日本言語学会 夏期講座2004

シラバス(講義内容)

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関連性理論(今井邦彦)
【テーマ】 認知科学としての関連性理論
講義概要
 関連性理論(Relevance Theory)は「発話解釈においては、どのような認知活動が行われるか」を究めようとする理論であり、認知科学の一部を成す。
 発話解釈に際して聞き手が行うのは発話を構成する言語形式の受動的解読だけにあるのではない。聞き手は多様かつ豊富な語用論的処理を積極的に駆使して話し手が何を伝えようとしているかを retrieve するのであり、聞き手のこうした積極的認知活動がなければ伝達は成立しない。
 語用論的処理の根底を成すのは「心の理論(theory of mind; ToM)」に基づいた推論である。しかもその「心の理論」は「汎用心の理論」ではなく、発話解釈という領域に奉仕する「領域特定的(domain-specific)」で、かつ「亜・人格的(sub-personal)」な下位モジュールである。 
 この講義の目的は、発話解釈過程を手掛かりに、「認知とは何か」、「人間の心とは何か」を究める切り口を見出そうとするところにある。
講義計画
 1.真理条件的意味論の破綻
 2.関連性の原理
 3.明意とは何か
 4.暗意とは何か
 5.「修辞的」表現
 6.推論と脳
参考文献(含 放送番組)
 1.今井邦彦 2001『語用論への招待』大修館書店.
 2.今井邦彦 2004 『なぜ日本人は日本語が話せるのか』大修館書店.
 3.放送大学番組『心の科学』第12回「コミュニケーション動物としてのヒト」(今井邦彦)
   [放映日時については、http://www.u-air.ac.jp/hp を参照]

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統語論初級(三原健一)
【テーマ】 ミニマリスト理論と日本語
講義概要
  統率・束縛(GB)理論以前は、やがて日本語学と呼ばれるようになる分野の研究者も生成文法に関心を持っており、相互乗り入れも行われていました。しかし、GB理論の途中(1986年のBarriersモデルあたり)から離反が始まり、ミニマリスト理論(MP)時代の現在では、残念なことに、お互いに関心を持ち合うことも稀になったという印象があります。この間に生成文法・日本語学とも発展を遂げ、新たに発見された言語事実も相当の量に達しています。これらを供出し合わないのは、あまりにもったいない話です。この授業では、これから生成文法の勉強を始めようという人と共に、MPも少しは知っておきたいという他分野の人も念頭に置いて、MPの基礎概念と、生成文法家が発掘してきたデータについて分かり易く話したいと思っています。一応、学部1・2回生対象の「統語論入門」程度の基礎知識(ごく初級レベルでよい)があることを前提としたいので、生成文法に全く触れたことがない人は、準備として最後に挙げる参考文献を読んでおいて下さい。
講義計画
 1.句構造
 2.領域の設定
 3.移動と素性照合
 4.言語計算機構
 5.AgreeとEPP
 6.最新の動き
参考文献
 西光義弘(編)『日英語対照による英語学概論』(第3章:生成文法)、くろしお出版

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対照言語学(井上 優)
【テーマ】 個別言語研究と対照研究
講義概要
 「言語研究」「文法研究」の「言語」「文法」は研究の対象を表しますが,「対照研究」の「対照」は,「実験研究」の「実験」などと同じく,研究の方法を表します。「言語の対照研究」とはまさに,複数の言語を相対的な観点から比較対照するという方法を用いて,それぞれの個別言語が持つ文法的特徴やその文法論的な意義をより具体的な形でとらえようとする研究であり,その意味で,個別言語研究と対照研究は車の両輪のような関係にあるといえます。本講義では,日本語研究者である井上がおこなってきた対照研究について,研究の過程も含めて紹介しながら,対照研究と個別言語研究の望ましい関係について考えます。分析対象は主に日本語(標準語,方言)・中国語・韓国語の文法ですが,方言や外国語に関する知識は特に前提とはしません。それよりも,自分の専門外の言語のことを自分の母語や専門の言語と関連づけて考えるという姿勢を重視します。
講義計画
 1.「言語の対照研究」とは何か
 2.対照研究の実際−何に目をつけ,どう考えるか−
 3.事例研究(1):テンス・アスペクトの比較対照−日本語と韓国語−
 4.事例研究(2):テンスの有無と文法現象−日本語と中国語−
 5.事例研究(3):受動文の比較対照−日本語と中国語−
 6.対照研究と個別言語研究の関係

