ホワイトメタル キット 製作記

長年眠り続けていた模型の製作に取り組みました。
ハセガワのミュージアムモデル、1/8フォッカーDr.1です。


第一次世界大戦で活躍した撃墜王「リヒトフォーフェン」の愛機として知られる三葉の機体です。
ミュージアムモデルは、この機体の骨組みを、木材や金属を使用して精密に再現しています。
学生時代に手に入れたキットですが、あまりに手間がかかりそうで、手を付けられずにいました。
毛色の変わったものが造りたくなって、今回、30年ぶりの製作となりました。




30年くらい前のキットですが、中身を確認してみると、木材のパーツは汚れが見られるものの、十分使用できそうです。
パーツなどを束ねている輪ゴムは劣化してボロボロになっていましたが、タイヤなどのゴムパーツにも問題はなさそうです。
資料を探してみましたが、実機は現存していないらしく、詳細な写真も見つけることができませんでした。

※参考にされる場合は、ご注意ください。※
●資料不足につき、思い込みで製作しています。  
●製作順は、必ずしも設計図どおりではありません。
●木製部分の製作など、自己流部分が含まれます。



≪エンジンの製作≫

実は、エンジンだけ購入当時に組立着手して、途中でやめた状態になっていました。
(当時、技術もないのに無理に製作していたら、きっとキットを無駄にしていたことでしょう・・。)

まずは、接着して塗装してあったシリンダーなどの合わせ目などを修正し、塗装し直すことから始めます。

今回、塗装にはMrメタルカラーを使用し、素材の金属によって異なると思われる色合いで塗り分けてあります。
この塗料は、塗装後に磨くと金属光沢が発生し、通常のメタリック塗料よりも質感が格段に向上します。
磨きは面倒ですが、シリンダーのフィンの間などは、使い古しの歯ブラシを使用して磨くことができます。

各シリンダーに設置されている弁を開閉するプッシュロッドには、キットでは真鍮線がセットされていますが、真鍮色だと違和感があると思い、同じ径のステンレス線で作り直してあります。


≪機銃の製作≫

続いては、機銃を製作します。
銃身の放熱板部分は非常に薄い成型なので、しっかり接着しておかないと、後で開いてしまう恐れがあります。
今回はキットのパーツをそのまま使用しましたが、放熱板の中にある銃身は、少し細すぎるような気がするので、作り直した方が良いかもしれません。

機銃も同じMrメタルカラーの「アイアン」と「ダークアイアン」で塗り分けました。

銃床部分のプラパーツは、木材で作り直してみましたが、実機のこの部分が木製なのかどうか、資料がないので良くわかりません。


≪プロペラの製作≫

キットには木製のプロペラが付属しています。
木目の状態が気に入らなかったので、別の木材で製作しなおそうかとも思ったのですが、今回はそのまま利用することにしました。

まずキットのプロペラを紙ヤスリで何度も磨き上げ、水性の木材用着色剤で色を付けます。
水性塗料を吸うと木地が毛羽立ってくるので、また紙やすりで磨き、気に入った色合いになるまで塗装と磨きを繰り返します。
色合いが決まったら、今度は水性のニスを塗り、また磨きを行いながらツヤが出るまで繰り返します。

右側に写っているのは、翼端と尾部のソリです。
弓型の尾ソリはプラパーツでしたが、質感を重視するため、木材で作り直し、塗装を行いました。

次の機会には、ぜひ、薄板を積層させたプロペラの製作にチャレンジしてみたいと思います。


≪主脚の製作≫

キットのタイヤは、外周部にパーティングラインが出てしまっているので、紙ヤスリで磨いて、ラインを消しておきます。

説明書では、ホイールは「レッドバロン」の赤で塗装することになっていますが、ここだけが塗装されているのもおかしい気がします。
形状から、スポークに羽布張りの構造と考え、帆布の色にし、金属部分は明るめのアイアンにしてみました。

ゴムに劣化などは見られないものの、長年箱の中で押されていたためか、少々つぶれた感じになってしまっており、ホイールに取り付けると痩せた感じになってしまいます。
これを修正するため、棒状のスポンジをタイヤの中に入れて、ふくらみを持たせてからホイールに取り付けます。


≪胴体フレームの製作-1≫

胴体フレームは、基本的に棒状のフレームが平面的に構成され、黒のABSで成型されています。

設計年次の古さから、現代の模型と比較すると、パーティングや突出しピンの跡が目立ちます。
まずは、これを紙ヤスリなどで丁寧に修正していきますが、パイプ組のフレームなので、パーティングがかなり長く、とても時間がかかりました。

修正が済んだら、パーツを組み合わせて四角錐の胴体を組み上げます。
接着強度が必要なので、試作で使用しているABS専用の接着剤を利用し、組み立ててから塗装を行うことにしました。


≪胴体フレームの製作-2≫

組み上げたフレームを、塗装します。

フレームには、一部にホワイトメタルの金属パーツが使用されています。
説明書では、ガンメタの塗装指示がありますが、塗装してしまうとせっかくの金属パーツの意味がなくなると思い、このパーツの色に合わせてABSパーツを塗装することにしました。

まずサフを塗り、シルバーで下塗りした上に、Mrメタルカラーの「アイアン」を明るめに調色して塗装します。
ところが、組み立てたフレームは、簡易ブースに入らないほど大きいため、エアブラシ塗装には苦労しました。
フレームを磨き上げて(この作業がまた大変!)金属光沢が出たら、多用途接着剤で金属パーツを接着します。
ホワイトメタルのパーツは、表面が成型時の酸化被膜で覆われてくすんでいるので、細目の金属ブラシや紙ヤスリで磨き上げておきます。
全体が同じ色合いになり、金属光沢の胴体フレームが完成しました。


≪張線の準備≫

説明書では、次に胴体フレームに木材の床板などを取り付ける工程になっていますが、先に張線を施した方が作業しやすそうです。

張線は付属の糸を銅のパイプをカットしたスリーブに通して接着する方法で施工することになっています。
試してみると、銅のスリーブは、カットしたままの真円断面の状態では、糸が通しにくく、作業性が良くありません。
スリーブを小判形に潰すと、格段に糸が通しやすくなります。
ただし、ラジオペンチなどを使うと簡単にペチャンコになってしまうので、ラジオペンチに適当な太さの針金を巻き付け、必要以上に潰れないようにして作業します。
左が元の銅パイプ、右が潰した状態です。

