ビールの炭酸は天然?

 酵母の働きによって糖分がアルコールと二酸化炭素に分解されるのが「発酵」と言う現象である。

 日本酒に、まだ活動している酵母が入った「オリ酒」というものがあり、これを口に含むと炭酸を感じるのだが、それはこういった理由で、アルコール発酵はもともとが炭酸を伴うものだからである。この種の酒の瓶はたいてい蓋に穴が空けられているのだが、これも発生し続ける炭酸ガスを逃がしてやらないと瓶が圧力で破裂してしまうからである。

 一方、耐圧容器に入れてこの炭酸ガスを空気中に逃がさず、液体に溶け込ませたのが広義の「発泡酒」であり、ビールやシャンパン等がそれにあたる。

 したがって、基本的にはビールはその製造過程によって自然に炭酸が含まれるようになる、と考えられるのだが、昨今はちょっと事情が違っている。

 大手メーカーでは発酵を終えた酵母の活動を、以前は熱処理で止めていたのだが、現在はミクロフィルターで濾過して酵母そのものを取り除いている(これが非熱処理ビール)。ところが、このフィルターを通すことで炭酸も抜けてしまうのである。

 よって、大手メーカーのビールでは、コーラやサイダーのように新たに炭酸ガスを圧入してから缶や瓶に詰めて出荷することになる。

 最近出回っている地ビールの中に「天然の炭酸」を売り物にしているものがあるのは、大手メーカーのビールにはこういう事情があるからである。地ビールは酵母を生かしたまま瓶(缶)詰めするからミクロフィルターを通す必要がないのだ。

 もちろん後から炭酸を圧入しているからといって、それが味に直接影響することがあるとは思えない。

 だが、大瓶や家庭用ミニ樽等容量の大きい容器でも最後まで気が抜けないよう、この炭酸がけっこう強めに入っていて、それがビールに大きな誤解を与えている遠因となっていることはあると思う。詳しくは次項にて。

 

 なお、スパークリングワインの中には、出来の悪いワインに人工的に炭酸を圧入しただけのシロモノ(日本製に多い)もあるので注意が必要である。これは飲んで不味いのですぐわかるのだが。

 

  目ウロコ話メニューへ   トップページへ