2時 小さないのちの坂下さんに「やってあげたいことを全部やってあげて。」とメールを頂きました。
添い寝をして「賢信大好きだよ。よく頑張ったね。ありがとう。おまえは名前の通り賢い子や。」何度も何度も言う。
そして最後に眠るように眠って欲しくて 子守歌を歌いました。
いつも寝るのがへたくそな賢信はおっぱいをのんで抱っこして、子守歌を歌って眠っていました。
「ねーんねん ころーりよ おこーろりーよ けーんしんはよいこだ ねんねーしなー」そう歌いながらトントンすると 私の腕の中ですうーっと、眠っていました。手はいつも私の服をつかんでいました。その寝顔を見ると可愛くて可愛くて 昼間あんなに泣いてたのが嘘のように静かになります。
なめ回したくなるのを我慢してチュウーをして幸せな気分になる。すぐにおろすと泣くので、そのまま寝ころび腕枕をして寝ます。
「スースー」いつも幸せそうな顔をして私の腕の中で眠っていた。
歌いながら涙が止まらない。ちゃんと歌わなきゃ。最後は声にならずに心の中で歌って トントンしてあげました。
定例の薬が来たけど 主人も寝ているし、全て断りました。
3時頃 脈は30になりました。ばあちゃんをおこすと「賢信!」と飛び起きました。
長女が「賢信頑張れ」といいながら起きてきました。
主人は「まだ何とかなる!」と主人に詰め寄っています。
20になったとき延命措置がとられました。再び脈が上がっていきます。60以上になりました。だけど、硬くなった肺の機能はそのままなので酸素の値が上がらない。
先生が違う薬をうってくれるとマシにはなりましたが、それでも80台(90以下だと苦しいらしい)
5時頃しばらくは持ちそうだと 私は賢信の横で添い寝をしました。
他のみんなも寝ました。
賢信の横で私もウトウトし始めました。
6時半頃 ふと目がさめると 先生が横に立っています。飛び起きて機械を見ると脈が20台になっています。
飛び起きて「賢信!」というとみんなも起き出してきました。
子供達が声を揃えて「けんしーん がんばれー」と言いながら起きあがってきました。みんなが賢信の周りに集まります。
東向きの部屋を朝日がさします。
「賢信朝が来たよ」ブラインドをあげました。
先生に「延命をどうしますか?」聞かれました。でも答えることが出来ません。
カウントダウンが進みます。
延命をしても賢信を苦しめるだけです。でも このまま脈が落ちるのを黙ってみてられません。
「どうしたらいいんや どうしたらいいんや」私達はうろたえるばかり「どうする?うつ?」思わずつぶやいた私の言葉も、主人には届いていない様子。
脈が0になったとき「どうしますか?」と聞かれましたが、うってくれということもできず、やめてくれということも出来ませんでした。
先生もそれ以上聞きませんでした。
静かに・・・静かに・・・
7時20分 それは私達がいつも起きている時間でした。
「全て外して下さい。」やっと出た言葉でした。
人工呼吸器が外されます。口は呼吸器を固定するテープでいつも見えませんでした。ずーっと外したかった呼吸器がはずれる・・
上に4本 下に2本小さな歯が見えます。生えかけの可愛い歯です。口は少し開いたまま。入院当時からうっすらと開いていた目は閉じていました。
体を拭いてやる。その横で主人は部屋の片づけをしていました。「今 そんなことをしなくても」一瞬そう思いましたが、「早く帰りたいのかもしれない、じっとしていられないのかもしれない」そう思いました。
でもどうしても側に来て欲しかったので、「こっちへきてあげて」というと何とも言えなく、苦しく悲しい表情をして「こんなもの!」と賢信の手に着けていた 初宮参りのお守りを床に投げつけていました。
管が外されます。透析した管だけは特殊な物で全てはずすのは難しいとのこと。これは本当に悔しかった。外科の先生は「賢信君ごめんな」と声をかけながらやってくれました。看護師さん達も泣いています。
みんなが悲しんでくれるのが有り難かった。
ナースステーションの前を通ると いつも聞こえていた音が聞こえなくなっていました。「ピッピッピッ」賢信の脈を伝える音でした。何も聞こえてこない。
涙は出なくなりました。正直 終わったという気持ちが大きかったです。賢信帰ろう 家に帰ろう。その一心でした。
賢信は体が浮腫んで 1才なのに110pの服しか着れませんでした。
顔も傷だらけで何処一つとってもましなところはありません。
死んでまでこんな目に遭うのか・・・神様なんて信じられない。
病室で処置をして貰い、そのまま抱っこをして自分たちの車で帰りました。
帰りしな次女が「賢信はいつおきるん?」とききました。「もう起きないよ死んじゃったの」「もう家にずーっとおるん?」「ううん 葬式が終わったらお空に行く」「どうやっていくん?」「煙になって飛んでいくよ。」「どうやって煙りになるん?」「・・・斎場ってところで焼いてもらうんよ」(長女がエッと叫んでいます)「そしたら煙になって飛んでいくん?」「うんそうやで。」「熱いやろうな・・・」
家に帰り、布団の上に寝かせてやりました。
冷たい!病院にいるときも冷たかったのですが、全然違う冷たさでした。
顔からは血が流れ出ています。
子供達はそれを誰が拭くかで喧嘩をしていました。
怖がるのではと思っていたので ホッとしました。
本日通夜になりました。
本当は一日家においておきたかったのですが、体が浮腫んでいる賢信はもっと浮腫むからと言われ仕方なく 本日になりました。
「4時に棺を持ってきます」棺?棺に入れるの?当たり前ですが、ものすごくショックでした。
棺には沢山入れたかったのですが、小さな骨と灰が区別が付かなくなると言われ 賢信の好きなチューペットや玩具・大好きなビデオなどを少し入れてやりました。
歩くようになったらと思い 買っていたお姉ちゃんとお揃いの草履もいれてやりました。
口紅を塗ろうとしたら 口の近くの絆創膏が剥がれ、血が流れ出てきました。
申し訳なくて・・・賢信ごめんね。
小さな小さな棺は集会場へ持って行かれました。
通夜には沢山の人がきてくれました。
不思議と涙は出ず 悲しいのかなんなのかもわかりません。
来てくれた人にはあえて顔を見て貰いました。
もし賢信がすぐに死んだのであればこんな顔にはならなかったでしょう。
この顔は賢信が頑張った証でした。
夜 集会所で母に 「もう機械とにらめっこしなくていいんやで」といわれました。
涙があふれてきて そのまま眠りにつきました。
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