グライダーを飛ばすウインチの牽引ワイヤーが切れた時にも、同じように小判形に潰した銅パイプのスリーブを使用して繋ぐので、当時の張線も同様の方法で行っていたのではないかと思います。


≪胴体フレームの張線≫

小判形に潰したスリーブを利用して、胴体フレームに張線を施していきます。

糸をフレームの対角に通してから、両端をスリーブに通し、瞬間接着剤を流し込んで固定することになります。
ところが、糸の両端を持ってテンションを与えた状態で接着剤を付けることができないので、一人で作業するのは困難です。

適当なテンションを加えた状態で糸を仮固定できる方法はないかと考え、洗濯ばさみを利用してみたのですが、挟む力が弱く、細い部分での作業には大きすぎます。
あれこれ試行錯誤した結果、ハンダ付け用の放熱ピンセットが、挟む力・大きさ共に最適なことがわかりました。
二本の糸を放熱ピンセットで挟むと手を離すことができるので、適当なテンションを加えた状態で、接着することができます。

この時に、糸のテンションが弱いとたるんでしまうし、テンションが強すぎるとフレームが歪んでしまうので、十分な注意が必要です。


≪ホワイトメタルパーツの準備≫

話が前後してしまいましたが、フレームの製作でも使用したホワイトメタルのパーツが多数あります。

これは、シリコンゴムの型に、溶かした金属を流し込んで製作されているのですが、プラスチックの金型のようには精度が良くないので、パーティングがずれていたりします。
また、成型時に酸化被膜で覆われてしまい、表面が錆びたようなくすんだ状態になるので、全体を磨く必要があります。

パーティングのズレを精密ヤスリで修正し、金属光沢が出るまで表面を紙ヤスリやワイヤーブラシで磨きます。

金型では再現できない複雑な形状のパーツはわかりますが、なぜ棒状のフレームの一部までホワイトメタルのパーツが使用されているのか、少し疑問です。


≪尾ソリの取付け≫

木材で製作して塗装しておいた尾ソリの上端部分にホワイトメタルパーツを接着します。
中央部分には、真鍮のパーツを折り曲げて巻きつけて接着し、回転軸を造ります。

出来上がった尾ソリは、上端のリング部分を二本のゴム紐で結び、回転軸はビスで止めます。
接地した時に、ビスを回転軸として動く尾ソリをゴム紐が支え、サスペンションとして機能します。

ビスは、強く締めてしまうとソリが動かなくなってしまうので、緩めに止めるのですが、緩んで取れてしまう可能性があるので、ナットを接着剤で固定しました。


≪コクピットの製作-1≫

コクピットの床と背面の仕切りは、3枚のベニヤ板で製作します。

それぞれのベニヤは、プロペラよりも明るめの色合いで塗装と磨きを行い、仕上げておきます。
ベニヤ板には反りが出ていたので、塗料を乾燥させる時に重りを載せて、平面に矯正しながら塗装を行いました。

この板を、ビスとナットで完成した胴体フレームに取り付けていきます。
設計図の手順を無視して先に張線を行ったため、背面の板の取り付けに少々手間取りましたが、無事に組み付けることができました。


≪コクピットの製作-2≫

フレームには、燃料タンク・弾丸ケース・メーター類を取り付けます。

燃料タンクと弾丸ケースは事前に組み立てて塗装しておきます。
メーター類はホワイトメタルなので、磨いて組み上げておいた物を、多用途接着剤でフレームに固定します。

操縦桿やフットバーは、回転軸となるメタルパーツに取り付けてから、胴体フレームに固定していきます。
各舵面を操作するワイヤーなどを取り付けてからの作業になるので、邪魔になる糸は束ねて適当な場所にテープ止めしておきます。

組み込んだ操縦桿は、作業中に胴体を傾けると、動いてあちこちにぶつかるので、マスキングテープでフレームに固定しておきます。


≪エンジン隔壁の製作-1≫

この機体の星形9気筒エンジンは、エンジン本体をフライホイールとして利用しているため、回転軸が機体に固定され、エンジン本体が回転するようになっています。
プロペラは、エンジンハウジングに固定され、エンジンと一緒に回転します。

エンジン隔壁は、アルミ製の円盤で、これに軸受けとなるエンジン補機を取り付けて製作します。
エンジンを取り付ける回転軸は、両端にネジを切ったφ3の真鍮棒でできています。

軸にエンジンを取り付けて胴体に仮組みしてみると、真鍮のパイプを利用している軸受けの精度が悪く、偏心して回転がガタついてしまうことがわかりました。
また、軸にエンジンを固定するナットを締めると、エンジンと隔壁が締め付けられて回転しなくなるという、とんでもない構造になっています。

電動で回転させるキットも用意されているようですが、この状態でモーターで回転させたら、空中分解しそうなほど振動することでしょう!
電動模型やラジコンを手掛けているタミヤなどのメーカーなら、こんな構造にはしなかったことでしょう。
   (>ハセガワ模型さん、機構設計は、ぜひ「からくり工房」へ!)


≪エンジン隔壁の製作-2≫

キットの構造のままではどうしようもないので、軸受けを作り直すことにしました。

せっかく塗装して完成させた軸受け部分ですが、一度分解し、φ3用軸受けメタル(簡易ベアリング)を組み込むことにしました。
前方・後方の二か所にメタルを組み込むと、軸のガタがなくなり、回転が格段にスムーズになりました。

回転軸は、タップを切りなおしてネジ部分を延長し、エンジンを両側からナットで挟んで、しっかり固定できるように改造しました。
軸受けの効果と相まって、エンジンがガタつくことがなくなり、精密感が増します。

胴体に仮組みしてみると、以前のような偏心は全く発生せず、エンジンがスムーズに回転するようになりました。
説明書では、エンジンの取り付けは最後の工程になっているのですが、他の部分が出来上がってしまってからでは、作り直しは困難だったと思います。
事前に仮組みして確認しておいて正解でした。


