宮城県関係の洋画家の制作については、昨年は鈴木修一郎の充実した活躍が目立った。ここ数年モダンア−ト展で連続受賞しているが、昨年も奨励賞を受賞し、河北美術展でもM賞を受賞。伊豆美術祭絵画展優秀賞、第16回日仏現代美術展優秀賞。第9回現代日本絵画展で朝日新聞社賞という風に日本の現代洋画の第一線で高く評価されている。
   また、仙台、盛岡、小牛田などで個展を開いた。特に、12月に小牛田近代文学館で開いた個展は、ここ数年展開している《BIRD'S-EYE》シリ−ズの大作を集めて展示したものでなかなか見ごたえがあった。BIRD'S-EYEは、文字どおり鳥の視点で俯瞰した風景のようなジオメトリックな抽象画であるが、実はこのBIRD'S−EYEは、見る目であると同時に見られる目でもあるという、両義的な視点であることが、この連作によってよくわかる。
   時には垂直と水平の視線を混在させ、アクリル絵具のモノト−ンを基調に試みられる《BIRD'S-EYE》のヴァリエ−ションは、型押しのような無機的なフォルムや触覚的な有機的フォルムなど、さまざまな技法を用いて画面の物質性や身体性を強調している。BIRD'S−EYEは、スタティックな視点を意味するのではなく、視覚のひとつの装置であり、そこに現出しているのは理知と情念のアマルガムである。
   《BIRD'S-EYE》によって方法を確立したこの画家は、いま大切な時期にさしかかっていると思われるが、この回顧的個展は、恐らくそれを意識した自己確認の意味をもっていたのではないかと想像される。
 
                                 
                                                                                  酒井哲朗氏/三重県立美術館長    
                                                                                           前宮城県美術館学芸部長 
                                      
               ◇1991年 宮城県芸術年鑑より 
                                      
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