にとってこの仕事はそれ程辛いものではなかった。特に男性客から指名があると、その人がどんな男かと色々想像するのが楽しかった。

 そして、一週間に二度位の割で店主の彦太郎さんが私を抱きに来るのも楽しかった。彼は欲情すると深夜過ぎに来て二回も続けて放出するかと思えば、一週間近く来ない事もあった。彼に惚れて妻子を捨てて旅館住いを決心した私にとって、彼の訪問は唯一の生き甲斐だった。でっぷり肥って男振りのいい彦太郎さんの体を思い出すだけで私は幸せだった。

 彼は私の部屋の合い鍵を持っているので、気が向けば何時でもこられた。部屋に入って来ると何時でも「ゴロー」と私を呼ぶ。私の名が五郎であるから当然な事だが、彼にそう呼ばれると犬にでもなった気がして嬉しいのだ。私は彼の傍に駆け寄るとすぐ股の中に首を入れる。彼は一年中和服を着ているので、下着は長襦袢と越中ふんどしだけである。

 彼は入口のドアを背にして仁王立ちし、私が口を使い易いように股を左右に開く。半勃ちの彼の亀頭を口に入れて丹念に舐めると、ぐんぐん大きくなってやがて石のように固くなる。知り合ってから十年以上が過ぎているが、彼の精力は一向に衰える気配もな<、とても六十四歳には見えない。特に陰茎の色艶や全体の反り具合、亀頭冠の重厚さ等は六十歳過ぎ頃から一層逞しさを増したような気がする。

 彼は、口にくわえて喜ぶ私をひきずり乍らベッドに移動して大の字に寝転がる。私の口の中のものが、反り返って上顎をこする。私は左手を双玉の奥に差し入れて手の平に乗せ揉み乍ら雁の周辺を舐める。最大限に大きくなったものを口から吐き出すと、二、三度うねり乍らバウンドして、亀頭がぺたりと太鼓腹に張りつく。カーブを画いた鉄兜のような亀頭が私の唾にぬれ赤紫色にてらてら光っている。雁の周辺部がいくらか白っぽくなっているが、その裏側は黒紫に色づいて小さなぶつぶつが無数につらなっている。相当使い馴れた私の最愛のものに唾を一杯ふくませる。

 そして私はうしろ向きになって、彼の亀頭を私のバツクにあてがい、小刻みに尻を動かし乍らずるりと中に入れる。すっかり根元迄入ってしまうと私は上体をうしろに倒して、彼に抱いて貰う。彼が下からくいくいと突き上げる度、私は声を殺して肩で息をする。それから彼の命令のまま上体を前に倒す。反りの入った彼の巨根が直腸の内部をかき廻し、前立腺を刺激するので泣きたい程気持がいい。思わず声が出る。

 私は十年来彼の命ずるまま訓練されてきたので、そのままの姿勢でゆっくり前後に腰を使って、時々リズミカルに彼の亀頭のくびれをしぼってあげる。そんな動作を二十分程楽しんでいると、彼が猛獣のような声を出して私の背中にかみつき、どろどろと射精する。やがて弛緩の時が来て私のバックから引抜いたものを、私は喜んでぺろぺろ舐める。亀頭、雁、陰茎、鈴口等についた総ての汚れをこすりとるように丁寧に舐めとり、尿道の奥に残った精液の余りも絞り出して飲んであげる。彼は私の部屋に来ると大体このようなパターンで交わり、そっと部屋から出て行くのだった。

 彦太郎は私より二歳年長で、六十四歳のでっぷり肥った男である。赤ら顔の童顔でいつもにこにこ笑っているし、本職の旅館業の他に町会議員を三期もつとめる町の顔役でもある。頭髪が少く前頭部が禿げ上っているが、皮膚が厚く鼻も口も耳もぼってりと大きい。そんな彼が男好きだという事を知っているのは私と他に五、六人の男達だけである。

 私が彼と始めて知り合ったのは十二年程前の広島の旅館だった。当時、私はやっと五十歳になったばかりで家族三人と広島の町に住み、旅館等の出張治療で生計をたてていた。まだまだ生きる事に夢を持っていたし、若い時から心の奥深くに秘めていた男好きという性向もひたかくしして一所懸命に働き、家を建て子供を大学に通わせていた。そこに現われたのが彦太郎だった。旅館同業者達の親睦旅行で私に按摩を頼んだのである。

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