≪胴体外板の準備≫

次は、コクピット左右の胴体外板の取付けです。

片側3本ずつのヒノキ棒をフレームに取り付け、更に0.5o厚のベニヤ板を貼り付けるのですが、手で曲げてみると非常に硬く、どう考えても胴体の丸みに沿うとは思えません。
事前準備として、木材パーツに曲げ癖を付けることから始めます。

まず、ヒノキ棒とベニヤ板をしばらく熱湯に浸して柔らかくします。
ベニヤは濡れたままの状態で吸水用のタオルで挟み、一升瓶に巻きつけてから厚紙で巻いて、瓶の丸みに沿うようにしっかり固定します。
芯には適当な径の円柱状の物なら何でも利用できそうですが、身近で見つけた物の中では、一升瓶が最適な径でした。

ヒノキ棒は長めにカットし、二本を逆方向にねじった状態で、両端を強力クリップで挟み、自然乾燥させます。
こうすることで、ベニヤには曲げ癖が、ヒノキ棒にはねじり癖が付き、組み立てることができる状態になります。

説明書には組み立て方の記載は一切なく、ただ「接着してください。」としかありません。
他の部分にも言えることですが、説明書が非常にわかりにくく、不親切な内容なのは残念です。
ちなみに、再販のキットでは、外板パーツは合板のベニヤではなく、木の薄い一枚板を紙で裏打ちして曲がりやすくしたパーツに変更されているようです。


≪胴体外板の製作≫

乾燥して癖の付いた木材を、胴体フレームに取り付けます。

まず、ヒノキ棒ですが、中央の一本はまっすぐな棒、上下にはそれぞれ逆方向にねじった棒を接着します。

接着剤が完全に乾いたら、この棒に曲げ癖を付けた外板のベニヤを接着します。
このベニヤは事前に着色し、磨きを行っておきます。

曲げ癖が戻ってしまう可能性があるので、表面仕上げのニスは、接着剤が完全に乾燥してから塗布しました。
ツヤ消しの水性ニスを使用しましたが、一度塗りだと半ツヤのような状態に仕上げることができます。
ニスの必要もなさそうに思いますが、カビの発生などを考えると、表面をコーティングしておいた方が良いのではないかと思います。


≪キャブレターの取り付け≫

エンジンと一緒に組み立てておいたキャブレターを、胴体フレームに取り付けます。

キャブレターは、細い4本の足の先に取り付けるので、非常に不安定です。
さらに、真鍮製の吸気パイプをキャブレターに接着するのですが、取り付け部分にガタがあり、パイプが安定しません。
胴体外板の穴のなるべく中央にパイプが来るように、穴とパイプの隙間にスポンジを挟んで、接着剤が固まるまで保持することにしました。

これに完成したエンジン隔壁をビス止めすれば、胴体部分の完成です。
エンジンも組み込んでしまいたいところですが、カウリングを止めるパーツをフレームに接着すると、エンジン隔壁が取り外せなくなってしまうことがわかりました。
つくづく不親切なキットです・・。
まだまだ修正の必要がありそうなので、胴体はこの状態で一段落とします。


≪尾翼・エルロンの製作≫

主翼に取り掛かる前に、尾翼とエルロンを製作します。

胴体フレーム同様、ABSの成型パーツになっています。
まず、接着剤でパーツを組み立てていきますが、胴体以上に細い棒状のパーツで、接着面がRのままで平面になっていないため、接着面積が非常に小さく、接着強度に不安があります。

さらに、胴体フレームと同様に、色を合わせたMrメタルカラーで塗装を行います。
最後に磨き工程を行うわけですが、ここで嫌な予感が的中。
磨いているうちに接着部分がポロポロ取れます。
やはり、棒状のパーツどうしを点で接着したのでは、まったく強度がありません。

プラスチックの成形品ですから、接着面に平面を作っておくなどの設計上の配慮が欲しかったものです。


≪主翼の製作-1≫

いよいよ主翼の製作に取り掛かります。
主翼は、ベニヤ板を打ち抜いたパーツを組み合わせて製作します。

3枚ある主翼は、長方形のベニヤをボックス形状に組み合わせた主桁(メインスパー)に、翼形状のリブを取り付けて製作します。
主桁は、最も強度の必要な部分です。
塗装してから組み立てると接着強度が低下する可能性があると考え、一番最初に組み立てることにしました。

まずは、棒状のベニヤを3枚組み合わせて、コの字型断面の梁を製作するのですが、ベニヤパーツの打ち抜き面にはテーパーが付いてしまっているので、面で接着できるように端面をヤスリで垂直に整えます。
準備ができたら木工用ボンドで接着を行いますが、単に接着するだけでは、ベニヤの反りで変形が発生してしまいます。
歪みや捩じれを防ぐため、接着後に定盤に置いた状態で、上からMブロックなどを乗せて平坦になるように矯正し、接着剤が完全に乾くまでこの状態で放置しておきます。


≪主翼の製作-2≫

主翼用のベニヤパーツは、抜型によるプレス加工で製作されているため、あまり精度が良くなく、数ミリの誤差が発生してしまっています。
そのままの状態では使用できないので、事前準備を行います。

まずは、元のベニヤ板からパーツを取り外し、形状の調整を行い、粗目の紙ヤスリをかけてベニヤのササクレを取り除いておきます。
打ち抜き面に付いてしまっているテーパーも、垂直になるように外周面も整えておきます。
後縁のパーツは、先端が薄くなるようにヤスリで三角断面に加工を行います。

翼型のリブは、外周と肉抜きの丸穴を仕上げなくてはならないのですが、とにかく数が多いので、とても時間がかかります。
また、ベニヤ素材の経年劣化のせいか木の層が剥がれやすく、特に細くなっている後縁部分が頻繁に破損するので、補修しながらの作業を強いられました。
リブには、位置合わせのためのボスが付いており、途中までカットされている状態になっているのですが、このハーフカット部分の精度が特に悪く、そのままでは外形に段差ができてしまいます。
組み立ててからでは修正が困難なので、思い切って切り取ってリブ単体で形状を仕上げてしまいましたが、組み立てに支障はありませんでした。


≪主翼の製作-3≫

組み立ててしまうと、塗装や磨きの作業がしづらくなってしまいそうなので、先に塗装を行うことにしました。
ただし、ニスでコーティングしてしまうと、接着が弱くなってしまう事が懸念されるので、仕上げは組み立て後に行うことにしました。