参考文献

 井上優(2001)「日本語研究と対照研究」,日本語文法学会(編)『日本語文法』1巻1号,くろしお出版
 生越直樹(編)(2002)『シリーズ言語科学4:対照言語学』東京大学出版会

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音韻論(窪園晴夫)
【テーマ】 日英語の言語現象を題材にした音韻論への入門
講義概要
 日常生活に観察される日英語の言語現象を題材にして、音韻論の基本的な考え方・概念と分析方法、音韻研究の面白さ、今後の研究課題を解説する。最初の2日間は名前(人名、地名等)と数字に潜む言語の法則を分析し、身近なところに言語研究の新鮮な素材が存在することを指摘する。3日目は日英語の言語獲得データを比較検討し、分節音(母音・子音)やリズムや音節構造の獲得にどのような原理が働いているか、また言語間にどのような異同が観察されるか考察する。後半の3日間は日本語(主に東京方言・近畿方言・鹿児島方言)のアクセント現象を題材に、アクセント規則・体系の多様性と一般性を検討する。質疑応答の時間を十分にとって、一方通行にならないように講義を進めたい。
講義計画
 1.名前の言語学
 2.数字の言語学
 3.音韻の獲得と言語の普遍性
 4.アクセント研究の諸相:外来語のアクセント
 5.アクセント研究の諸相:複合語のアクセント
 6.アクセント研究の諸相:方言アクセントとその変化
教科書
 必要に応じプリントを配布
参考文献
 @窪薗晴夫著 『日本語の音声』(岩波書店、1999)
 A田中真一・窪薗晴夫共著『日本語の発音教室』(くろしお出版、1999)
 B窪薗晴夫著「音韻の獲得と言語の普遍性」『音声研究』7巻2号, 5-17.(日本音声学会、2003)

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日本語文法B (尾上圭介)
【テーマ】 述語論の方法
講義概要
 日本語文法には様々の学説があって、どれももっともに見えるが、その主張内容は大きく異なる。一体なぜそんなことが起こるのか。それぞれに正しいように見えるA説とB説とC説とが主張内容において不倶戴天の関係にある(ように見える)というようなことは、述語をめぐる議論において最も著しく見られる。
 述語をどう見るかということにおいてそれぞれに面白い主張を為している学説は、大別して3種類のものが数えられるが、それらはどこが共存可能でどこが異なるのか。それぞれの考え方の出発点にあるものはどのように違うのか。その違いはどのような要請によって導かれたものか。3種類の述語論はそれぞれどのような学史を背負っているか。大局的に見て3種類の論の位置関係はどのように考えられるか。なぜ、3種類なのか。
 そのような整理と展望の上に立って、(あるいはそのように整理するために、)そのうちの1つの種類の中に位置すべき「叙法論的述語論」の考え方を説明し、そのような述語論がなぜ必要なのかを説明する。
講義計画
§0 なぜ述語論の方法を問うか
§1 述語論の種々相
 [1.1] ありうる述語論の二方向
 [1.2] 「文の成立における述語の働き」に関する見方
 [1.3] 文法を論ずる姿勢
§2 述語論が説明しなければならない事実
§3 叙法論的述語論の必要と叙法形式の組織
 [3.1] スル形/シヨウ形の叙法論的把握
 [3.2] スル形/シタ形/シテイル形の叙法論的把握
 [3.3] 叙法形式の組織
 [3.4] §2で挙げた事実に対する説明
 [3.5] モダリティ、テンス、アスペクト概念について
§4 文の意味と述語の意味
 [4.1] 「文としての意味」とは
 [4.2] 存在承認と希求の二つのあり方
 [4.3] 主語・述語は述体文(平叙文と疑問文)のもの
 [4.4] (述語に限らず)文において文法形式が担うべき意味
§5 文の種類と述語
 [5.1] 文の種類と主語・述語
 [5.2] 形容詞文・動詞文と述語
§6 述語論の学史
 [6.1] 階層的モダリティ論の学史的位置と性格
 [6.2] 教科研のテンス・アスペクト論の出発点と変質
 [6.3] 本講義の述語論と上記二者との述語論としての位置関係

