話がどんどん反れていくようだが、僕が言いたいのは、文字を持たない文化(決してそれは文化水準が低いということではなく、それはそれで非常に崇高な文化であると思う)であっても音楽は持っているということだ。それほど音楽は人間とは切っても切れないものであるということである。
金儲けのための音楽ではなく、生活に根づいたというか人間そのものの中から湧き出る音楽、そんな音楽を僕は求めていた。
マノ・ネグラは最高のライブ・バンドだ。だからライブ盤をお奨めする。これはオフィシャルでは唯一の彼らのライブ盤で、しかも日本での録音である。1991年の11月に急きょ録音された川崎クラブ・チッタでのライブだ。同じツアーでの大阪ライブにはもちろん足を運んだ。ステージの上に自分が立っていない事がくやしくなるくらい最高のライブだった。まずは何の先入観も持たずにこのCDを多くの人に聞いてほしいと思う。マノ・ネグラについては、今回のみならず、またいづれ紹介することになると思うのでこの辺で。
あっ、ひとつだけ。僕は彼らによってロックンロールに引き戻された。彼らの音楽には僕の求めるすべてがあったから。そして彼らは最高のロックンロール・バンドだったから。
余談になるが、大阪ライブで彼らの何人かが定番のオリーブ色のMA-1を着てプレイしていた。しかし数日後、深夜の音楽番組に登場した彼らのMA-1の色はエンジ色に替わっていた。実はその年の新色エンジ色のMA-1を、僕はいろんな所を探し回ってやっと手に入れた。彼らのライブで下ろしたてホヤホヤの僕のエンジMA-1に彼らの熱い視線が送られていたのは決して僕の思い込みではない。