パーツの準備ができたら、水性の木材用着色剤で色を付けます。
市販の状態では色合いが合わないので、数色を混ぜてオレンジ系に調色して使用しました。

ベニヤによっては、表面にワックス(接着剤?)のような処理がしてある物があるらしく、着色剤を弾いてしまうものがあるので、事前に粗目の紙ヤスリで表面を荒らしておく必要があります。
このベニヤは、ワックスのせいか紙ヤスリがすぐに目詰まりを起こすので、非常に作業性が悪く閉口しました。

水性着色剤はベニヤに浸透するので、塗装面の木繊維が浮き出して表面が荒れた状態になってしまいます。
塗料が乾いた状態で、軽く紙ヤスリをかけると表面が滑らかになって、ツヤが出てきます。
右の写真で、右側のリブ2枚が着色状態、左の2枚が磨いてツヤが出た状態です。
磨き工程を行うと、仕上がりの状態にかなりの差が出てきそうです。

先に製作しておいた主桁も同様に、磨きと塗装を行います。


≪エルロンの製作≫

プラパーツで金属部分を仕上げておいた動翼ですが、エルロンにだけ後縁に木製パーツが使用されています。
製作の順番は後でも構わないのですが、パーツとして組み上がった状態にしておきたかったので、パーツの準備が済んだところで先に仕上げてしまうことにしました。

仕上げを行っておいた波型のベニヤパーツは、取付け前にツヤ消しの水性ニスでコーティングを行っておきます。

ニスが完全に乾燥したら、エルロン本体の後縁に接着します。
コーティングされた木とプラスチックを接着することになるので、取付けには多用途接着剤を利用しました。


≪主翼の製作-4≫

ベニヤパーツの準備ができたので、いよいよ主翼の組み立てに取り掛かります。

組み立てて仕上げておいた主桁に、仕上げの済んだリブを差し込んで接着することで、主翼の形状を形作っていきます。
主桁のリブ取付け用の溝は、細すぎる個所もあるので、ヤスリを使って溝の幅をリブの厚みに合わせておきます。
また、差し込み幅が浅めの箇所もあるので、溝が深くなるように加工しておきます。
この加工で、リブの上下位置が調整しやすくなります。
場所によっては、前後の溝位置がずれて、リブが見るからに斜めになってしまう個所もあるので、リブが主桁に対して垂直に取り付けられるように修正しておきます。

すべてのリブには、前縁と後縁にヒノキ棒を取り付ける溝があるので、溝がずれないように、棒材を差し込んでチェックしながらリブの位置を決めて接着するようにします。
この作業を怠ると、後で取り付けるヒノキ棒が真っ直ぐにならず、前縁や後縁が上下に波打つように歪んでしまうので注意が必要です。

リブの中には、ベニヤが変形して曲がってしまっている物もあるので、まっすぐになるように調整しながら、前縁と後縁のヒノキ棒を接着します。
特に後縁部分は、リブの曲りによる誤差が大きくなるので、棒材の取り付けには注意が必要です。
まず、後縁用の波型のベニヤパーツを合わせてみて、山の部分とリブの位置が一致するように、リブと棒材の位置を調整します。
位置出しが済んだら、接着を行い、リブがずれないように、乾燥するまで洗濯ばさみなどで固定しておきます。

前縁の棒材も、リブの修整を行いながら接着します。


≪主翼の製作-5≫

リブの取付けが済んだら、リブの間に主桁上面のベニヤを取り付け、ボックス構造を完成させます。

リブの位置によって、上面のベニヤが大きすぎたり、斜めになってしまう個所があるので、きちんと納まるように形状を修正しならがら接着していきます。
ボックス構造が完成すると、主桁の強度が向上し、捩じれなどに対してかなりの強度を有するようになります。

さらに、取り付けたリブの後縁に波型の後縁パーツを取り付けます。
まず、リブ後端下面に20o程度の長さのヒノキ棒を接着することで、後縁パーツ取付けの接着用ベースとします。
このヒノキ棒の後端がずれてしまうと、後縁パーツとの間に隙間ができてしまうので、定規などで直線状に並んでいることを確認しながら取り付けていきます。

ヒノキ棒の接着が乾いたら、後縁パーツを取り付けます。
ヒノキ棒端面の小さな点での接着となりますので、隙間が空いたり、上下にずれたりしないように、翼と後縁パーツそれぞれに重りを載せて固定し、確実に接着するようにします。

説明書では、この部分の加工は、まったく異なる手順になっていますが、接着面が点になって強度がなく、スムーズに組み立てられないと判断し、このような手順に修正して組み立てました。


≪主翼の製作-6≫

次に、すべてのリブの上面と下面に、細長いヒノキ棒を接着して、端面形状を整える加工を行います。

まずは、上面のヒノキ棒から取り付けていきます。
リブ上面のヒノキ棒は、後端が後縁パーツ上面にまで延長するので、接着面積が増え、後縁パーツの固定が確実になります。
まず、ヒノキ棒の後端が、きちんと後縁パーツの上面に接するように、リブ後端の形状を修正します。

この作業では、写真の「マルチサンドペーパー」が非常に役に立ちました。
細長いリング状の紙ヤスリ用のホルダーで、使用した面を回転させることで常に新しい面で作業することのできるスグレモノです。

形状が出来上がったら、リブ上面に曲げ癖を付けたヒノキ棒を接着します。
後端は、後縁パーツと密着するように、斜めに削っておきます。
使用するヒノキ棒は、紙ヤスリでしごくように磨いてやると、簡単に曲げ癖を付けることができるので、翼形状に合わせた状態にしてから、木工ボンドで接着します。
ただし、折れやすいので、一度で極端なRを付けることは禁物です。

ヒノキ棒は、木工用ボンドが乾燥するまで、マスキングテープなどで固定しておきます。
後端は、後縁パーツとしっかり接着されるように、木工用ボンドが乾くまで洗濯ばさみで固定しておきます。

上面が終わったら、すべてのリブの下面にヒノキ棒を取り付けます。


≪主翼の製作-7≫

すべてのリブのヒノキ棒の取付けが完了したら、継ぎ目部分の形状を整えます。

リブの前縁部分は、曲率が小さくヒノキ棒を取り付けることができないので、ベニヤの端面がむき出しになっています。
また、ヒノキ棒どうしの繋ぎ目部分もあるので、これらの段差がなくなるように紙ヤスリで滑らかに整えます。