参考文献
 尾上圭介 2001『文法と意味T』くろしお出版.
 尾上圭介 2004「主語と述語をめぐる文法」尾上編『朝倉日本語講座 6巻:文法U』(朝倉書店)第1章.

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フィールド言語学(角田太作)
【テーマ】 フィールド言語学
講義概要
 フィールドワークによって行う言語調査について、包括的な考察を行い、実際の調査の訓練を行う。扱う項目は研究の目的、研究者の倫理と役割、調査する事柄、調査の準備、研究成果の刊行(文法・語彙・テキストの3点セット)、データの整理など、および、調査の訓練である。教材は下記の近刊書の第12章と第13章である。刊行が夏期講座に間に合わない場合には、資料を教室で配布する予定である。
講義計画
参考文献
 Tsunoda, Tasaku. Forthcoming. Language endangerment and language revitalization. Berlin: Mouton de Gruyter.

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認知意味論(松本 曜)
【テーマ】 認知意味論の考え方
講義概要
 認知的な語彙の意味論について解説する。語の意味について認知意味論がどのような考え方を取り、それが他の意味論とどのように異なるかについて考える。また、その例として、認知意味論における二つの大きな研究テーマについて解説する。一つはプロトタイプとフレームに関してである。プロトタイプとは語の適用の一番良い例のことであり、フレームとは語の背景にある世界に関する知識を指す。いくつかの日英語の名詞、形容詞、動詞の意味分析を示すことによって、語の意味分析におけるこの二つの概念の有効性を明らかにする。もう一つは、意味の主体性(subjectivity)に関するものである。主体性とは、意味に認識者が関与することを言う。意味の現象の中に、認識者の役割を無視しては解決できない現象があることを、空間や視覚を表す表現を見ていくことによって明らかにしていく。
講義計画
1.  認知意味論の意味観
2.  プロトタイプとフレーム
2.1 構造意味論との相違
2.2 プロトタイプの型
2.3 プロトタイプに関する誤解
2.4 フレームと意味
3.  意味の主体性
3.1 主体性とは
3.2 主体的変化
3.3 主体的移動(虚構移動) T:空間の表現における主体的移動
3.4 主体的移動(虚構移動))U:視覚の表現における主体的移動
テキスト
 松本 曜(編)『認知意味論』大修館書店.
 Talmy, Leonard. 1996. Fictive motion in language and "ception". In Paul Bloom, Mary A. Peterson, Lynn Nadel & Merrill F. Garrett, eds., Language and Space, 211-276. Cambrdige, Mass.: MIT Press.

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生成文法・中上級(福井直樹)
【テーマ】 生成文法の成立・発展と諸科学
講義概要
 生成文法は現在、一種の転機を迎えていると言えるが、そのような状況の中で自らの進む途を見つけるために必要なアイデアは、文法研究の技術的思考からのみでなく、分野全体を見渡す視点を持つことから得られる可能性が高い。この講義では、生成統語論の最低限の知識を仮定しながら(予備知識がない人でも聴講可能だが、その場合は出来れば事前に講師に相談すること)、現代生成文法が誕生し進展してきた過程において他の諸科学とどのような関連性を保ってきたかを概観したい。 
講義計画
 1.現代生成文法の誕生と認識論の伝統
 2.現代生成文法の誕生と言語学の伝統
 3.現代生成文法の誕生と数学・論理学(1)
 4.現代生成文法の誕生と数学・論理学(2)
 5.生成文法の進展(1)
 6.生成文法の進展(2)
参考文献
 N. チョムスキー著(福井直樹・辻子美保子訳)『生成文法の企て』岩波書店. 2003年.
 他の参考文献は講義中に随時言及する。

