アニメ「苺ましまろ」感想
(感想は放映中に書いたものです)



苺ましまろ #1 バースデイ 
脚本:佐藤卓哉 /絵コンテ:佐藤卓哉/演出:おざわ かずひろ /作画監督:超智信次

うむ、原作のテイストそのまんま。文句なし期待通りの出来で満足です。
第1話なので作画にもっと力入れてくるかと思ったけど、意外にも普通?
いやそれでも十分いいんで、このレベルを最後まで維持してくれるなら、言うことはないですが。
(てかくずれたら目もあてらんないからな、こういう作品だから。)
伸恵が冒頭で話し始めたとき、「え?この演技で伸恵をやるの」っとちょっと驚かせた直後に、「嘘です、二十歳の短大生です」と入るのが上手すぎ。
女子高生でヘビィスモーカーというTVではマズ過ぎる為に変更された原作の設定を自虐ネタにして、すっと原作読者の為にアニメへの橋渡しをしてくれている。場合によっては短大生というのが嘘であるというメタなネタとも取れる。
あと原作だともうちょっとボケとツッコミのタイミングに切れがあってテンポいいかなとも思うんだけど、このだるーい感じは、個人的には歓迎。

さて、一応原作からのファンなんで、ちょっと作品解説。
この漫画は一見してロリコン漫画ですが、事実そのとおりです。
原作者からしてそうだから。
この先、何のドラマもヤマもオチもイミもなく小学生の女の子のだらだらした日常とボケとツッコミが続くだけなので、ロリ属性のない人が見てもそんなに面白いもんじゃないので、間違ってみてしまった人は速やかに撤退することをオススメします。
さてこの作品の面白いところをわかりやすく例えるなら「小学生の女の子でやる『やっぱり猫が好き』」あるいはその「やっぱり猫が好き」をベースにしている「R.O.D −THE TV−」の三姉妹&ねねねのだらだら日常だけで成り立ってるような作品といったところでしょうか。
(余談ですが、アニメ化決定される前は、この作品を舛成孝二監督にやってほしいなあと密かに思ってました。その期待は裏切られたわけですが、これまたシニカルなギャグとだるい日常を描いて私のお気に入りの作品のひとつである「NieA_7」の佐藤卓哉監督が抜擢されたことは、予想外ではあったけれど本当によかったなと。)

あとは、もう「かわいいは正義」というキャッチコピーに全て集約されるかなと。
かわいいもんが好きでなにが悪いんだ、おらぁ!

追記

感想ぐるぐる見てるとやはり受け付けない人は確実にいるようで、まあ、それ自体は最初から予想できたことですが。
基本的にエロや男、親といったノイズが排除された箱庭世界で、少女への幻想をこれでもかと詰め込んだ上に、それをギャグで中和してる作品だからなあ。ストレートなエロとかハーレムものより歪んでいるといえば歪んでいるから、それ自体に嫌悪を抱く人もいるだろうし。
あと当たり前すぎて言うの忘れたけど、間の演出はすごく良かった。
これについてもまったりし過ぎてダメっていう人もいますが。



苺ましまろ #2
脚本/横手美智子/絵コンテ・演出:神戸守/作監:阿部達也

つことで、能登アナ初登場の神戸守担当回。
神戸演出は、やはりこの作品と相性抜群。桜の花びらがはらはらまったり、四角アイリスアウトがでたり、セルフパロ的なところににやにや。
原作の一回分のエピソードにオリジナルのネタを継ぎ足していて、それ自体は
まあまあ悪くはないんだけど、笹塚君苛めは使いどころを間違ってる上に回数多すぎて、ギャグを通り越してしまっているのと、オチのつけ方が変わっていてそれが滑ってたつうかあまり面白くなかったところはマイナス印象。
いや、なんつーか苺ましまろは無理に笑わせようとしたり、オチらしいオチをつける必要はないんじゃないかという気がしたもので。
アナ登場回は、原作でも珍しく話としてはまとまりのあるほうなんだけど、大概が脈絡なく始まってぐだぐだで終わるからな。
あー、でもこれ以上だらだらぐだぐだにしたらホントに見る人しか見なくなっちゃうのか。