前縁のヒノキ棒は、リブの前縁からはみ出してしまっているので、翼形状に沿うように、上下の角を削ります。

すべてのリブの加工が完了したら、主翼の基本形状の完成です。
上翼には、エルロンが付くので、外翼後端部分が切り欠かれた形状になっています。

主翼が3枚もある機体なので、この作業を3回繰り返さなくてはなりません・・。
説明書どおりに上翼から製作を開始しましたが、アラの目立ちにくい下翼から作業を始めて、コツをつかんでから中・上翼を製作した方が良かったようです。(後の祭り・・)

※掲載写真は、なるべくわかりやすい物を使用していますので、上・中・下翼の写真が混在しています。


≪主翼の製作-8≫

キットでは、翼端パーツがプラスチックで成型されています。
せっかくの木製主翼の両端にプラスチックパーツが付くのは、非常に違和感がある気がするので、パーツを抜き終わったベニヤの余白を利用して、造り直すことにしました。

翼端の成型パーツには、上翼用と中・下翼用の二種類があります。
湾曲したパーツなので、曲がりやすい部分を選んで、主桁用の1.5o厚ベニヤの余白から、少し大きめに長方形を6個切り出します。
切り出したベニヤをプラパーツに当てて、外形と丸穴の形状を写し取り、デザインカッターで切り抜いて板の形状を製作します。
割れてしまうのではないかと心配しましたが、丁寧に加工すれば、丸穴もボール盤で問題なく開けることができます。

三角形の補強フランジも、同じベニヤから切り出しましたが、小さく加工性が悪いうえに数が多く、かなり手間がかかりました。

製作したパーツも、着色して磨き仕上げしておきます。


≪主翼の製作-9≫

ベニヤでオリジナル製作した翼端パーツを取り付けます。
ここからは、3枚の主翼の製作を並行して進めることにしました。

塗装した翼端パーツは、厚紙に挟んだ状態で湾曲させ、軽く曲げ癖を付けておきます。
プラパーツには、位置合わせ用のピンが3本出ているので、べニアパーツにも同じ位置に穴をあけて、0.5oのピアノ線を埋め込んでおきます。

翼端のリブには、取付け用の穴が3個あいているので、この穴に取り付けておいたピアノ線を差し込み、位置決めを行いながら木工用ボンドで接着し、マスキングテープで固定しておきます。

接着剤が固まったら、三角形の補強リブを上・下面とも3個ずつ接着します。
薄いべニアの端面だけの取付けは不安定ですが、補強リブを接着すると、しっかりと固定されます。
同じ作業を、3枚の主翼左右に対して繰り返します。

これで、主翼の木材部分の完成です。


≪主翼の製作-10≫

形状の出来上がった主翼の仕上げを行います。

主翼には、紙ヤスリで形状を修正した部分など、着色の取れてしまった部分があります。
これらの部分に、再度塗装を行い、周りの部分と違和感がないように色調を整えます。

塗料が完全に乾いたら、ニスで仕上げ塗装を行います。
ツヤ消しニスを使用しましたが、一度塗りだと半ツヤの状態になって、良い感じに仕上がります。
写真左側が仕上げ前の表面がザラついた状態、右側がニス仕上げで全体のツヤが整った状態です。

上翼には、主桁の中央部分に上板のない部分がありますが、ここには金属パーツが取り付けられるため、最終段階でベニヤを取り付けることになります。
後で取り付ける上板用のベニヤにも、ニスを塗って仕上げておきます。


≪主脚の製作≫

ここで、主翼はいったん休止。
同様にニス仕上げの必要な主脚を並行して製作します。

主脚は、主翼同様、ベニヤのボックス構造による主桁に、翼形状のリブを取り付ける構造になっています。

まず、長方形の主桁を造り、すべてのパーツに着色を施し、磨いておきます。
塗装が完了したら、主桁に4枚のリブを接着し、さらにリブの後方に後縁パーツを取り付けます。
後縁パーツは接着面積が小さいので、主翼の時と同様、ずれないように固定しながら接着します。

次に主桁の両端にホワイトメタルパーツを汎用接着剤でしっかり接着します。
金属パーツが固定されたら、4枚のリブの丸穴に丸棒を通して位置を合わせ、接着します。
この丸棒と後縁パーツに、両端のリブを取り付けるのですが、接着面積が小さいうえにガタが大きいので、しっかり接着されるように、多めに接着剤を付けて固定します。
接着剤が完全に乾いたら、すべての木製パーツに着色修正とニス仕上げを行います。

ニスが完全に乾いたら、車軸の真鍮パイプを主桁の中に通し、金属パーツと共にビスを通して、上下に可動するように固定します。
ビスは強く締め付けることができないので、後で緩まないよう、ナットを瞬間接着剤で接着しておきます。

次に、ホワイトメタルパーツと真鍮パイプに、ショックアブゾーバー用のゴム紐を巻き付けて結びます。
左右でゴム紐を結ぶ強さに違いがあると、完成した機体が傾いてしまう可能性があるので、適当な重りを載せて傾きをみながら、ゴムの張り具合を調整します。
張り具合が均等になったらしっかり結び、ほどけないように結び目を瞬間接着剤で固定しておきます。

これで、主脚の準備完了です。


≪主翼の製作-11≫

木製部分の出来上がった主翼に、パーツを取り付けます。

上翼には、エルロンを操作するワイヤーを受けるプーリーが付きます。
まず、ホワイトメタルパーツの枠に、塗装したプラのプーリーや、真鍮の取り付け金具などを組み合わせて、パーツの準備を行います。

ホワイトメタルの主翼取付金具なども、磨いて準備しておきます。
金属パーツは、多用途接着剤を使用して主桁に接着してから、穴の部分に合わせてドリルで木材に穴をあけ、接着剤を塗った小釘を差し込んで固定します。
特に、主翼取付金具は力のかかる部分なので、しっかりと接着することが重要です。

