奇しくも製法から名称まで同じになってしまったサントリーとサッポロの「吟」ビール。
醸造前の麦芽の皮を取り除くことをもって「吟」を称するのだが、日本酒の「吟醸」とは似て非なるので、日本酒業界からクレームがついたのも当然と言えよう。
実はこの両製品は前年度の大ヒット製品、キリンの「一番搾り」に対抗するものなのであった。
一番搾りは二番麦汁を使わないことによってタンニンの渋みを抑えたビールなのだが、サントリーとサッポロは渋みの原因である皮そのものを取り除いて醸造してしまおうという訳である。日本酒風のネーミングにしたのも「一番搾り」を意識したものであろう。
ただ、両社とも他にはこれといった特徴もなく、ただすっきりした味に仕上がったというだけのビールだった。したがって、一番搾りには到底太刀打ちできなかった。
麦の皮を除去するのにはそれまでよりコストがかかるはずで、ヒットしてくれない限り製品を作り続けるのは難しく、その後この「吟」製法を用いたビールは二度と作られることはなかった。
《追記》
と、上記のように思っていたら、サントリーでは2006年発売の「ジャポネゴールド」で、麦芽の殻と芽を取り除く「麦芽分画技術」という製法を用いてるので、技術としては生き残ったらしい。