いつか読んだ写真家ハービー山口さんのインタビューで、興味深いエピソードが語られていた。ハービーさんがロンドンにいた頃、偶然地下鉄で出会った当時クラッシュのジョー・ストラマーに写真を撮らせてもらったときのことである。快く撮影を承諾したジョーは、地下鉄を降りていく時にこう言ったそうだ。「撮りたいときに撮りたいものを撮れよ。やりたいときにやりたいことやるんだ。そがPUNKさ。」ハービーさんはいまでもその精神を貫いて写真を撮っているという。
クラッシュが解散してしまってからも、何となくはジョー・ストラマーの動向を気にかけてはいた。映画音楽をやったり、ボーカルのシェインが抜けたポーグスを手伝ったり…。知ってはいたけど、いまいち彼の音楽を聞く気にはなれなかった。僕の中でクラッシュの存在があまりに強烈だったせいか、その後の彼はもう終わってしまった人に感じられたからだ。数年ぶりにメスカレロスで本格的に音楽活動を再開したときも、聞いてみたいという気はあったけれども踏み切れないでいた。CDショップに行くたびにメスカレロスのアルバムを手にしてはまた棚に返すというおかしな行動を繰り返していた。
一昨年の12月、ジョーは死んでしまった。直前と言ってもいい9月か10月に来日していたのも知っていたので、とても信じられない気分だった。彼の死を消化できないまま、まもなく1年が経とうとしていた去年10月このアルバムは発売された。今回紹介する「ストリート・コア」だ。