金属パーツの取付けが完了したら、主桁中央部分に残っていた上板のない部分にもベニヤを取り付けて、上翼の主桁も完成となります。


≪主翼の製作-12≫

金属パーツを取り付けたら、翼後方に黒テープを取り付けます。

このテープは、おそらく、リブ後方の捩じれや振動を防ぐために張られていたものだろうと思われます。
実機では、平織りの布テープが使用されていたのではないかと思いますが、キットでは、幅2o程の黒い紙テープがセットされています。

このテープを、リブの上面から下面と交互に通していくことになります。
片面に粘着剤が付いているので、粘着面がリブと接する部分の位置決めはしやすいのですが、粘着のない面がリブと接する部分は固定されません。
また、粘着剤は意外に強く、作業中も指やテープどうしが張り付いてしまい、苦労しました。
張り終えた後も、粘着面はベトベトしたままなので、完成後にもゴミなどがくっついてしまいそうです。

主翼に張り終わった時点で、テープの両面にニスを塗り、粘着面をコーティングすることで、粘着剤を効かなくすることにしました。
また、粘着がない面がリブと接する部分にも多めにニスを塗ることで、接着剤代わりにテープを固定することができます。

3枚の主翼左右すべてに同様の作業を行い、すべての主翼の準備完了です。


≪主翼の製作-13≫

いよいよ、完成した左右を繋げて主翼を完成させます。

説明書では、左右の主桁を接着してから、内側から補強用のベニヤを貼り付けることになっています。
しかし、この方法では、接着時に位置決めが安定しそうにありません。
先に片側の主桁内側に補強用のベニヤを接着し、完全に乾いてから反対側の主桁を接着することにしました。

先に取り付けた補強ベニヤの接着が完全に硬化したら、接着面に木工ボンドを塗り、もう一方の主桁の内側に接着します。
この時、左右の主翼が真っ直ぐに接着されるように、横から見ながら前縁と後縁が直線になるよう調整し、角度を決めて強力クリップで固定しておきます。
また、補強ベニヤは前後の壁面用の物だけが用意されていますが、強度が不足する可能性もあるので、念のため、底面にも余白から切り取ったベニヤを貼り付けて補強しておくことにしました。

さらに、取り付け金具固定用の角材を取り付け、主桁の上蓋を接着すれば、主翼の完成です。


≪主翼の製作-14≫

中・下翼は、胴体部分に主桁が貫通する構造になっており、中央部分は主桁のみなので、先の工程で完成となりますが、上翼は全体が翼形状になるので、前縁や後縁のパーツを取り付ける必要があります。

用意しておいたパーツ類を、リブの間隔に合わせてカットし、それぞれ接着します。

さらに、黒テープも追加するのですが、ここで問題が発生・・。
片側ずつ完成させた上翼の黒テープは左右対称に張ったのですが、それぞれの端をテープで繋げようとすると、テープがクロスしてしまい、直線状に張ることができません。
左右対称ではなく、逆方向になるようにテープを貼っておく必要があったのですが、時すでに遅し・・。
仕方がないので、少しずらしてテープを張ることにしましたが、幸いなことに、それほど違和感なく仕上げることができました。

上翼だけは、左右を繋げて完成させてから、最後にテープを張るようにした方が良いかもしれません。
テープの貼り方にしても、説明書には詳しい記載がありません。
かなり高額なキットですし、もう少し配慮が欲しいところです。

何はともあれ、3枚の主翼が完成しました。
完成すると、一番大きな上翼は、90cm近い長さになります。
極狭の工房では、取り回しに支障のある大きさになってきました。
置き場所にさえ困るサイズです・・。


≪主脚の取付け≫

主要パーツがすべて完成したので、胴体への取り付け工程に取り掛かります。
まずは、主脚の取付け。

完成させておいた主脚のホワイトメタルパーツに、楕円形断面のアルミパイプと、先端部分のホワイトメタルパーツを接着し、支柱を作ります。
アルミパイプは、コンパウンドで磨けば光沢が出ますが、実機ではホワイトメタル部分と単一の素材で作られているはずなので、違和感が出てしまいそうです。
ホワイトメタル部分と質感が近くなるように、アルミパイプを紙ヤスリで磨いてヘアライン状に仕上げました。

ホワイトメタルパーツには歪みがあり、アルミパイプとの接合部にもガタがあるので、位置決めが必要になります。
接着が固まってしまってから、ビスの位置がずれていたりするとまずいので、接着には多用途接着剤を使用し、固まる前に胴体に取り付けて位置決めすることにしました。

4本の支柱の先の穴を、胴体の取り付け穴に合わせ、ビスとナットで取り付けます。
この時、ビスは仮止め状態にしておき、主脚の取付け状態に捩じれや歪みがないかを確認し、接着の遊びの範囲で修正を行い、接着剤が固まるのを待ちます。
胴体の水平軸に対して、車軸が斜めになってしまうと、完成した時に傾いてしまうので、特に注意してチェックします。

接着剤が完全に固まったら、ビスとナットを締めつけ、脱落防止のためナットに瞬間接着剤を流して接着しておきます。


≪主輪の取付け≫

主脚の取付けが完了したら、車輪を取り付けます。
先に主脚に組み付けてしまっても良いのですが、胴体への取付けのビス止めなどの邪魔になるのではないかと考え、後回しにしました。

完成させておいた車輪を車軸に通し、車軸の穴にプラパーツを差し込んで接着します。
この時に、接着剤がはみ出すと車輪が回転しなくなってしまうので、注意が必要です。
昔の飛行機模型の車輪は、皆この方式の取付けだったので、子供の頃に何度も車輪が回らなくなるミスを犯したことを思い出します・・。

接着が完全に乾いてから車輪が回転することを確認して、車輪の中央部分に金属塗装のセンターキャップを取り付ければ、車輪の取付けは完了です。

車輪の取付けが終わると、機体を着陸時の三点支持姿勢で置くことができるようになります。
車軸を保持するゴム紐の結び方と、主脚を水平に取り付けることに十分注意したので、胴体が傾くようなこともなく、無事に取付けが完了しました。


≪下翼の取付け≫

いよいよ、主翼の取付けに取り掛かります。

まず、下翼取付け用のホワイトメタルパーツを、前後とも片側だけ取り付け、接着します。
接着剤が完全に固まったら、横からスライドさせて、パーツのピンを胴体の穴に差し込みます。
この状態で、反対側のホワイトメタルパーツのピンを胴体の穴に差し込み、下翼の主桁に接着して固定します。

