■「うわさのミニ巫女」大解剖 第二回
龍笛のひみつ ―うわさのミニ巫女―
柴野 理奈子
中島 みなみ
講談社 2008-05
by G-Tools
本作が基本、女の子向けの作品ということを考えると、本当に地味に思えてきてしまう。
一応、結実の友達の麻由美がフィギュアスケートをしているという点が、多少今風ではあるのだけれど、女の子があこがれるおしゃれでかわいい世界とは、三里は離れているのではなかろうか、と思えるくらい、本作はやたらと日本的なアイテムが多い。
二巻「龍笛のひみつ」では、結実が、神社の例祭で行われる雅楽の演奏会で龍笛を演奏することになる、というお話。
神社だから雅楽というのも当然といえば当然だが、渋すぎる。
参考までに作中で演奏される曲目
越天楽 - Wikipedia
「ト〜ラーろ、おール〜ロ」
結実が一生懸命練習する曲、聞けば絶対に知っているはず。
蘭陵王 (雅楽) - Wikipedia
麻由美がフィギュアスケートの曲として選んだもの。
これでどうやってすべるのか想像つかん。
雅楽というだけで小学生には、余りなじみのあるものではないのに児童向けの作品とは、思えないくらい雅楽に関する豆知識豊富で、しかも基本的な解説は、すっとばして笙は結露すると音程が狂うので、常に火鉢で温めなくちゃいけないとか描写が細かい。
まず笙がどんな楽器か教えようよ。
また「野暮」という言葉は雅楽の楽器、笙から来ているといった豆知識が披露されるて、へーと普通に感心してしまった。
調べ物がてら、Wikiを読んでたらいろいろ出てきた。
雅楽にまつわる言葉
「上手い」とか「二の舞」とか雅楽からきているとは知らなかった、ためになるなあw
これにかぎらず、本作では言葉に関する豆知識が、いろいろ出てきたり、日本語の面白さをさりげなく伝えるという児童向けらしい(?)教養性も織り込まれている。
主人公の結実の母と祖母が書道家の師範で、父親は国語の先生、という設定もこの言葉を作品のひとつの鍵として取り入れるために、組み込まれたものなのかもしれない。
言葉絡みは単なる豆知識としてだけでなく、物語の仕掛けにも上手く取り込まれていて、そこもまた本作の面白さになっている。
といった感じでいい大人が読んでいて普通に面白く感じてしまうのだけれど・・・
本当に、これで小学生の興味を引くことができるのかどうか甚だ疑問ではある。
だが、しかし、余りなじみのない日本の文化や伝統、神道を中心とした古来よりの日本人のものの考え方を、子供に伝える良作となる可能性を大いに秘めた本作の進む道を、個人的に支持し、応援したいと心から思うのでありました。
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