川棚温泉物語2-1へ
川棚温泉物語     
(2)家族を棄てて温泉地暮らし

 十二年前梅雨上りの太陽が朝からぎらぎら照りつけて息苦しい程暑い日の夕方だった。呼ばれてかけつけたホテルの一室で、彼は越中ふんどしだけの真裸で仁王立ちしていたのだ。それを見ただけで私の体がわなわなとふるえ、心の奥に秘めた欲望がぷすぷすと発酵し、私は生唾をのみこんだ。私の目が彼の分身を這い股間の一点で静止して激しく燃えた。そんな私を彼は、的確にこの種の男だと見抜いたようだった。

 彼は、私の視線を意識して肉厚の腰を二、三度小刻みに動かした。すると越中ふんどしの中のものが、音でも立てるようにぐいぐいと勃ち上って見事なテントを張るのが見えた。その瞬間、私は仮面をはいで敢然と行動したのだ。私は畳の上に這い、いざり乍ら彼の足許に近寄って両手で腰を抱いて彼の目を見た。まるで夢遊病者のようだった。それでも私は、一面識もない貴男にこんな事をしてもいいですかと必死で問いかけた。

 彼の優しい目が一度だけ頷いたようだった。然し次の瞬間、彼の目は鷲のそれのような鋭さで私を刺しつらぬいたのである。厳しいけれども、その底に男好きの男だけに分る色気と優しさを隠して私を狂喜させたのだ。私は自分が按摩だという事を忘れて、純白のふんどしをはらりとおとした。反り返って尚ぴくぴくとふるえる陰茎が私のすぐ眼前にあった。毎日毎日男女の体を按摩しながら、私の秘めた欲望は何時でも心の片隅に追いやられ、ひどく飢えていた。それだけに私の体がぴんと勃ち先走り液がじわじわとにじんだ。

 私は右手で重い双玉をすくいあげ、顔を股の中につっこんで鼻をならして匂いをかいだ。銭湯の湯気の匂いや甘ったるい体臭をたのしんだ後、いくらか背伸びして彼の亀頭を口に入れた。既に鈴口より先走液をたらしている彼のものは、根元より波をうって強くはねあがり、鉄かぶとのような亀頭が太鼓腹にぴたりと張りついている。私は唇で雁のくびれを締めつけ、えらの下側を舌で舐め頭を動かし乍ら、彼の表情を見た。彼の鋭い目が潤んで充血している。彼は唇をぴくぴく動かし始めて優しく尋ねた。

「うしろが使えるのか」

 私は彼のものを頬ばったまま目で大きく頷いた。すると彼は大の字に寝ころがって私の体を自分の太鼓腹の上に逆に乗せ、私に自分のものを舐めさせ乍ら、私の尻を両手でひろげ右手の中指をバックにさしこんでくるくる回して云った。

「この中に俺のが入るかなあ、入れてやるから痛くない様に唾をいっぱい塗っとけよ」

 私は六九の態位で彼の太鼓腹の上にぺたりと張りついて、バックに彼の毛のはえた指を入れられ、反り返った太マラを口にくわえて尺八している。ここしばらくバックの経験はなかったけれど、私の尻は三十年も昔按摩になりたての頃、師匠にあたる五十二歳の梅吉に毎夜の様に入れられて道はついていたし、その快楽を十分覚えていた。意識的にそんな受身の遊びを避けて過したが、彦太郎を見て一度に火がついた様だった。私のものの先からたらたらと先走液が洩れて、彼の太鼓腹に散り、夢中で彼の肥った体にしがみついた。

 彼は私を自分の腹の上からふりおとしあおむきに寝転がすと、私の顔の上に尻をおとして玉や蟻の戸渡りで私の目、鼻、口を撫ぜまわした。私は口を一杯にあけてぺろぺろと舐めた。私のバックは少しでも早く彼のものを受入れたくて収縮を始めたようだった。二十歳台の八年間、毎日のように梅吉師匠の巨大なものを受入れた記憶が、急に戻ったのだ。

 それを察した彦太郎が私の両足を肩にかつぎ、梅吉よりもずっと巨大なものを私のバックにあてがい、二、三度さぐりをいれたあと、あっという間に根元迄つき刺してしまったのである。久しぶりの極上の御馳走に私のバックは泣き乍ら受入れはしたけれど、雁が入る時傷付いたせいか強い痛みがあった。私は彦太郎が好きだったので泣きはしなかったが、そんな私の痛みが通じたらしく彼は入れたまま暫く動くことをやめ、そのままの姿勢を保って私のものをずるりずるりと愛撫してくれた。

「おとうちゃん」

 僅か二歳年上の彼に私はそう呼びかけて甘えた。痛みが快感に変るのにいくらの時間もかからなかった。私は、思わず「あ、いい」と呻いた。この快感は一体何だろうと思う。梅吉の時とは全く違う快感だった。何時の間にか彦太郎の巨大なものが、長いストロークで私の体を責め始めていた。太い両股が私の脇腹をはさみ、太鼓腹が私の一物を圧さえつけている。

 私は高く上げた両足をおろして彼の胴に巻きつかせ、潤んだ目で彼を見ている。そして彼の巨大なものが最大限に勃起し、私の直腸に突き刺さってぐるりと回転するような感蝕を伝えた時、括約筋をしめあげた。私はあまりの快感に声をあげて泣いた。彼は、私をぐんぐん快感の高みにおいあげながら、私の涙を全部舐めとり、然も私の体を急角度に二つに折り曲げ、玉迄入れこんでしまう程完全に挿入して命令したのである。

「川棚についてこい。俺の家は温泉旅館だから按摩の仕事はいくらでもある。俺はお前の体に惚れたぞ、おい、どうじゃ」

 私の体の中で彼のものが、あちこちをこつこつとノックし、段差のついた雁が前立腺を強くこすった。良質の快感がせめぎ合い乍ら収斂し、放散し、私は空中に浮いて飛んでいる様だった。殆ど意識はなかったけれど、私の心から三人の家族がどんどん遠ざかり、その後に彦太郎が肥った体で居坐った様だった。私は泣き乍らやっと答えた。

「おとうちゃん、川棚に連れていって」

 彦太郎は、類まれな太マラとでっぷり肥った体で、私を骨抜きにし家族から引き離して川棚温泉の秀明館に私を連れ去ったのである。

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