説明書では、下翼をセットしてから左右のホワイトメタルパーツを取り付けることになっていますが、非常に不安定な状態での作業になるので、先に片側のパーツを取り付けておいた方が確実です。
また、主脚の支柱が邪魔になるので、先に下翼を取り付けようかとも思ったのですが、下翼を取り付けてからでは、主脚取付け用のビスを締めることができなくなってしまうので、要注意です。

下翼が完全に固定されたら、翼端ソリを取り付けます。

胴体に翼を取り付けると、ずいぶん飛行機らしくなってきました。
翼が短く、現代の小型エアレーサーのような姿です。


≪シートの製作・取付け≫

説明書では、次のステップは中翼の取付けなのですが、シート取付けの邪魔になりそうなので、先にシートを組み込むことにしました。

シートは、2枚のアルミ板と、プラパーツ・縁ゴムで構成されています。
わざわざ重い金属(実機では鉄板?)を使用しているということは、防弾の機能を持たせているということでしょうか。
座面に薄いクッションがあるだけで、背もたれにはクッションもヘッドレストも、シートベルトすらないシートなので、空中戦では体を固定するのが一苦労だったことでしょう。
(シートベルトは、キットに付属のイラストには描かれていますが、キットにパーツはありません。)
実際にこのままのシートだったとしたら、当時の自動車の方がよほど快適なシートだったのではないかと思います。

製作は、まず、座面のパーツを革の質感で塗装します。
次に背もたれ部分のアルミ板を適当な径の円柱に巻きつけて癖をつけてから底板を接着して、シートの基本形状を作ります。

縁の部分には、ゴムパーツを接着していきますが、アルミ板の厚みに対してゴムの切れ込みの幅が広く、安定しないので、接着には苦労しました。

シートが出来上がったら、胴体フレームに接着して取り付け、コクピットの完成です。


≪翼間支柱の製作・取付け≫

下翼同様に中翼を胴体に取り付けたら、二つの翼を繋ぐ翼間支柱を製作します。
説明書では、上翼を取り付けてから翼間支柱を取り付けることになっていますが、取付けを安定させるため、先に中・下翼間の支柱を取り付けることにしました。

木製の支柱の両端には、金属の金具が取り付けられます。
キットでは、真鍮のプレス部品が使用されており、このパーツを中央部分から折り曲げて製作することになっていますが、支柱は2o厚のベニヤが使用されているので、きっちり折り曲げてしまうと、取付けに支障が出てしまいます。

厚みを合わせて曲げるため、φ2の鉄棒を当てて、MブロックのV溝に押し付けて曲げ加工を行うことにしました。
こうすることで、曲げ部分にRが付き、ちょうどベニヤの厚みに合うように加工できます。
このパーツを塗装仕上げしたベニヤの両端に接着すれば、翼間支柱の完成です。
この支柱は、左右の上・中・下各翼の間に設置されているので、全部で4本製作します。

完成した支柱は、中・下翼に取り付けられた金属パーツの穴と、曲げた金属パーツ部分に、真鍮棒を貫通させて通し、接着して固定します。
左右に支柱を取り付けると、不安定で少々心細かった主翼の取付けが、かなりカッチリして、安定感が向上します。


≪水平尾翼の取付け≫

説明書では、主翼を取り付ける前に取り付けることになっていますが、非常にデリケートなパーツで壊れやすく、主翼取付けの支障にもなりそうだったので、後回しにしていました。

まず、塗装・完成させてあった水平尾翼を、胴体後部上面に接着します。

接着が固まったら、機体をひっくり返し、水平尾翼下面の支柱を取り付けます。
この時に、キットのプラパーツの空き箱が、中翼左右上面で保持できる、ちょうど良い大きさの台として利用することができました。

このまま支柱を取り付けてしまうと、胴体のねじれなどの影響で、水平尾翼が水平になっていないので、尾翼が傾いた状態で固定されてしまいます。
プロペラの入っていた箱などを置き、上に載せた尾翼が主翼と並行になるように、箱の下に適当な物を挟んで左右の高さ調整を行います。
水平になれば尾翼の角度が決まるので、そのままの状態で支柱を接着して尾翼の取付け角度を固定します。

角度が変わらないように注意して、接着剤が固まるのを待てば、水平尾翼の取り付け完了です。


≪上翼支柱の取付け≫

上翼は胴体に接していないので、取り付けには支柱が必要になります。

説明書では、取り付け部分のホワイトメタルパーツを胴体にビス止めして、アルミのアッパーカウリングを取り付けてから、支柱を完成させる手順になっています。
仮組みして、アッパーカウリングは後からでも取り付けられることを確認し、手順を替えて、歪みの修整が必要な支柱を先に取り付けることにしました。

まず、主脚の支柱と同様に、アルミのパイプと両端のホワイトメタルパーツを接着します。
接着剤が固まる前に、胴体フレームの穴に、支柱先端パーツの穴を合わせ、ビスで固定して、ガタの調整を行います。

この時に、上翼を支柱に仮止めして、上翼に傾きがないか、中・下翼と並行になっているか、中・下翼と前縁が一直線に並んでいるかをチェックし、ずれている場合は上翼に捩じりを加えて、支柱の狂いを強制します。
この状態で、翼間支柱を仮止めし、上翼がずれないように固定して、接着剤が固まるのを待てば、支柱は完成です。


≪上翼の取付け≫

支柱の接着剤が固まったら、いよいよ上翼の取付けです。

支柱上端のホワイトメタルパーツに、主桁の穴と、主桁に取り付けてある取り付け金具をはめ込み、接着して、上翼の取付けは完了です。
各翼の位置関係を調整して、支柱を調整してあるので、申し分ない位置に上翼が納まりました。

このままでは、中央部分の支柱のみで上翼を支える、不安定な状態なので、上翼をサポートする意味で、左右の翼間支柱を早めに取り付けてから、接着剤が固まるのを待ちます。

これで、Dr.1の特徴的な三枚主翼が完成しました。


≪アッパーカウルの取付け≫

上翼の支柱が安定したら、次はアッパーカウルの取付けです。
アッパーカウルは、前後二分割されたアルミパーツで構成されています。

まずは、前部のアルミパーツを、支柱の間にはめ込み、両サイドをタッピングビスで胴体フレームに固定します。
支柱用の張線をカウルの穴に通しておくことさえ忘れなければ、難しいことは何もありません。

