Walls and Bridges John Lennon
Walls and Bridges
■逆境こそが名作を産む
CDレビューを書かせて頂いて1年。
振り返ってみると結局10〜20代の音楽に過剰な思い入れがあった時期に影響を受けたアルバムを総ざらいした感じになった。まあロックとはそうゆうもんでしょう。
そして私自身1年前には思いもよらぬ変化があった。離婚して家を手放すことになったのだ。

で、最初がポールから始まったので2年目はジョンから。
以前「ジョンの魂」にちょっと触れたが究極に1枚選ぶとすると結局これになってしまう。時代のアイコンが作った素っ裸で深遠なアルバムの前にはいかなるポップアルバムも太刀打ちできない(と思う)。
じゃ他のジョンの作品はどうなのか。
コンポーザーとしての絶頂期はビートルズの「RUBBER SOUL」ドラッグとヨーコとの遭遇により作品が深化したのが「ABBEY ROAD」まで。解散後すぐの「ジョンの魂」以後はメロディックな「IMAGINE」「MIND GAMES」と政治的な「SOMETIME IN NYC」。これらはメッセージ性が強く当然ながらヨーコへの愛が全曲のモチベーションとなっている。ジョンは純粋に一人で曲が書けない。そして現場におけるライバル=ポールと、パートナー=ヨーコとの違いは北極と南極ぐらいの差がある。言い換えれば前者は曲としての完成度、後者はメンタリティの重視である。その後ジョンはヨーコと一時別居し「WALLS & BRIDGES」を制作。原点回帰の「ROCK 'N' ROLL」をフィルスペクターと喧嘩しながら作りヨーコとよりが戻って主夫となり5年休業。
生気に満ちた「DOUBLE FANTASY」を発表した直後他界した。
つまり長いミュージシャンライフで唯一自分で作った作品が「WALLS & BRIDGES」なのだ。そして私が「作品」として一番好きなのもこのアルバムである。

作品にはヨーコの不在が大きな影を落としている。「ジョンの魂」が人間ジョンレノンならば、こちらはジョンレノンの人間味とも言える内容だ。愛と平和の鎧もかなぐり捨て、揶揄的な「HELP!」などと比べてもかなり直接的な表現で不安を表明している。本人はよりが戻ってからはあまり振り返りたくない作品だった様だが知ったこっちゃない。平和をプロパガンダしてる奴より一人の女に未練がましく悩む男の方が信頼できる。もっとも「落ち込んでる奴を愛する奴はいない」事を一番良く分解ってるのも本人である。座右の銘ですな。
とにかく心沁みる一枚。スワンプギターの職人ジェシ・エド・ディビスもええ仕事してます。ぜひ御一聴を。

これは恐ろしい想像だが人生の成熟期に他界したジョンがもし生きていたなら作家として素晴らしい作品を書き続けていたのだろうか…ラッパーとサンプリングが台頭してきた80年代。時代の転換と同時に彼は逝ってしまった。
昔インドの浜辺の薄暗いショットバーで安物のハシシで跳びながらこのアルバムの凄さを友人と延々語り合った。夢の夢のような話や。   (フジモト)
リリース 1974 ウルル(紙ジャケット仕様)
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