《キリン 新・一番搾り》〜15年目の再出発〜

 ビールは同じ会社の同じ製品だと、ずっと同じ味かというと、そういう訳でもない。

 まず、工業製品ではないから、純粋に毎回同じものは作れないということ。ワインなんかは天候でブドウの出来が違ってくるので、年によってずいぶんと値段が違うしね。もちろん麦やホップはブドウに比べれば安定して作れるのだろうけど。

 それとは別に、メーカーの方で味を変える、ということもある。

 時代によって消費者の嗜好が変わってくることもあるので、同じ製品でも味を微調整するわけである。

 そのいい例がキリンラガーで、昔は苦いビールの代名詞のような味だったのが、若者や女性を取り込もうと思ったのか、どんどん苦味を押さえ、軽い味へと時代とともに味を移行させていった。

 もっともそれが裏目に出たのか、売上は逆に落ち込み、今は昭和の味に戻したクラシックラガーという商品を同時発売するという奇妙なことをやっているのだが。

 一番搾りが15年ぶりに味をリニューアルしたという。

 15年経ってはじめて味を変えたというのだが、ホントかなぁ。

 実は初めて一番搾りを飲んだときに、美味しいと思った。初期の一番搾りはコクがあってその割にはすっきりした後口のビールに思えたのである。しかし、その後だんだんと美味しいとは思えなくなっていった。なんだか雑味が多くなって、その割にコクがなくさっぱりした味になってしまった気がするのである。メーカーは否定するかもしれないが、私の舌はそう感じた。

 今回のリニューアルでは、従来より麦芽を多く使って、「コクと味わいのあるしっかりとした飲みごたえ」に仕上げたとのこと。発泡酒が全盛の今だからこそ、ビールはビールらしい味として差別化を計ったというところか。軽い味で2003年に新発売したアサヒの「穣三昧」はあっさりずっこけちゃったしね。

 飲んでみて思ったのは、「あっ、これって昔の一番搾りの味じゃん」ということ。昔のコクとまろやかさが帰って来たような気がする。確かに今までの一番搾りより美味しくなったと思う。

 でも個人的にはリニューアルというよりはリバイバルという感じだな。メーカーは否定するだろうけどね(笑)。

 

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