苺ましまろ #3 過程訪問
脚本:花田十輝/絵コンテ:あべたつや/演出:米田光宏/作画監督:大河原晴男

演出が普通レベルになると、本当に幼女が出てくるだけの毒にも薬にもならないアニメになっちゃうな。コンテは、もうちょっと冒険してもいいかなと思った。
茉莉の天然ぷりがかわいかったので許しときます。
ただし茉莉のネコミミ帽子は、原作より狙いすぎててちょっと嫌な感じ。伸恵のオヤジっぷりもちょっとやりすぎな気が。(伸恵は原作でもああいう面はあることはあるんだけど。)
ああいう「狙ったネタ」を狙っているのをわかっていながら普通を装ってやるのが、いいのに。
なんというか原作の要素を誇張して見せすぎかな、もっと「ドライ」にお願いします。
それと原作のエピソードやネタを幾つか混ぜて再構成しているんだけど、なんかあまり上手くいってないような。
脚本家の原作に対する理解の仕方の問題なのかな。
原作ストックなんてほとんどないんだから、原作を下手にいじらないで、完全オリジナルのネタで勝負すべきだと思うんだけど、それはそれで不安になってきた。



苺ましまろ #4 アルバイト
脚本:花田十輝/絵コンテ:池端隆史/演出:三芳宏之/作画監督:立田眞一

Aパートのバイトネタのコントは、オリジナル脚本だったけど、今までのダメダメだったオリジナルネタと比べると、まあまあ面白かった。
それ以外の原作の改変はうーん、という感じ。
バイトネタコントからお医者さんごっこになるんだけど、このお医者さんごっこは、原作にあるものを一部借用したもの(原作コミック2巻)
しかし、美羽の腹に「健康」と書くやつとか、茉莉が卵産むとか、原作エピソードの面白いネタの大半を捨ててしまっているのはどういうわけだ?
Bパートのファミレスネタ(コミック3巻)も面白いとこは伸恵姉の恥かしい恰好を見て笑うってだけで、下手にネタを付け足して膨らませるよりも、スパスパとオチまでもっていった方が良かったと思うんだけど。
そう思うと余計にお医者さんごっこネタを切り詰めた意図がわからん。
別にTV的にまずいネタでもないはずなんだが。

2話以降の原作エピソードの取捨選択の仕方を見ていると、どうもアニメ版スタッフの原作の面白さに対する理解の仕方にズレを感じてしまう。
とあるところの感想で、「原作のとっつきずらさがなくなって見やすくなった」といった感想を目にしたことがあるのだけれど、原作エピソードの改変や取捨選択もTV向けに、カスタマイズされた結果って事なんかなーと。
それで視聴者の間口が広がっているのなら、仕方がないかとは思うのだが
ある程度のブラックさや、突き放したような所のある原作に魅力を感じている自分としてはそういう部分が削られるのはちょっと複雑。
一話は原作らしさも含めてよく出来てたと思うんだけどな。



苺ましまろ #5 そいね
脚本:平見瞠/絵コンテ:佐藤竜雄/演出:太田雅彦/作監:清丸悟

http://d.hatena.ne.jp/CAX/20050826/ichigomashimaro
台風のせいで相当混乱してましたが、リアルタイムで見てたので問題無。
あと再放送あるみたいです

さて今回は佐藤竜雄コンテで、原作をさほどいじってないというのもあってか、まとまりよくまあまあ満足行く出来。
Aパートは原作コミック2巻・episode15
「笹塚立ってろ」は2話で先に使われていたけれど、こっちが本来の形。
Bパートは原作コミック3巻episode22
伸恵が美羽を邪険に扱うのはバイトを首になった件を引いているというエピソード間の繋がりが抜けてしまってるのがちょっと惜しいくら。
泣き出した美羽の伸恵の対応が原作だともっと「めんどくさいことになった」という対応の仕方で、美羽に対する優しさがちょっと欠けてるのだけど、そこはアニメの方が若干良かったかも

