オーストラリアは語学研修には不向き 

 今年3月下旬、例によって、オーストラリア人の友人の家にホームステイしたり、インターネットでホテル予約したりして、かなり節約旅行ができました。オーストラリアの自然は実に美しい。人柄も実にいい。旅行には最適の国でしょう。
 でも、多少の英語の知識がある我々でも、オーストラリア人の英語は発音の違いでかなり難しく苦労しました。こちらがアメリカ英語を話しても彼らは理解してくれます。しかし彼らの話がよく聞き取れず、会話がスムースに運ばないのです。業者や学校関係を通じて、ホームステイの語学研修旅行の募集がよくありますが、少なくとも英語の勉強という点からだけで考えるとオーストラリアは避けたほうがよいと思います。


毎日道路を掘ってます

 1月下旬、オーストラリア人の知人ケンからこんなメールが届いた。 5年前に退職したといっていた63歳の男が、アルバイトに道路工事の日雇いでもしているのかと想像していた。 そして3月下旬、彼ら夫婦を訪ねていくと・・

 シドニーから車で2時間南下した小さな町で一服。 さらに山側に30分ほど砂利道を走り、川沿いの狭い牧場の脇を通り抜けると、車1台がやっと通れるだけの山道を進んだ。 5分ほどすると「市の当局者以外立ち入り禁止」のプレートがかかった鉄パイプ製の扉があり、鍵がかかっていた。 「プライバシーを守るためにこんな工夫をしたのかな」と思い、尋ねもしなかった。 後で分かったのだが、そこは本当に市有地で、少し進んだところに市の給水管理施設があった。 彼らの家はそこを通り抜けるしか方法がない文字通り山の真ん中にあった。 彼の話によると、市有地の先は獣道だけだったという。 退職後、彼はそこに小型ブルドーダーとキャンピングカーを持ち込み、車一台がやっと通れる道に拡張していった。 200mほど進んだところに平地があったのでそこに家を建てることに決定。 基礎と屋根、周囲だけは業者に依頼したが、内装や電気工事、排水工事等はすべて独力。そんな山奥まで電気の配線や水道の配管をしてもらっていたらそれこそ大変な費用がかかる。 そこで、直径20mほどの雨水貯水槽を設置し、ソーラーパネル小屋を立てて電気を自家発電できるようにした。 1人でキャンピングカーに寝泊りして6ヶ月かかったという。 渇水期に備えて、30m下を流れる川から水をポンプアップできるようにしている。 資材は可能な限りリサイクルショップで見つけたという。 話を聴けば聞くほど、元レントゲン技師だったとはいえ、60歳近い人がそれだけやってしまうとはただただ驚き。 

ソーラー・ハウス
 「土地は11年前に買ったのだが、車も入れない山の真ん中だったから実に安かった。 誰もこんなところに住めるとは考えなかったからね。 自分の手で不可能を可能にしたよ」とケンは笑った。 室内から、崖下の川が木々の間に望める。 庭に設置した、水を張った浅い大皿には何種類もの小鳥が入れ替わり立ち代り水浴びにくる。 夜は周囲に一切光がないので文字通り無数の星のきらめきを楽しめる。 50年以上前に神戸で見た夜空があった。でもシャワーを浴びたり、テレビを見たりするのにも気を使わなければならなかったのも事実。 
 ケンの目下のプロジェクトは、崖下の水辺まで車でカヌーを運んでいけるように谷あいを拡張すること。 それで「毎日道路を掘ってます」というメールになった次第。 勿論その水辺も自分の土地。 憎らしいほどきれいな眺めだった。

 

 翌日、下の牧場主がヘリコプターを飛ばすというので連れて行ってもらった。 飛行機が好きで、操縦免許を取ったという40歳代の男。 3人乗りの小型ヘリ2機と、小型飛行機1機を持っていた。 牧場の一角を整地して芝生を植え込んだだけの滑走路。 新聞記者時代に自衛隊の大型ヘリには乗ったことはあるが、こんな小型ヘリは経験がなく、怖くて仕方なかったが、「やむをえず」乗り込み、10分ほど飛んだ。「都会になんか住みたいとは全然思わんね」という。
 その夜10時頃、カンガルーによく似た“ウーンバット”を見に出かけた。 いつもよく出てくるという給水管理棟付近にはいなかったので、下の牧場主の家の裏山に行った。 勿論車一台ほど通れるだけの山道。 突き当たり付近にもおらずUターンして下る途中に対向車のライトが見えた。 すれ違いできるところで2台が停車。顔を見合わせて「なんだお前か」と事情を話して大笑い。 でも彼の肩からは拳銃がぶら下がっていた。
 翌日は、2山越えたお隣さんへ。 30分かけてたどり着いたところは、文字通り崖っぷちの家。 20畳ほどのテラスから見えるのは山並みと美しい川だけ。 彼は大工さんで、基礎工事からまったく独力で2年半かけて建てたという。 ケンの"do-it-yourself"の“お師匠さん”だそうだ。 手土産に持参したケンの自家製ビール(オーストラリアでは家庭で飲むだけなら自家醸造してもよいそうだ)を飲みながら、今までの人生で最高と思えるほど素晴らしい景色を眺めいっていた。 この大工さん一家4人はこの夏休み、フランスの田舎へ旅行するという。 彼は、フランスの古い田舎屋を購入してそこを拠点にヨーロッパ旅行をしようと考え、売り出し中の家の資料をインターネットで取り出した、と言ってコピーを見せてくれた。 

 金儲けだけに走る人が多い日本人に比べ、彼らはなんと優雅な生活をしていることだろうと改めて考え直すことを強いられたオーストラリア旅行だった。

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