鈴木修一郎と「BIRD'S−EYE」 
       
  鈴木修一郎君は最近数年間「BIRD'S−EYE」シリ−ズを制作し続けている。モノト−ンを基調に、不定形の帯状の形態をとり入れ、俯瞰的な航空写真を想起させるような表現であるが、砂材を駆使した材質感と形態のせめぎあいが、密度の高い画面を形成し、いくつかのコンク−ル展で受賞を重ねている。
 「BIRD'S−EYE」はいうまでもなく視点を日常的な位置から移動し、新しい視角を導入しようとするものである。たとえば、雪舟の風景画にも「BIRD'S−EYE」がとり入れられ、実景の描写ではない部分があるという説を聞いたことがあるし、先年スイスの学者による「BIRD'S−EYE」と題する航空写真集を見たことがある。エジプトのピラミッドなど、よく知られた遺跡が、全く違った見え方をしていて興味深かった。ぼくも空中から下界を見下ろすのが好きで、超高空をとぶジェット機はつまらない。                                     
   触覚的なものに興味をもつという鈴木君は、フラットになり勝ちな画面に、砂をまぜたマチエ−ルに布をコラ−ジュしたり、コンクリ−ト・ブロックを押しつけたりして、レリ−フ状の絵肌によって緊張感を生んでいる。
   数多くの人工衛星がとび交う現代にあって「BIRD'S−EYE」自身はそれほど目新しいものではないが、この画家が「BIRD'S−EYE」という仮説に基づいて、未知の表現領域を追求していることに共感をもっている。素材とのかかわりあいにのめり込むという危険性もあるが、鈴木君もそのことは充分自覚しているようである。同じような様式を繰り返すなかで、鮮度を持続しながらどのような新しい展開を示すのか、期待と関心をもっている。                                      
                                                          三木多聞氏/東京都写真美術館長
                                                                             前国立国際美術館・徳島県立近代美術館長
       
    ◇1992.7 シロタ画廊,東京銀座「個展」パンフより                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
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