アマチュア無線の楽しみ方

最近のインターネットなどデジタル通信の普及には目を見張るものがあります。facebookはわずか1年で2億人のユーザーを獲得したと言われています。音響カプラーでパソコン通信を実験したり、NIFTYでパソコン通信をやっていたのはほんの20年~30年前なのですが。

 1983年に公開された映画「ウォー・ゲーム」(原題:WarGames ジョンバダム監督 マシューブロデリック主演)では、主人公デビッドが電話の受話器を音響カプラにのせてソフトハウスやアメリカ軍のコンピュータにアクセスしている場面が描かれていますが、今では懐かしくなりますね。
 有線通信に対して、もう一つの通信手段があります。そう、無線通信。それぞれに独自の道をたどり発展を続けました。一番最初の無線通信はデジタルだってことをおぼえていますか。モールス符号は信号のあるなしの組み合わせ、まさにデジタル信号ですね。さらにいえば、生物の神経系の信号伝達も私はデジタルだと思うのですが。痛みの強さを信号量に置き換えるのは量子化そのものですよね。
 さて、送り手と受け手の間をワイヤーでつなぐのではなく空間の広がった無線通信は不確実性も伴うものですが、送り手と受け手双方がともにその通信というものを十分に理解しそのうえでよく準備するなら、かなりの確かさで地球上のあらゆる場所と通信することが出来ます。現に多くの商用無線通信が成立できるのはそれが確実であるからです。
 しかし、有線通信のように 誰でも手軽に と言うわけにはゆきません。まず、たいていの国で電波を出すためには免許が必要です。それに加えて地球は丸いわけですから、直接波の届く範囲は限られます。
 しかし、HF = 短波 以下の周波数 つまり30MHzより低い周波数帯をいくつか使えるようにするなら、地球を取り巻いている電離層と地上とを何度か反射して、地球の裏側まででも電波は届きます。最高のコンディションであれば、エコーがかかることすらあります。つまり地球をもう一周してきた電波を、もう一度受信することが出来るということすらあるのです。初めてこのような通信を経験すると、それは忘れられない経験となることでしょう。

 わたしが アマチュア無線局 JI4AFV を開局したのは1988年です。そして当時はまだアマチュア無線局といえども、ログつまり業務日誌を最低2年間は保管することが法律によって定められていました。でも2年たったからと行って捨てる気にはなりませんけども。それでこのログをくってみますと、初めてのQSO(通信)は、平成元年3月7日、山口県美祢市より、21MHz SSB 送信出力 10w お昼頃、UR 55 MI 53 のシグナルレポートを記録。お相手は北海道JRバス厚別アマチュア無線クラブ JH9YXA でした。
 初めて海外とつながったのは、その翌年の9月3日 21.140MHz MI 529 のシグナルレポートを記録しています。 相手はニュージーランド renwickという町の ZL2BTQ という局でした。このときはCW つまりモールス信号を使った通信でしたので、わずか 10W という送信出力でしたが、十分通信できました。その時は本当に見たこともないニュージーランドのrenwickがとても身近に感じられました。あるのはこちらの無線設備と相手の無線設備。あいだにあるのは自然現象と物理現象だけ。もちろん通信できる周波数帯や電波の届く範囲は刻一刻と変化してゆきます。相手は自然ですから。しかしそれを、完全には把握できなくても、ある程度つかんでしまうと、これほどやめられないものはありません。 
 しかし、無線通信は基本的に相手が自然ということで、どうしようもない自然現象により、全く通信できないこともあります。VHF つまり30MHzを超えた周波数をつかい直接波をつかうならあまり関係ないのですが、HF以下の周波数で電離層反射波を使う場合、太陽活動によって11年周期でつながりやすい年とつながりにくい年がきます。また、デリンジャー現象というのをお聞きになったことがあるでしょうか。太陽活動の一種ですが、それが起こると電離層反射波ほとんど使えません。ほんとにその時は無線機が壊れたかと思いましたよ。バンド中隅から隅まで聞いたのですが、沖縄の局が一つ聞こえただけでしたからね。
 VHFの場合、夏になるとたいてい通信障害がありますね。ここ山口では、アナログ放送当時のテレビの2チャンネル(KBC九州朝日)が、真夏のとっても天気のいい日にはうつりが悪くなることがありました。あれは電離層の中でも E層の下にスポラディックE層という特別強力な電離層が発生するために起きる現象です。通称 Eスポ といってますが、これは普段電離層で反射しない高い周波数の電波でも反射してしまうため、韓国や中国あたりのテレビ放送が混信してしまうために2チャンネルの画像が乱れてしまうのです。でもこれはこれでおもしろいんですよ。VHF以上 たとえば 50Mhzや145Mhzをつかってて、いつもは聞こえない韓国のコールサイン HLではじまるコールが聞こえたりすると、もう大騒ぎですから。
 ということで、自分と相手以外は自然を相手にするという無線通信、人間の構築した、誰でも簡単につかえるシステムを目指す有線通信、どちらにも魅力はつきないようです。