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社会言語学(渋谷勝己)
【テーマ】 社会言語学の課題と方法
講義概要
 社会言語学が取り組む問題は、それぞれのことばが使われている社会の状況に応じて多様に変化しまた拡大するが、これまで社会言語学が積み上げてきた実績からはいくつかの、ただしたがいに関連するところのあるキーテーマが浮かび上がる(下記講義計画参照)。本講義ではこれらのキーテーマについて、個別のテーマを深く掘り下げるよりもむしろ広く取り上げて、ことばの社会的な問題がいかに広範囲にわたるものかを確認したい。
初日に社会言語学がどのような問題になぜ興味をもつか/もってきたかをまとめたあと、残りの5日で1日ひとつずつ、合計5つのキーテーマを概観する。それぞれのキーテーマのもとでは、受講者の抱える問題に応じて課題を設定し、あわせてその調査や分析の方法を考えてみることにする。
 各自の問題意識(最初の時間に尋ねる)と以下の参考文献を受講の前提とする。
講義計画
 1.社会言語学の課題
 2.言語変異
 3.言語行動
 4.言語接触
 5.言語習得
 6.言語計画
参考文献
 渋谷勝己(1997〜1998)「社会言語学のキーテーマ(1)〜(6)」『月刊言語』27-1〜6 大修館書店

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形式意味論(三藤 博)
【テーマ】 意味への形式的アプローチ入門
講義概要
  自然言語の意味について研究する意味論の分野には、周知のとおり多くの異なったアプローチ、方法論がある。前回の初級講座では認知意味論について詳しい講義が行なわれ、また今回も認知意味論の講義が開講されるので、本講義は意味への形式的アプローチ(形式意味論)の入門編という位置づけの講義としたい。入門編であるから予備知識を一切前提とせずに、基礎から解説していく。形式意味論の正確な理解に不可欠な述語論理やモデル理論についても、自然言語の意味論に必要な限りにおいて詳しく説明する予定。また、メンタル・スペース理論についても形式的アプローチという観点から取り上げる。
 なお、本講義には特に指定する教科書はなく、配布するハンドアウトに基づいて授業を進める。時間の許す限り、練習問題を出して解答の解説を行ないつつ、講義内容の理解を深めてもらえるような構成にする予定。

講義計画
1. 形式意味論とは。その目指す所と方法。
2. 述語論理とモデル理論(自然言語の意味論との関わりの中で)
3. 量化(Quantification)の諸問題(特に量化子(詞)のスコープの問題を中心に)
4. テンス・アスペクトの形式意味論による分析
5. 統語論/意味論インターフェース
6. 形式的アプローチとして見たメンタル・スペース理論
参考文献
金水敏・今仁生美(2000)『意味と文脈』,岩波書店.
岩波講座『言語の科学』第4巻『意味』, 1998, 岩波書店.
杉本考司(1998)『意味論(1)』,くろしお出版.
Chierchia, Gennaro and Sally McConnell-Ginet, 2000, Meaning and Grammar: An Introduction to Semantics, 2nd ed., MIT Press.
Fauconnier, Gilles, 1994, Mental Spaces, Cambridge UP.
(邦訳: ジル・フォコニエ(坂原茂・田窪行則他訳)(1996)『メンタル・スペース(新版)』,白水社.)
Fauconnier, Gilles, 1997, Mappings in Thought and Language, Cambridge UP.
(邦訳: ジル・フォコニエ(坂原茂・田窪行則他訳)(2000)『思考と言語におけるマッピング』,岩波書店.)
Heim, Irene and Angelika Kratzer, 1998, Semantics in Generative Grammar, Blackwell.

