Sticky Fingers The Rolling Stones
Sticky Fingers
■たかがロックンロール
 昔、ひとり暮らしをしていた頃、某新興宗教の勧誘に悩まされたことがあります。会社に行けば会社の先輩に、家にかえれば隣人に。恐いのは僕を誘ってくる人たちみんなが、まったく悪気はないということ(たぶん…)。彼等にしてみれば、「こんなすばらしい集いになんで参加しないの?」みたいな感じで、僕が入信しないことが不思議でしょうがないと思ってる様子でした。
 そんなある日、僕はその隣人一家の夕食に誘われました。実は一度あまりのしつこい勧誘に切れて、かなり激しい口論をした後のことだったので、まったく行く気はありませんでした。それでも「この間は悪かった。もう○○○会の話はしないから。おわびの印にごちそうさせてほしい。」とまたまたしつこく言うものだから、しぶしぶ承諾してしまったのです。やっぱり嫌なものは嫌とはっきり断らなければいけません。案の定夕食が終わる頃になると○○○会の人たちがぞくぞくと集まってきて、またまた僕を説得しはじめました。
 僕としても彼等の信仰を頭から否定する気持ちはなかったのですが、いくら聞いてもあまりに陳腐な彼等の宗教感は、僕を納得させることはありませんでした。とりあえず僕は「僕はあなたたちがその宗教を信じてるように、ロックというもの信じてるので、もう他のものを信仰することはできません。それぞれの道を歩きましょう。」と言ってみましたが、やはり彼等を納得させることはできなかった様です。決定的な決裂でした。
 翌日の日曜日、彼等はいつものように朝から集まって勤行をはじめました。せっかくの睡眠をさまたげられた僕は頭に来て、窓全開、大音量で僕なりの勤行をはじめてやりました。
僕の信じるロック教の教典(レコード)が日曜日の朝の青空に響き渡っていったのです。その時かけたレコードがこの「スティッキー・フィンガーズ」です。

 ローリング・ストーンズ・レコードの第1弾として発表されただけあって、さすがに彼等の意気込みが感じられます。アンディー・ウォ−ホール、デザインのジッパー付きジャケットも印象的だし、例のベロ・マークもこのとき初登場だったと思います。
 捨て曲なし。全曲すばらしい。本作からフル参加となったミック・テイラーのギターもほんとにカッコいいです。70年代のストーンズの曲がカッコいいのは、彼のギターの貢献度が大きいですね。もちろんキースのギター・ワークも確立されてきたし、ミックのボーカルもノリに乗ってます。間違いなくロック名盤中の名盤です。
 あっ、といってもこれは僕の意見なのでみなさんも自分で聴いてみて判断してください。妄信はいけません。確かな自分を意見を持ち、他の意見も尊重するということが大事です。僕も昔はロックンロール以外はとるに足りない音楽だという偏見を持っていましたが、今は違います。ジャンルに関係なくすばらしい音楽はたくさんあります。一歩引くことによって広い視野を持つことができるときもあると思いませんか?
 人生日々修行です。釈迦だって誰かの教えを妄信したのではなく、自分で修行して悟りを開いたんですよね。
 まぁそれはいいとして、これはたかがロックンロールのレコードです。気軽に1回聴いてみてください。    (2号
リリース 1971
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