《アサヒ ザ・マスター》

 アサヒが5月に発売したオールモルトビール。「ザ・マスター」という名称だが、特にプレミアム価格という訳ではなく、スーパードライなどと同様の普及価格帯の商品である。

 これで、サントリーの「モルツ」、キリンの「新一番搾り」、このアサヒの「ザ・マスター」と、三社からオールモルトの普及価格商品が出揃ったことになる。

 缶に「ドイツ伝統“PILS”タイプ」とあり、このビールが「“ビールの本場、ドイツ伝統の味わい”というコンセプト」(メーカーのニュースリリースより)で作られたことを強調している。

 ただ、日本のビールの歴史を紐解けば、明治の黎明期に各社が作っていたビールはいずれもがドイツ人技師が指導し、ドイツ製の設備とドイツ産の原料を使ったピルスタイプ(チェコのピルゼン風淡色ビール。早い話がピルスナービール)だったので、もともと我が国のビールというのはその殆んどがドイツ産ピルスの流れを組んでいるのだが。

 それでもこのザ・マスターは原材料にドイツ産ホップ(使用比率50%以上)とドイツ産麦芽(使用比率25%以上)を用い、「ドイツのビール醸造学の中で最も権威の高い大学の一つである『ミュンヘン工科大学』から醸造学の“マスター”の称号を与えられた醸造家が監修」(同ニュースリリースより)して、より一層本場ドイツの味わいに近づけているとのこと。

 飲んでみると、ホップの香りは穏やかで、飲み口も意外にスッキリと軽い。メーカーの主張する「コク・味わい深さ」や、缶に書かれたキャッチコピーの「味わい深く、薫り高いビール」というのを想像すると肩透かし、という感がないでもない。これなら、イオン限定発売の同社の「ロイヤルブリュー」の方が味わい深いぞ、と思えてくる。

 5月にビアライゼ同好会に行った時に、このザ・マスターの試飲缶がふるまわれたのだけれども、その席で、アサヒのえらい人(肩書きは忘れた)が、「基本的にはビールはキレとスッキリが主流」と明言していたことを思い出す。いくら「コクと味わい」を目指しても、基本がそれであれば、と納得。

 アサヒはスーパードライで会社を立て直し、スーパードライでビール売り上げナンバーワンを突っ走る会社だから、やはり「キレとスッキリ」路線からは離れられないのだろうね。

 

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