読者からの質問と回答 01161 〜 01170

T.K.さんからの質問 #01170

開近傍の逆像が開近傍であることは,点における写像の連続性を特徴付けるでしょうか.

位相空間 X から位相空間 Y への写像 f と点 a ∈ X について,次の2条件を考えます.

(1) 点 f(a) の任意の近傍 V に対して,V の逆像 f^{-1}(V) は a の近傍である.
(2) 点 f(a) の任意の開近傍 V に対して,V の逆像 f^{-1}(V) は a の開近傍である.

ただし,点 x の近傍とは,x をその内部に含む集合のこととして定義します.
上の2条件 (1) と (2) は同値でしょうか.

お答えします:

反例があります.
通常の位相をもつ実数直線 R から R への関数 f を,
x < 0 のとき,f(x) = 0,
x = 0 または x > 0 のとき,f(x) = 1
として定義します.
このとき,関数 f は点 a = 1 で条件 (1) を満たしますが,(2) を満たしません.
f(a) = 1 の開近傍 V = (1/2, 3/2) の逆像が a の開近傍でないからです.
お役に立てば幸いです.


R.K.さんからの質問 #01169

第11章,註 11.17 の主張「Cl A - A^d は A の孤立点の集合である」について教えて下さい.

『はじめての集合と位相』 の註 11.17 の主張「Cl A - A^d は A の孤立点の集合である」という部分がどうしてもわかりません.
その前の命題「Cl A = A ∪ A^d が成り立つ」を使うと, Cl A - A^d は A になるのではないかと思います.
なぜなら,Cl A = A ∪ A^d から,

Cl A - A^d = (A ∪ A^d) - A^d = A(たぶん,ここが間違っていると思う?).

結果として,A の任意の点は A の孤立点というになり, おかしなことになります.
どこが,間違っているのでしょうか.

お答えします:

たしかに,「ここが間違っていると思う?」と書かれた箇所に問題があります.
このような場合は,簡単な例を考えてみるとよいと思います.

E^1 の部分集合 A = (0, 1) ∪ {2} について考えます.
ただし,E^1 は通常の位相をもつ実数直線,(0, 1) は開区間を表す.このとき,
Cl A = [0, 1] ∪ {2},
A^d = [0, 1].
Cl A - A^d = {2} が A の孤立点の集合です.

ご自分の推論のどこが間違っているか,気付かれたのではないでしょうか.
さらに,疑問があれば,遠慮なくお尋ね下さい.


R.K.さんからの質問 #01168

第14章,点列 {x_n} の部分列は,{x_k(i)} より {x_k(n)} ではないでしょうか.

『はじめての集合と位相』の部分列の定義についてご質問します.
定義 14.3 には,下のように書かれていますが, 点列 {x_n} の部分列は,{x_k(i)} より {x_k(n)} ではないでしょうか.

定義 14.3.
距離空間 X の点列 {x_n} が与えられたとする.このとき,条件
(∀i, j ∈ N)(i < j ならば k(i) < k(j))
を満たす任意の写像 k : N ---> N に対して, 点列 {x_k(i)} を {x_n} の (写像 k によって定められる) 部分列とよぶ.

お答えします:

点列の添え字は,どんな文字を使っても数学的には間違いではありません.
問題は,どの書き方が,正確で分かりやすいかということだと思います.

定義 8.16 で定めたように,X の点列 {x_n} とは,正確には,写像
x : N ---> X ; n |---> x_n
のことです.
このとき,点列 {x_n} の部分列とは,単調増加関数 k : N ---> N と写像 x との 合成写像 x o k のことを意味します. 私は,写像 x の変数と関数 k の変数は異なる記号を使うべきだと考えて,n と i を使いました.
その理由は,例えば, 関数 y = sin 2x は,関数 y = sin u と関数 u = 2x の合成関数ですが, この場合,後の関数 y = sin u と前の関数 u = 2x とでは異なる変数記号「u と x」を使うからです.

