川本真琴 川本真琴
川本真琴
■川本真琴または凶暴な情熱について
 川本真琴の「愛の才能」を耳にしたのはプータローから今の会社に就職してすぐの事だから10年前になる。30歳を過ぎロック・リスナーとしての現役感はすでに遠くOASISにも世代のギャップを感じ始めた頃。あまりに直線的な声と詩とサウンドに久々に体が反応した。普遍的な10代のイラダチを歌った歌。もっと若ければハマれるのになあ、なんて思ったりした。
そんな甘いものではなかった。次の「DNA」は「もうオッサンやから」レベルの自意識を破壊し「今聞かなければ !」なパンクスピリッツを刺激するもの凄い疾走感。ルックスもキュートやし(私感)ええやん。

これはすごいアルバムが完成するんじゃないかという期待と、こんな歌をあからさまに歌えてしまう彼女の存在に危うさを予感したが、はたして完成したアルバムのタイトルは「川本真琴」。
純度100%。後先考えず無添加で真空パックされたアルバムはアナログ(=情緒)感に満ちた、ただただ圧倒的な内容だった。

「他人だよね」
「眠れないのはほっとくだけ」
「ほんとはよく分かんない」
「愛の才能ないの…」ってそんなの未だにねえよ。

10代の焦燥感は何一つ解決されぬまま30代の自分の中に沈滞していた。
体にもガタがきて経験は仕事に昇華されず恋愛も中途半端ながら、結局何一つとして自分の欲望を諦めきれていなかったことに「川本真琴」を聴いて愕然とした。むしろ青春時代が夢なんて後からしみじみ思ってる(copyright:阿久悠)オッサンにこそ痛すぎるアルバムであった。
瞬間最大風速3000メートル。
こんなハシカみたいなアルバムに2枚目がない事は本人もスタッフも承知の上だろう。4年後に発表されたセカンドはKATE BUSHからBECKまで川本の資質とどこか共鳴するアーティストの作風が無作為かつデジタルに散りばめられた痛快作だったが。

それにしても「川本真琴」とは何だったのか。
不惑を過ぎ先日久々にノスタルジーにでも浸ろうと聴き直した所、やはり体の奥にくすぶってるモヤモヤした情緒に火がつき何か知らんがあせった。聞き流すの絶対に無理。まったくもって危険きわまりないアルバムだ。
相も変わらず身から出た錆のトラブルに翻弄される続ける日常。いつまでたっても感情的な俺はいったい何者や。いくら悩んだ所でやはり答などないのである。
「1/2」のサビでお決まりの常套句を3回繰り返す川本だが、最後のフレーズはやはり万感を込めた自分への問いかけであろう。

「愛してる?」
                (フジモト)
リリース 1997 gobbledygook
おすすめ曲 LOVE & LUNA
これも聴くべき!!
川本真琴 / gobbledygook
★ ★ ★ ★
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