それはさておき、Bパートのエピソードは原作の中でもかなり特殊な回で、美羽の内面にちょこっとだけ踏み込んでいて、あとにも先にもこういう話はこれしかない。そういう意味では「苺ましまろ」らしくはないのだけれど、その分重要なエピソードでもあります。
美羽は作中のポジションが、トラブルメーカーで周りを引っ掻き回す役であるということと、生意気で他人に迷惑をかけても平然としているので、単純にむかつく存在としか映らない危険性があるのだけれど、このエピソードのおかげで、美羽の傍迷惑で、エキセントリックな言動は、周りに構って欲しいがゆえのもので、一人っ子(たぶん両親共働きか何かで留守ガチ)であるための寂しさの裏返しであったことがわかることで、美羽に対する見方が大きく変わるのではないかと。
私自身、原作読んでいて、個人的に美羽のことは特に好きでも嫌いでもなかったのだけれど、このエピソードで好感度が急上昇しましたした。



苺ましまろ#6 真夏日
脚本:横手美智子 / 絵コンテ・演出:神戸 守 /作画監督:阿部達也

Aパートは荷物持ちのネタが原作4巻episode38からの引用で、あとの携帯絡みとかはアニメオリジナル脚本かな。4話のじいさんが再登場したのに笑った。
Bパートは前半が原作2巻・episode.14「寝る女」
後半が原作3巻・episode.24「しゃべるな!」の合成。
似通ったシュチュエーションのエピソードを組み合わせたのがまず上手かったのと、この2本のエピソードは原作ではアナの出番がないところに、アナを足してネタを膨らんましているんだけど、元のネタを壊すことなく、面白くなってる。
特に、茉莉とアナが千佳と美羽のやり取りを無視してスケッチブックで会話しているのが面白かった。
ラストの荷物持ちで美羽が自滅するのは、原作とは違うけど、美羽に因果応報で罰があたったみたいな感じで悪くなかった。
シナリオ的にオリジナルパートと原作のエピソードの組み合わせ、使い方が上手くて、1話以外での不満点がやっとこ解消され、更に神戸演出回ということで、文句なく面白かった。



苺ましまろ #7 海水浴
脚本:花田十輝/絵コンテ・演出:米田光宏/作監:大河原晴男

脚本もだいぶこなれてきたのか、見てるほうがなれてきたのか
、原作とどこそごがちがーうということを気にせずふつーに楽しめた、ので今回は原作との比較はパス(いい加減メンドイ)
ギャグに切れはなかったけど、まったりムードでこれはこれで悪くなかった。
そういえばアナのニセイギリス人という設定は原作ではあんまり生かされてないつーかほぼ忘れられてるけど、アニメ版では積極的にネタにされてるな、ま、いじりやすいポイントだからなんだろうけど。



苺ましまろ #8 お祭り
脚本:平見瞠 / 演出・絵コンテ:おざわかずひろ / 作画監督:阿部達也

いくらなんでもこれはダメ。てか最悪。
あれじゃ美羽がほんとうに頭のアレな女の子じゃないか。
確かに美羽の言動は常識を逸していておかしいんだけど、それはあくまで「漫画」の世界、リアルなように見えて全くリアルでない箱庭世界で、小学生の女の子がコントをやっているから許されるし面白いのであって、それを社会常識の基準と比較して「美羽のおかしさ」を客観的に強調して描いちゃだめでしょ。
そもそも美羽がテスト中に意味もなく騒いだり、お祭会場で勝手に商売したり、盆踊りの太鼓を占拠したりといったネタは原作にはない。
これらアニメオリジナルとして追加されたギャグともいえないギャグは原作とはまったく相容れないギャグセンスである上に、明らかに美羽というキャラを曲解している。

ちなみに元となる原作は3巻のepisode.27「おまつり」にepisode23「忍者ごっこ」を付け足して再構成してあるんだけど「忍者ごっこ」のネタは半分は棄ててる。
もともと原作エピソード的にはどちらもそれほど面白いわけではないんだけど、なんだかなぁ。



