2月18日(水)
巴里 三日目。
朝早く アンバサダーホテルで ベルサイユ宮殿行きのバスに乗った。
あちらこちらで観光客をピックアップ、無駄な時間が流れた。
流暢に日本語を話すおばさんガイドと 宮殿の中を歩いた。
私には何もピンと来るものがない宮殿だった。
こんな素晴らしい宮殿も当時は、 着飾ったドレスをまとっていても
しゃがんであちらこちらで 小便などの用をたしていたかと思うと
奇妙な気分がした。
浦さんとは11時30分の約束、宮殿正面の馬の像の前で待つことに
なっていて 半日ツアーをここでキャンセルしていた
おそらく氷点下になっていると思われる今にも泣き出しそうな空。
12時をまわってやっと、浦さんが現れた。
やはり、氷点下になっていて 線路を点検して電車が遅れていたようだ。
「ベルサイユの街も素敵だから 辺りをちょっとぶらついて
昼食をとってから 電車に乗りましょう」と言う浦さんの提案で
街を歩いた。 教会にも入った。
氷点下の散歩・・・・唇が震える・・・
やっと、彼女のお気に入りの店に入った。
ウエイトレスの女性の フランス語の響きの美しいこと!
暖かいねぎのスープで体中の血液が溶けてくる中で 心地よく
浦さんとウエイトレスの会話を聞いていた。
私が 「フランス語って素敵ですね」と言うと
この辺りは 宮殿に住む人たちの流れで 言葉がとてもきれいなのだとか、
フランスの田園調布なのかも・・・・
寒い、寒い外に出て 駅へ歩き出したが やはり歩いては遠い。
バスを止めて 乗ることにした。
運転手さんは また、ただ乗りをさせてくれて駅に着いた。
急行に間に合わない!彼女が持っていた切符だけで回転式の改札を
通ることにした。
浦さんとスジャータさんは通過できた。
鈍くさい私とヒロコチャンは残されてしまった。
何と、浦さんは回転式のバーの下を「早く くぐって!」と
言うのだ。
「そんなこと、許されるの?」と言って 辺りをキョロキョロ見ながら
這ってくぐった。
誰もとがめなかった・・・浦さんは自分の切符を見せて
電車の中で 駅員さんに支払うつもりだった。
危険な行為をしてホームへ駆け込んだが 目の前で電車の扉は
閉まってしまった。
また、30分待つことになった。
キオスクのようなところでコーヒーを飲んだ。 こんな調子で
6時に帰って オペラ座へ行くことが出来るのだろうか・・・・
だんだん不安になってきた。
やっと、次の普通電車がやってきた。
車窓の風景はドンドン牧歌的になってきて うれしくなってきた。
しかし、5,6個目の駅で 停車したまま動かなくなってしまった。
時間はすでに3時30分になろうとしていた。
故障をしたようだ。
後続の急行に乗り換えることになって 乗務員は一等車に案内した。
降りる時には 改札がないので 結局ただ乗りをしたことになった。
彼女の話では 向こうのミスなのだから、
切符を持っていないことが分かっても 請求はできないそうだ。
巴里に来て 何回ただ乗りを我々はしているのか・・・・
それから20分ほど、 目的地のシャルトルの大聖堂がある駅に
着こうとする頃に 車窓には そびえ立つ教会が見えてきた。
浦さんが案内したいはずだ! 素晴らしい大聖堂・・・・
信者の彼女らは 年に一度 巴里から5日間歩いて
ここに来るという。
帰りには失敗は許されない。
しっかり屋のスジャータさんは浦さんを促して 帰りの切符を買った。
5時17分発、丁度一時間の見学タイムとなった
教会の鐘が美しい音色で4時の時を告げた。
なだらかな坂を登ると 教会が見えてきた。
薄暗い教会の中に入った。
ステンドグラスの美しいこと、時折、雲の切れ目か 日が射し込むと
ステンドグラスは 万華鏡のように輝いた。
ステンドグラス工房に立ち寄って 三人で浦さんにプレゼントを買った。
アパートを近々移ると言っていたので ステンドグラスをあしらった
キーホルダーをプレゼントすることにした。
5時を打つ 教会の鐘の音を聞きながら駅に向かった。
シャルトルの絵葉書 | シャルトルの夕焼けの絵葉書 |
巴里の・・・駅に着いた頃は 日が落ちて薄暗い。
タクシーで帰らないとオペラ座の公演に間に合わない。
浦さんとのお別れもそこそこに ホテルに帰った。
オペラ座に入るのには よほど気合いを入れたスタイルで行かないと・・・
と思っていた私は、派手この上ない出で立ちで臨んだ。
私の代名詞となっている“下駄”も さすが、ここでは履けない。
旅行社がとっていてくれた席は 前から5番目、ほぼ中央。
見上げると シャガールの絵が天井画になっていた。
お客さんの服装は 思いの外、質素。
私のコスチュームは 周囲から浮いていた。
「ジゼル」のバレーが始まった。
私は 目まぐるしい今日一日の行動のせいで、始まるやいなや
ウトウトと寝てしまった。
カーテンコールのざわめきで気が付いて みんなに習って
拍手をした。日本人女性が一人、チームに居た。
外では、当日の高価なチケットをダフ屋から手に入れようと、
いっぱいの人がいたというのに・・・・
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