続いて、後方のアルミパーツを取り付けるわけですが、キットのままの状態では、前方のアルミパーツとピタッと合いません。
アルミを何度も曲げたり伸ばしたりして、前方のパーツと一致するように調整しなくてはなりません。
形状ができたと思っても、固定用のタッピングを取り付けると、位置がずれてしまうので、調整してはビスで固定するという作業を何度も繰り返しました。
気分は、板金職人です・・。

納得のいく形状が出来上がったら、ビスで固定して、アッパーカウルの完成です。

最後に、上翼支柱の張線を施し、同様に脚支柱の張線も取り付けておきます。


≪コクピットパネル・機銃の取付け≫

次は、コクピットパネルの取付けです。

胴体外板と同様にRを付けておいたベニヤに、ゴムパーツを接着してパーツの準備を行います。
パーツが完成したら、多用途接着剤で胴体フレームに接着し、固まるまで洗濯ばさみで固定しておきます。

コクピットパネルが固定されたら、次に機銃を取り付けます。

完成させておいた機銃を、胴体フレームの銃座に接着するのですが、パーツの遊びが大きく、機銃の位置がピタッと決まりません。
銃身が下がらないように、銃身の下にヒノキ棒を挟んだ状態で、銃座と機銃を多用途接着剤で接着し、機銃の方向と傾きを調整してマスキングテープで固定して、固まるまで保持しておきます。

これで、コクピット周りの完成です。


≪エレベーター/ラダーの取付け≫

尾翼の動翼部分を組み立てます。

まず、水平尾翼後部に、塗装しておいたヒンジパーツを使ってエレベーターを取り付けます。
次に、胴体後部のフレームに、同様にラダーを取り付けます。

接着剤が固まったら、次は、操縦索を取り付ける作業です。

最初に、操縦桿の隙間に割りばしなど適当な棒を通し、マスキングテープで固定し、割りばしは胴体側板にマスキングテープで固定します。
こうすることによって、操縦桿を中立位置で固定しておきます。
同様に、細いヒノキ棒をフットぺダルのリング部分に通して、マスキングテープで中立位置で固定しておきます。

エレベーターは、左右前方部分を水平尾翼と一緒に洗濯ばさみで挟んで、中立位置で固定しておきます。

操縦桿に取り付けておいた糸を、フレームや張線に干渉しないように胴体内部を通します。
この時、指はフレームの中まで届かないので、両手にピンセットを持って、糸を受け渡しながら通していきます。
(張線を切らないようにするなど、かなりの繊細さを要求される作業で、ピンセットを駆使している時には、頭の中では「ドクターX」のテーマソングが鳴り響いていました・・。)

ラダーまで通した状態で確認し、干渉している個所があった場合は通しなおして、糸が直線になるように張るようにします。

糸が通ったら、上下を間違えないようにエレベーター駆動アームの穴に糸を通して、緩まないように注意しながら潰した銅スリーブに通して、マスキングテープで仮固定します。
洗濯ばさみを外してみて、中立位置がきちんと出ているのを確認できたら、瞬間接着剤を流して固定します。

同様に、ラダーの操縦索も取り付けて、尾翼は完成です。


≪エルロンの取付け≫

続いてエルロンを取り付けます。

まず、エルロンに取り付けておいたヒンジを上翼にはめ込んでいきます。
ヒノキ棒への取付けですが、プラ製のヒンジパーツはフック形状になっており、寸法もピッタリしているので、接着はしませんでした。

エルロンを洗濯ばさみで固定して中立位置を出したら、操縦索を張っていきます。

操縦桿の左右アームに取り付けた糸は、アッパーカウルを通した状態で丸めてカウルにテープ止めしてありました。
まず、胴体内部でからんでしまっている糸をほぐし、一本ずつにきれいに分かれるようにしたら、準備完了です。

片側2本ずつの糸は、上翼中央部に取り付けたプーリーを介して左右に伸ばし、更に翼端部のプーリーを介して上下に分かれます。
この時に、上と下の糸を間違えてしまうと、左右のエルロンが逆の動きにならなくなってしまうので、注意が必要です。

糸がきちんとプーリーを通っていることを確認したら、エルロン駆動アーム先端の穴に通し、銅スリーブに通して、マスキングテープでエルロンの適当な場所に固定します。
この状態で、操縦桿を動かすことができるようになるので、左右のエルロンが逆向きの動きになるか、操縦桿の動きに正しく対応しているか、確認しておきます。

きちんと動いていることが確認できたら、銅スリーブに瞬間接着剤を流して、エルロンは完成です。


≪エンジン・エンジンカウルの取付け≫

ようやく、一番最初に製作しておいたエンジンの出番です。

回転軸は、ネジ部を延長し、エンジンを両側からナットで挟む構造に改造してありますので、説明書の取り付け方とは異なります。

まず、エンジン後方のナットを取り付け、エンジンと隔壁が接触しないギリギリの位置になるように調整し、緩まないように瞬間接着剤で固定しておきます。
次に、エンジンを回転軸に差し込んで、前方からナットで固定したらエンジンの取付けは完了です。

どこにも擦れたりせずに、抵抗なく回転することを確認したら、エンジンカウルを取り付けます。

まず、隔壁の外周三か所にカウル取付け用のパーツを接着します。
このパーツは、胴体フレーム最前部の穴に差し込んで接着するのですが、はめあいにガタがあるので、多用途接着剤で取り付け、確実に固定されるまで待ちます。

接着剤が固まったら、タップングビスでカウルを取り付けて、胴体のすべてが完成です。


≪プロペラの取付け≫

いよいよ最後の工程、プロペラの取付けです。

プロペラには、シールを貼り、後方の取付けフランジを回転軸部分に接着しておきます。

プロペラの準備ができたら、回転軸に取り付け、ナットで絞めつければ、取り付けは完了です。

ナットが緩まないように瞬間接着剤を流したら、前方の取付けフランジを接着して、すべての作業が完了しました。

製作開始からちょうど丸一年。 (エンジンに着手してから、実に三十数年・・)
苦労が報われる瞬間です!






完成した愛機と記念撮影する、リヒトフォーフェン!?