アサヒの新作プレミアムビール。前作「マイルドアロマ」に引き続いての麦芽100%ビールである。
かつてのアサヒのプレミアム価格帯のビールと言えば、「こだわりの極」「熟撰」のように麦芽100%を否定して、副原料を用いることにポリシーを持ってやってきたのが、ここに来て路線変更したようである。勇気ある英断と言っていいだろう。
さて、このプライムタイム、メーカーによると「自分だけの極上の時間」を楽しむためのビールなのだとか。
メーカーのホームページによれば、「最高ランクと言われるドイツテトナング地方のテトナンガー種を中心としたファインアロマホップ」を使っているので上品で豊かな香りであり、「高温アインマイシェ法」によって泡の質がきめ細やかなのだとか。これはメーカーのプレス発表によれば「高温で短時間の仕込みを行うことで、泡の組織要素であるタンパク質の分解を抑制し、泡の質向上を実現するドイツ伝統の醸造方法」とのこと。
グラスに注ぐと確かにきめ細かい泡が立つ。だが、香りはメーカーの言うような「芳醇な香り」とは言い難い。どちらかと言えば「仄かな香り」だ。味わいは確かにまろやかでマイルド(同じか)。しかし麦芽100%の割には例によってモルトのコクが感じられないのはこのメーカーならではのことだ。
プレミアム価格帯のビールとしては、他メーカーで既にヱビス、プレミアムモルツ、チルドビールといったオールモルトらしいコクのあるビールがあり、それとの差別化を図ったのかもしれない。だが、通常価格帯のビールとの差別化が図れているかというと、「プレミアムビール」としては疑問の残るビールである。
ところで、消費者として気になるのは原材料「麦芽、ホップ、窒素」という表示であろう。原材料「窒素」というは今までになかったからだ。
実は、ビールに窒素ガスを使うというのは、既に欧米では行われていた手法なのである。ビールサーバーで圧力をかける際に炭酸ガスに加えて窒素ガスを併せて用いたり、ドラフトギネスのように缶の中に窒素ガスを充填したカプセルを入れたりという具合に。そのことによってビールの泡がきめ細かくなるのだという。
日本では法律の関係で、今まではビールへの窒素ガスの使用ができなかったのだが、平成9年に国税庁から通達が出て酒税法施行規則が改正され「酒類の保存のため」という名目で窒素が使用できるようになったらしい。
プライムタイムの泡のきめ細かさは、あるいはこの窒素ガスを用いたことが影響しているのかもしれない。
そして、今後はこの窒素使用のビールというのは増えていくのだろうか?
ただ、個人的には醸造過程と無関係なものを後から添加して味を調整する、というのはどうも邪道のような気がしてしまうのだが。そう考えるのは保守的すぎるかな?