Joe Strummer Joe Strummer & The Mescaleros
Streetcore
rate
■撮りたいものを撮る、やりたいことをやる。
 いつか読んだ写真家ハービー山口さんのインタビューで、興味深いエピソードが語られていた。ハービーさんがロンドンにいた頃、偶然地下鉄で出会った当時クラッシュのジョー・ストラマーに写真を撮らせてもらったときのことである。快く撮影を承諾したジョーは、地下鉄を降りていく時にこう言ったそうだ。「撮りたいときに撮りたいものを撮れよ。やりたいときにやりたいことやるんだ。そがPUNKさ。」ハービーさんはいまでもその精神を貫いて写真を撮っているという。

 クラッシュが解散してしまってからも、何となくはジョー・ストラマーの動向を気にかけてはいた。映画音楽をやったり、ボーカルのシェインが抜けたポーグスを手伝ったり…。知ってはいたけど、いまいち彼の音楽を聞く気にはなれなかった。僕の中でクラッシュの存在があまりに強烈だったせいか、その後の彼はもう終わってしまった人に感じられたからだ。数年ぶりにメスカレロスで本格的に音楽活動を再開したときも、聞いてみたいという気はあったけれども踏み切れないでいた。CDショップに行くたびにメスカレロスのアルバムを手にしてはまた棚に返すというおかしな行動を繰り返していた。
 一昨年の12月、ジョーは死んでしまった。直前と言ってもいい9月か10月に来日していたのも知っていたので、とても信じられない気分だった。彼の死を消化できないまま、まもなく1年が経とうとしていた去年10月このアルバムは発売された。今回紹介する「ストリート・コア」だ。

 これはジョーが亡くなる寸前まで作り続けていた作品を、残りのメンバーが意思を引き継いで完成させたアルバムである。
 1曲目のクラッシュを彷彿させるロックンロールナンバー(途中リズムがレゲエ調になるけど、そこがまたクラッシュっぽい)からボーナス・トラックである4曲のライブ・テイクまで全曲すばらしい。
 しかしこのアルバムのジョーはやはりクラッシュのときとは違っている。クラッシュは誰もが認めるすばらしいパンク・ロック・バンドであったけど、どこか気負いみたいなものが感じられた。クラッシュであり続けるために猛スピードで突っ走っていたと僕は思う。
 それに比べこのアルバムでのジョーは、やりたい音楽を楽しむ余裕みたいなものを感じさせる。ボブ・マーリイの名曲「リデンプション・ソング」をカバーしているけど、すっかり自分のものにしてしまっているし、ジミー・クリフの「ザハーダー・ゼイ・カム」にしても然りだ。ライブ・テイクで聴くことができるスペシャルズやラモーンズのカバーも好きな音楽だから演ってるんだなってひしひしと伝わってくる。
 僕はちょっとでもジョーのことを終わってしまった人だと思っていたことを恥ずかしく思う。彼の音楽を聴くことを躊躇していたおかげで何度かあった来日公演を見逃してしまった。いまさら後悔しても仕方ないことなのだけど…。やはりやりたいときにやりたいことをやらないとダメなのだ。彼は自ら実践して僕らにそのことを示してくれていたのである。ジョー・ストラマーは死ぬまでずっと紛れもなくパンク・ロッカーだった。
リリース 2003 The Pogues
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