我々の知るイスラム国とは己の主張を通す為なら残忍な手口で人を殺し、密輸や銀行襲撃にて財を得たテロ組織ですね。
ですが、そんなテロ組織に参加したり、彼らを支持している人々が多数いるのも事実。なぜ、彼らはイスラム国を支持しているのでしょう。
イスラム国っていうのは、スンニ派のテロ組織ですね。イラク政権による行き過ぎたシーア派優遇政策やシリアのアウィー派政権によるスンニ派弾圧によってスンニ派のイスラム国は、こららの政策、体制に不満を持つスンニ派らの人々から支持を得て戦う為の大義名分を得ました。
しかし、イスラム国を支持する人々は、この宗教的な対立だけではないんです。
イスラム国が作成した宣伝ビデオや文章の中にて「サンクス・ピコ協定の打破」という言葉がしばしば出てきます。
ん?なんじゃ?サンクス・ピコ協定って?
サンクス・ピコ協定とは、第一次大戦中にオスマン帝国と対立していたイギリス、フランス、ロシアが戦後、オスマン帝国の領土を自分達で分けちゃいましょう。と、勝手に約束していた密約です。
現在のイラク、シリア地域は第一次世界大戦前まではオスマン帝国による支配が続いていたんですね。戦争に勝った暁には仲良く勝利した我々でオスマン帝国の領土を分けちゃいましょうねってことです。
この密約は、翌年にロシアにて社会主義革命が起こり、革命政府が密約を暴露してしまったので世間に知れ渡ってしまうわけですが、結果として、密約通りとまでいかずとも、現在のイラクとクウェートはイギリス、シリアとレバノンはフランスの支配の下に入りました。
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サンクス・ピコ協定で使用された地図 |
もう、定規で引いたように線引きしちゃったわけです。
さて、イスラム国が自分達の領土だと主張している地域ですが、これはシリアとイラクにまたがっています。シリアとイラクの国境線はまさにサンクス・ピコ協定の中心地。イスラム国は国家の樹立を宣言したときに「サンクス・ピコ体制を打破した」と叫びました。
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イスラム国が支配を主張する地域 |
ヨーロッパ人が勝手に引いた線を打破し、新たな国境線を自分立ちで引いていく。また、彼らイスラム国はカリフ制国家の建設も掲げイスラム国の最高指導者であるアブ・バルク・バクダディ氏は、自らカリフを名乗ったりしています。
カリフというのは預言者ムハンマド(イスラム教開祖)の後継者ですね。
カリフによって導かれたかつての強大なイスラム共同体を再び拡大し栄光を取り戻そうじゃないか!という呼びかけに現在の社会に不満を持つ若者たちの心をとらえたという側面も否定できません。
残念なことに、一部の不安や不満、怒りを抱えた人々の受け皿にイスラム国がなってしまっているようにも思えます。
イスラム国を軍事的に追いこむことは可能なのかもしれませんが、これら抜本的な問題の解決なくして中東地域に本当の意味での平和が訪れることは難しいのかもしれません。
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