The Singles A's & B's The Zombies
The Singles A's & B's
■至福のメロディ・オンパレード
 25年程前の話。渋谷陽一のFM番組に山下達郎がゲストで来て、その頃達郎は"Loveland island"で大ブレイクした直後で自らのルーツを紹介するということで様々なシングル盤を持参し当時からオタクぶりを誇示していたのだが、以外にもその内容は英国のポップバンドが中心だった。その時ゾンビーズというキワモノな名前のバンドの“Tell Her No"という曲を初めて聞いた。
その胸キュンなメロディセンスにドーテーの私は心打たれたのだが、CDはまだ流通しておらず輸入盤も60年代は品薄な時代で、このCDを入手したのは10年以上経過してからだった。
タイトルから解るようにDECCA時代のシングル盤をA面全部、B面全部の順に網羅したものである。現在はリミックスやら何やら山ほどベスト盤が出ているが、発表順にA面11曲をど〜〜っと聞けるのはこのアルバムのみ。

圧巻そして感動である。
捨て曲なし。ツボ押さえまくり。ビートルズにもキンクスにも引けを取らないこれらの楽曲群が全く売れなかったらしい。最大のヒット曲がデビュー曲の"She's Not There"で“Tell Her No"は3曲目。
2曲目の"Leave Me Be"が地味で勢いをつき損ねたという要因もあろう。ギターとベースがダブル眼鏡というルックスのハンデもあろう。ヤケクソでつけたゾンビーズという名前のイメージもあろう。それらを差し引いてもあまりある魅惑の名曲の数々である。
やたら車のCMで耳にする"Time of the Season"も大ヒットしたのは解散後。そういう運命のバンドだったのでしょう。
達郎が涙したというコリン・ブランストーンのヴォーカルセンスは唯一無比。メインソングライターはキーボードのロッド・アージェントだが、シングルの後期にはソウルのカバーもクサらずに完璧なアレンジでこなしている。今BGMに"Going out of my Head"が始まった。あ〜〜このまま死んでもいいっす。

ゾンビーズは5年の活動期間で2枚のアルバムしか発表しておらず、1枚目は即席で作ったR&Bテイストのビートアルバム。
ラストの1枚は今やビーチボーイズのペットサウンズと並び称される究極にして至福の名盤「Odessey and Oracle」だ。
シングル盤はほとんどアルバム未収である。それだけにこのベスト盤はバンドのヒット曲狙いの紆余曲折と魅力が直接伝わってくる。60年代のブリティッシュビートバンドには実に優れたバンドが多くカバーしてみたい曲もたくさんあるのだが、下世話で甘美なゾンビーズの雰囲気をテクニックだけで再現する事だけは不可能だろう。
私いろんな方にゾンビーズを推奨してますが、取っ付きやすいこのアルバムはそういった意味でもベスト。オサレな連中やオタクだけが楽しむにはもったいない。

疲れた時、日常の流れから逸脱した真空の時間帯にゾンビーズを聞く。現実の出来事が希薄になり彼岸で音楽に浸るような感覚。これこそがビートルズにも数多のサイケバンドにもないゾンビーズの魅力だ。  (フジモト)
リリース 1984 Odessey and Oracle
おすすめ曲 A面全部
これも聴くべき!!
The Zombies /
Odessey and Oracle
★★★★★
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