苺ましまろ #9 育ちざかり
脚本:花田十輝/絵コンテ:おざわかずひろ/演出:楠本巨樹/作監:柳瀬譲二

4巻・episode34の千佳のダイエット話
だいぶ原作に水増ししてるけど、前回が酷かったので、今回のがまともに見えた
千佳が、伸姉の数々の仕打ちが走馬灯のように蘇って、思わずボールをぶつけてしまうところと茉莉が大げさにサッカーボールを避けて無意味にこけるところは、あまりに予想通りの展開に笑った。



苺ましまろ #10 花
脚本:横手美智子/演出:太田雅彦/絵コンテ:池端隆史/作画監督:清丸悟

ギャグ抑え目のまったり回。
まったり日常モノは、派手さがないからこそ、かえって作画の質やコンテ・演出の技量の差で、その良し悪しがはっきり決まってしまうんですよね。



苺ましまろ #11 初雪
脚本:花田十輝/絵コンテ・演出:神戸守/作画監督:越智信次 坂井久太

Aパート・コミック4巻episode40「雨」
Bパート・コミック2巻episode17「銭湯」
花田十輝脚本で、原作のエピソードのネタを相当削って、オリジナルのネタが多様されていたんだけど、全然気にならないくらい面白かった。
信者発言ですが、神戸守がやるともう段違いといわざるを得ません。
今回はやはり間の上手さが光ってたかな。
茉莉の「た、たのもー」といった後の微妙な空気感のあとにもう一度店主に札を出そうとして伸恵に「茉莉ちゃん、いいから」と止められるとことか、「マジでじま」とか。
タイミングを誤るとまず間違いなく面白くなくなるんじゃないかと。
ちなみにここは両者ともアニメオリジナルのネタ、花田脚本回はなにかと評判悪かったけど、今回は、上手く神戸演出によって生かされたんではないかと思います。

あ、あとじいさんが再々登場したのはやられた。
それと原作の室内サッカーだけは残して欲しかったなぁ。



苺ましまろ #12(最終回) クリスマス
脚本:平見瞠/絵コンテ:神戸守・佐藤卓哉 演出:おざわかずひろ /作監:坂井久太


一応最終回だったけど、内容的には普通の出来。まあ悪くは無かったんだけど。
原作コミック2巻episode16「クリスマス」をベースに、原作コミック3巻episode30「リコちゃんハウス」の一部を借用。
リコちゃんハウスは元とかなり違うものになってるんだけど、らしさは失われてなくて面白かった。
サンタを信じてる茉莉に対する伸恵姉の態度が、原作よりもウェットで感傷的になっていて、「いい話」としてまとめられている。話の筋は同じなんだけど、だいぶ印象が違う。
伸恵の性格付けはシリーズ通して原作よりも柔らかさを出してるんではないかと。


シリーズ通しての全体の感想としては、「なんとか『苺ましまろ』してた」といったところかな。
原作信者なのでイジられた原作との微妙な違いがどうしても気になってしまうのは、仕方が無いのだけれど、担当する脚本家、演出家によって出来不出来だけでなく、原作やキャラに対する解釈の仕方にばらつきがあって、ちょっとこれは・・・と思うところも幾つかあり、残念でした。
あと構成の問題だけど、30分でひとつのエピソードにまとめずにAパート、Bパートで話を分けたほうが良かったんじゃないかと思う。
それと、作画は、悪くは無かったけど、とりたてて良くも無かったので、もう少し手間がかかっててもいいんじゃないかなーという気がした。
うあ、なんか文句ばっかだ。
とはいえ、もともと苺ましまろに関しては、原作信者でアニメにするには難易度が高いんじゃないかと思っていた作品だったので、そのアニメ化としては、こちらの望む高いハードルをそこそこ越えてくれてはいたので、この程度の文句で済んでいる、ともいえます。
シリーズ全体では、不満は残るものの、各話に目を向ければ、神戸演出も堪能できたし、十分楽しませて頂きました。




戻る