真犯人は誰だ!? 〜イル・ムートの惨劇 回答編〜 ・・・――――――――――――・・・――――――――――――・・・ |
この問題、一見ややこしそうですが、「○×が犯人だったとしたら」という仮定を立てて考えてみると、とても簡単なんですよ。 <本当のことを言っているのは3人のみ、後の5人は嘘をついている> この設定が問題を複雑にしているように見えるかも知れませんが、実はこの設定こそが問題を解く最大のヒントでもあります。 それでは各人が言っていることを、順に検証してみましょう。 [クリス] メグじゃない、私よ。 [ラウル] カルロッタは嘘をついている! [メグ] ごめんなさい・・・私がやりました。 いつもクリスティーヌを脇へ追いやろうとするカルロッタが許せなかったの。 [マダム] メグはそんなことをする子じゃないわ。誰かをかばっているのね。 [カルロッタ] クリスティーヌがやったに決まってるわ! 私の成功を妬んだのよ!!ムキーーーーッ!! [裏方1] シャニュイ子爵がクリスティーヌのためにやったんだろう。 当日、開演直前にカルロッタの楽屋から出てくる子爵を見たんだ。 [コーラスガール1] メグかクリスティーヌがやったんだと思います。 いつも二人でひそひそ内緒話してることが多かったから。 [コーラスガール2] メグだと思うわ。 いつも「カルロッタがクリスティーヌをいじめる!」って怒ってたもん。 証言の中で犯人として名前が出ているのは3人。 クリスティーヌとメグとラウルです。 この3人以外の犯行であった可能性も考慮に入れると、4通りの犯人候補が挙げられるわけですね。 この4通りの犯人候補について、それぞれが犯人だったと仮定して証言の真偽を見ていくと、すぐに犯人が分かります。 まずはクリスティーヌが犯人だった場合。 本当のことを言っているのは クリスティーヌ、カルロッタ、マダム、コーラスガール1 メグが犯人だった場合は メグ、ラウル、コーラスガール1、コーラスガール2 ラウルが犯人だった場合は ラウル、マダム、裏方1 上記の3人以外が犯人だった場合は ラウル、マダム <本当のことを言っているのは3人のみ、後の5人は嘘をついている>という条件に当てはまるのは、ラウルが犯人だった場合だけです。 つまり、ラウルが〜イル・ムートの惨劇〜の真犯人ということになります。 分かってみれば簡単なことだ〜〜♪ それでは真犯人のシャニュイ子爵にインタビューをば。 支配人のパトロンでもあるあなたが、なぜこんなことを? ダーエさんを成功させるために、ジュディッチェルリさんが邪魔だったのですか? 僕はカルロッタが憎かったんじゃない。 それにクリスティーヌは本物の歌手だ。 つまらない小細工をしなくても、彼女は実力で成功するさ。 僕は公演の前日、クリスティーヌの楽屋に行こうとして、偶然あいつ(怪人)がクリスティーヌの楽屋から出てくるのを見たんだ。 (恐らく回転式の鏡を通ってきたのであろう――あさって記) 怒りに我を忘れて後をつけて、あいつがカルロッタの香水に、何か薬品のようなものを入れるのを目撃した。 コーラスガールから、ブケーが地下で見つけた「声が変わる不思議な薬」について聞かされていたから、きっとそれじゃないかと思った。 それで僕は公演当日まで、ずっとカルロッタの様子を気にしてたんだよ。 カルロッタがいつもの香水をつけなかったと聞いて、内心ほっとしたくらいだ。 ではどうしてカツラに細工して、舞台を台無しにするような真似を? 僕は・・・クリスティーヌに目を覚まして欲しかったんだ・・・。 クリスティーヌが信仰に近い愛情を抱いているのは、決して音楽の天使などではなく自らの目的のためには他人を陥れることも厭わない悪魔なのだと。 卑劣な手段で、カルロッタの歌手生命を絶とうとする人でなしだと。 一瞬の心の迷いだった。 「もともとはあいつがやろうとしていたことだ。お前が悪いんじゃない」 もう一人の僕の暗く甘い囁きに、僕は負けたんだ。 ・・・・あなたは先ほど「それにクリスティーヌは本物の歌手だ。つまらない小細工をしなくても、彼女は実力で成功するさ」とおっしゃられた。 あなたの愛が本物で、怪人の愛を上回るほど真摯であれば、つまらない小細工をしなくても、ダーエさんはいつか怪人の本性を見抜き、あなたの愛に目を覚ましたのではありませんか? ・・・・・。 シャニュイ子爵は何も答えずに肩を落とした。 ブケーの殺害、シャンデリアの落下。 結論から言えば、シャニュイ子爵が細工をするまでもなかったのだ。 オペラ座の怪人は、自らの行為によって自分が”音楽の天使”ではないことを証明してしまったのだから。 しかしシャニュイ子爵をそそのかした、もう一人のシャニュイ子爵の声。 それこそが我々の恐れる「オペラ座の怪人」の正体ではないかと、事件を振り返って思う今日この頃である。 あさって |
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