部分列は,それぞれの著者の流儀によって,いろいろな表現がされています. 巻末で紹介した参考書の [5] や [7] では,点列 {x_n} の部分列の変数として n を使っています.
R.K.さんの n の方が理解しやすいという意見は,貴重なご意見として承り, 今後もこの問題について考えたいと思います. どうもありがとうございました.


R.K.さんからの質問 #01167

第4章,2項関係の定義 4.1 について質問があります.

『はじめての集合と位相』 第 4 章, 定義 4.1の「x と y が関係 R を満たす」ことの定義がよく理解できません.

定義 4.1.
2項関係 R ⊆ X^2 が与えられたとき, X の任意の要素の組 (x, y) ∈ X^2 に対して,(x, y) ∈ R が成り立つとき, そしてそのときに限り,xRy と書き,x と y は関係 R を満たすという.

上の定義が正しいとすると,
任意の (x, y) ∈ X^2 に対して,(x, y) ∈ R が成り立つということは, X^2 ⊆ R だから,R ⊆ X^2 と X^2 ⊆ R より,R = X^2 が導かれると思います.
でも,これだと納得がいきません. R = X^2 ということは,R という集合が,元 (x, y) ∈ X^2 の x, y に対して何の条件も与えていないと思うからです.

お答えします:

上の定義 4.1 の文章について,カッコ 「」 を付け加えて説明します.
ご質問は,

「X の任意の要素の組 (x, y) ∈ X^2 に対して,(x, y) ∈ R が成り立つ」とき, そしてそのときに限り,xRy と書き・・・

と読めるということだと思います. 一方,私の意図は,

X の任意の要素の組 (x, y) ∈ X^2 に対して, 「(x, y) ∈ R が成り立つとき,そしてそのときに限り,xRy と書き・・・」

です.
実は,この箇所の表現は,執筆の途中で編集者からも指摘があり, かなり考えた結果です.
ここでは,すべての要素の組 (x, y) ∈ X^2 に対して,それぞれどんな場合に xRy と書くかを定義しています.
もし英文で表現すると,

for any (x, y) ∈ X^2, xRy if and only if (x, y) ∈ R

となり,誤解の余地はほとんどないと思います. ところが,これを日本語で書くと,R.K.さんが指摘されたような解釈の仕方が生じてしまいます. 一般に,これが難しいところですが, 論理的な文章を日本語で書くと,この種の問題が度々起こります. 幸い,数学の場合は,R.K.さんも気付かれたように, 意図しない読み方をすると,すぐに矛盾が生じて誤解に気付くことができます. そこで,英文にもっとも近い表現として, 定義 4.1 の書き方をしました.
理解して頂けたでしょうか.

ていねいに読んで頂いていることに感謝いたします.


K.E.さんからの質問 #01166

距離空間の可算帰納的極限は距離化可能でしょうか.

お答えします:

反例があります.
直積空間 X = [0,1] × N から集合 {0} × N を1点に同一視して得られる商空間を S で表し, 商写像を h : X ---> S で表します. 各 n ∈ N に対して,X_n = h([0,1] × {1, 2,・・・, n}) とおくと,商空間 S は {X_n : n ∈ N} の帰納的極限. このとき,各 X_n は距離空間ですが,帰納的極限 S は距離化可能ではありません.


? さんからの質問 #01165

意味不明な質問?

0 ≦ P(A) ≦ 1

P(空集合) = 0,P(U) = 1

解き方教えてください

お答えします:

ご質問の題意が分かりません. 質問者は,分かっているのでしょうか?
メールに返信しましたが,届きませんでした.


J さんからの質問 #01164

距離空間の開集合の境界は離散集合の集積点の集合であることの証明について, ヒントを下さい.

こんにちは. 先日,#01162の質問をさせていただきました J です.
何とか解くことが出来ました. また新たに質問があります.

「距離空間Xにおいて,開集合の境界は離散集合の集積点であることを示せ 」

というものです. ヒント,方針を教えて下さい.
よろしくお願いします.

お答えします:

ご質問は,2通りの意味に読めます.

(1) 距離空間 X において、開集合の境界の点は離散集合の集積点であることを示せ.
(2) 距離空間 X において、開集合の境界は離散集合の集積点の集合であることを示せ.

