Drop the Line Trey Lewd
Drop the Line
■親父と息子の関係
 俺の親父は遊び人だった。「飲む・打つ・買う」と昔よく言ったけれど、親父の場合は「打つ・打つ・打つ」の打つべし人生であった。競馬、競輪、パチンコ、麻雀と、何でもござれのギャンブラー。一週間ほど帰ってこないのが普通で、仕事もまともに行ってるのかどうかさえよくわからない。イラつくおかんの命令で雀荘に電話をかけさせられるのは決まって俺だった。子供が電話したら帰ってくると思ったらしい。は?何?聞こえへんで。何て?ああ●●さんね。ちょっと待ってや・・・などと、ガラの悪い店員に悪戦苦闘する俺。それ以来、俺は電話が嫌いになってしまったのだった。たまに親父が家にいると何を喋ったらいいのかわからない。それを見かねたおかんに、親父と交換日記を無理矢理やらされたのだけれど、効果があったのかどうか・・・。だけど俺が日記嫌いになったのは確実だ。

 Pファンク総帥、ジョージ・クリントンの息子、"Trey Lewd"こと、Tracey Lewisの記念すべきデビュー・アルバムである。"Trey Lewd"を訳すと「3度のワイセツ」ぐらいの意味で、まぁ、あだ名とか言葉遊びみたいなもんらしい。自身初のアルバムで、この時すでに30近い年齢だったけれど、キャリアは相当に積んでいたようだ。古いところではパーラメントのアルバム"Trombipulation"(80年)にもボーカルとして「Tracey "Trey Lewd" Lewis」と、クレジットされている。その後もPファンク関連はもちろん、プリンスの"We Can Funk"(Graffiti Bridge収録)という曲にも親父とともに参加している。
"Drop The Line"も良くも悪くも親父絡みのアルバムだ。プロデュースもほとんどがジョージ・クリントンで曲も提供されている。去年出たP-Funk All Starsのアルバム"How Late Do U Have 2B B4 UR Absent"にワイセツ息子も参加しているけど、なかなかメインを張れないね。もう40越してるだろうに…。彼ともども両方のアルバムにキーボードで参加しているアンプ・フィドラーももっと売れてもいいのになぁ。まぁ、ジョージ・クリントンの目の黒いうちは無理なんでしょうな。

 ブーツィー・コリンズやマイケル・ハンプトン、ゲイリー"おむつ"シャイダー(プロデュース)でまわりを固めてるんで、音はもちろんP系。いや、他にも若いP系連中がいるんだけど、いかんせん70年代黄金期の彼らがクレジットされてると正直安心しちゃうもんね。JIS規格みたいなもんで。これだから若手がブレイクしにくいんだね。だけど、親父譲りの個性的へたうまへなへな情けな声はそっくりだね。若いから、しわがれた感じはないけども。
 おすすめは2曲目のシングルにもなった"Hoodlums Who Ride"。イントロの印象的なフレーズは超有名サンプリングネタ、インストオルガンソウル"The Mohawks"の"The Champ"という曲。メイン・ソースをはじめ、ガイ、デ・ラ・ソウル…などが使っている。他にも特に4、10、11曲目がええね!

 最近、親父は心を入れ替えたのか、すっかり丸くなり規則正しい生活を送っている。会社を辞め、独立した俺が家族一番のギャンブラーなのかも知れない。   (1号
リリース 1992 Waltz of a Ghetto Fly
おすすめ曲 Hoodlums Who Ride
これも聴くべき!!
Amp Fiddler
/ Waltz of a Ghetto Fly
★ ★ ★ ★
Super Bad
レコードレビュー04
レコードレビュー02
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