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日本語文法A (益岡隆志)
【テーマ】 構文の意味分析、叙述の類型、意味的階層構造をめぐって
講義概要
 文論研究のための3つの観点を話題に供する。文構造と意味の関係を考察する文論研究に有効な観点として、構文の意味分析、叙述の類型、意味的階層構造(文の概念レベル)の3つを取り上げる。
 そのうち、今回の講義の中心を成すのは構文の意味分析である。具体的には、モノからコトへの拡張(事例:ノダ構文など)、形式の分化と意味(事例:否定構文など)、基本的特性と派生的特性(事例:「こと」を含む構文など)という3つの方向から構文の意味へのアプローチを試みる。
 さらに、叙述の類型という観点と意味的階層構造という観点にも言及する。前者については、対象の属性を叙述するタイプと事象を叙述するタイプの違いを重視する立場から主題(題目)の問題などを検討し、また後者については、文構成における意味的な階層性という見方の有効性を検討する。
 本講義では、日本語の研究から言語研究にどのような貢献が可能であるかということもあわせて考えてみたい。
講義計画
 1.序論
 2.構文の意味分析(1):モノからコトへの拡張
 3.構文の意味分析(2):形式の分化と意味
 4.構文の意味分析(3):基本的特性と派生的特性
 5.叙述の類型
 6.意味的階層構造
参考文献
 益岡隆志著『命題の文法』(1987)、『モダリティの文法』(1991)、『複文』(1997)、『日本語文法の諸相』(2000)、『三上文法から寺村文法へ』(2003)(いずれも、くろしお出版)

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類型論(風間伸次郎)
【テーマ】 言語類型論
講義概要
 下記の講義計画に若干補足する形で講義概要とする。まず1.では、シュライヒャーよりはじめてサピア、グリーンバーグ、ニコラスらに展開し、代表的な類型論の流れを追う。2.では能格・絶対格、活格・不活格構造の言語、客体活用の言語などをみてゆく。3.及び4.では名詞と動詞の主要なカテゴリーについて、諸言語にみられる多様性やその類型的な整理について考察する。5.では焦点活用や係り結びを持つ言語、名詞と動詞の区別のない言語、形容詞の性格、などを扱う。6.では関係節に関する階層やSwitch reference(指示転換)などを扱う。
 言語間の類型的な類似(及び相違)について考えるためには、まずこれとは異なる系統的類似や言語接触による類似(言語圏や言語連合)についてある程度理解していることが前提となる。講義では地図を用いて問題の言語の位置や分布、及び系統を確認しつつ話を進める。少数民族の言語や孤立語を含む世界の諸言語全般に対して、広い興味と深い関心を持っている受講者を期待している。
講義計画
 1.言語類型論 − 全体の流れ
 2.関係概念の表示(格、人称、所有)から見た言語の類型
 3.名詞の文法範疇(名詞類別、性、数)からみた言語の類型
 4.動詞の文法範疇(ヴォイス、アスペクト、テンス、ムード)から見た言語の類型
 5.その他のトピック(FSP、品詞、コピュラ文、音声)からみた言語の類型
 6.複文の構成からみた言語の類型・むすび
テキスト・参考文献
 ・「言語類型論」 亀井・河野・千野編『言語学大辞典』第6巻 三省堂
 ・松村一登 第5章「言語の類型」 風間・上野・松村・町田編『言語学』 東京大学出版会
 ・角田太作 『世界の言語と日本語』 くろしお出版
 ・コムリー B.著 松本・山本訳『言語普遍性と言語類型論』 ひつじ書房
 ・アジェージュ C.著 東郷・春木・藤村訳 『言語構造と普遍性』 白水社

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