仁王柳生の28のお題より
01 詐欺師と紳士
唯一、感情の覗けない男
薄く笑う紳士の仮面に、隠された強かな本音
仮面を剥ぎ取ろうと、近付くたびに
曝け出される、俺の本心
これでは、どちらが詐欺師か、わからない
02 初対面
型通りの、笑顔
(なんて、嘘くさい笑顔なんじゃ。)
空々しい、笑顔
(なんて、胡散臭い笑顔でしょう。)
「よろしくな。」 「こちらこそ。」
03 雨の日
朝から降り続いている雨で、部活は休み
こんな日は、久しぶりに一人の時間を使える
足を向けるのは、あまり人の立ち寄らない図書室
今日は、あの新刊を読み終えられるだろう
見え透いた笑みを浮かべる、彼さえいなければ
04 二人
まったく、共通点のない二人
性格も、まるで正反対の二人
外見の印象も、似てない二人
考え方だって、合わない二人
それでも、惹き寄せ合う二人
05 手
日直で少し遅れてしまったお前が、着替え終わるまで待っていた
待ち切れず、手首のリストバンドを掴んで、コートへと連れ出す
不愉快そうに眉を顰めて、執拗に俺の手を振り解こうとするお前
でも俺は、せめてリストバンドの上からでも、離すつもりはない
本当は、その冷たい手に、直接触れることが出来たらいいのに
06 髪
無造作に立ち上げ、適当に乱されたそれは
見た目よりも、ずっと細く柔らかなもの
襟足で、切り忘れたように残されたそれは
緩く結ばれ、彼の首筋でゆらりと揺れる
陽の光を反射する、銀糸のような彼の髪
07 めがね
自分を隠すためには、必須なアイテム
変装グッズに、忘れてはならない
常時、それを装備しているお前
その分厚いレンズで隠された、本当のお前は
他の誰にも、見せてはやらない
08 笑顔
休み時間に、ふとそこを通りかかれば
そこには、緩やかに微笑む紳士の笑顔
誰もが心を許すだろう、その笑顔は
俺にとっては、心に突き刺さる刃となる
俺には向けない笑顔を横目に、通り過ぎた
09 視線
彼は、視線を合わせない
なのに感じる、この視線は彼のもの
真っ直ぐにこちらを、見ることもないくせに
通り過ぎる一瞬、痛いほどの彼の視線
引き攣る笑顔が、気付かれないといい
10 ぬくもり
これまでは、特に必要としていなかった
なのに今では、こんなにも必要としている
いったい、どうしてくれるんですか
この責任を、どう取ってくれるつもりなんですか
これも全て、あなたが与えたぬくもりのせいです
お題配布サイト様 ■仁王柳生の28のお題■
END
<2006.12.5>
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