(1) は簡単なので,(2) であるとしてヒントを与えます.

各自然数 n について,1/n 近傍全体からなる X の開被覆を考え, 距離空間のパラコンパクト性を使って,その局所有限開細分をとる. このとき,局所有限被覆の各要素から1点ずつを選んで作った集合は,X の離散集合になります.

前回のメールでは,J さんは大学生ということでしたが, 少なくとも 1, 2 年生レベルではないようですので,こんどは 50 %位のヒントにしました.
解決できることを祈っています.


K.M.さんからの質問 #01163

第6章,問7の解答の最後の式は誤植ではないでしょうか.

『はじめての集合と位相』第 6 章の問 7 の解答(229ページ)の最後の行,

Y - f(A_n) = g(Y - f(A_n)) = (0,1) - {1/2^i : i = 1, 2, ・・・, n}

の最後の式は,

[0,1) - {1/2^i : i = 1, 2, ・・・, n}

の誤植だと思いますが,どうでしょうか?

お答えします:

ご指摘の通りです.
さっそく, 正誤表にて訂正しました.
どうも,ありがとうございました.

なお,K.M.さんには御礼のメールをお送りしましたが,届きませんでした.
この場にて,御礼申し上げます.


J さんからの質問 #01162

孤立点を持たない距離空間 X における離散部分空間の閉包は X で nowhere dense である.
この命題の証明について,解決のヒントを下さい.

こんにちは. 位相を勉強している大学生です. 問題に行き詰まったので解決法を教えて頂きたくメールしました.

問: 孤立点を持たない距離空間 X における離散部分空間の閉包は X で nowhere dense であることを示せ.

定義としては,
・A が X で nowhere dense であるとは,その閉包が空でない開集合を含まないこと.
・p が孤立点とは,{p} が開集合である.
・D が X の離散集合とは,∀d ∈ D, ∃U(Xの近傍)s.t. U ∩ D = {d} であること.
が与えられています.

背理法でやろうと何とか定義をいじって示そうとしたのですが,なかなか上手くいきません. 解決のヒントをよろしくお願いします.

お答えします:

背理法で示す方針はよいと思います.
X の離散部分空間 D の閉包 cl D が nowhere dense でないと仮定する.
このとき,cl D は空でない開集合 G を含む. D は cl D の中で稠密だから,G ∩ D の点 d が存在する. 一方,D は離散だから,U ∩ D = {d} を満たす d の開近傍 U が存在する. H = G ∩ U とおくと,H は開集合で,

d ∈ H ⊆ cl D と H ∩ D = {d}

が成り立つ.
これで証明は 90% 完成しました. 解決のヒントをということでしたので,最後の矛盾を導く段階は, 質問者に残しておきたいと思います.


H.S.さんからの質問 #01161

命題 "No non-discrete subspace of βN is a sequential space” の証明について教えて下さい.

初めまして,現在,位相を勉強中です. 教えていただきたいことがあります.
βN には収束列が存在しないことはわかりますが,次がわかりません.

“No non-discrete subspace of βN is a sequential space.”

お時間のあるときで結構ですので.よろしくお願いいたします.

お答えします:

ご質問の命題は, 「βN の部分空間が離散空間ないならば列型空間でない」ですが,対偶をとると,

(1)「βN の部分空間が列型空間ならば離散空間である」

になります. 「βN には収束列が存在しない」という事実をご存じなようですが, 有限個の項をのぞいて同じ点であるような点列は,その同じ点に収束します. したがって,正確には,

(2)「βN の収束列は高々有限個の項を除いて同じ点である点列に限る」

という必要があります. この事実 (2) を使って,上の対偶 (1) を証明します.

証明. βN の部分空間 A が列型空間であるとする. このとき,A が離散空間であることを示す. A の任意の部分集合 B をとると, 事実 (2) より,B の任意の収束列は B の点に収束する. ゆえに,B は sequentially closed. いま,A は列型空間だから,B は A の閉集合である. 結果として,A の任意の部分集合が A の閉集合だから, A は離散空間である.

以上,回答まで.


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