読者からの質問と回答 01251 〜 01260
第4章,問6についての質問です.
以前にも質問したことがあります.
数学ができるようになりたいと思い,日々勉強しています.
『はじめよう位相空間』
の第4章,問6で質問です.
極座標表示された2次元閉球体の図がどうなるかわからないです.
{(r,θ) : 0 ≦ r < 1} は半径1の開円板.
{(r,θ+π/2) : 1 ≦ r ≦ 2} は半径 2 の真ん中が空いている円板.
この2つを合わせると,半径 2 の2次元閉球体ができて,
連続でない点があるとは思えないです.
教えていただけるとありがたいです.
お答えします:
写像 f : B^2 —> B^2 は,定義域も終域も半径が2の B^2 で,それらの形は変化しません.
しかし,写像 f によって,B^2 の 1 ≦ r ≦ 2 の部分だけが π/2 回転します.
そのため,動かない 0 ≦ r < 1 の部分と,回転する 1 ≦ r ≦ 2 の部分の境界である
r = 1 である点では,f が不連続になります.
その理由は,解答に書かれている通りです.
これで回答になったでしょうか. ご理解が進むことを祈っています.
連結コンパクト集合で結べない2点をもつ連結空間の例を教えて下さい.
お答えします:
平面 R^2 上の部分空間
X = {(0,y) : y ∈ R} ∪ {(x, (1/x)\sin(1/x)) : x > 0}
はどうでしょうか.
原点と点 (1, sin 1) を含む X の compact 連結集合は存在しません.
第15章,例15.2 の集合族 A^ と Av がなぜそのような集合になるのかわかりません.
数学が大好きな社会人で, 『はじめての集合と位相』 で勉強させて頂いております. どうしてもわからないところがありまして,質問させて頂きました.
201ページの例15.2ですが,
A^ と Av がなぜそのような集合になるのかわかりません.
条件にある B は,A の部分集合ですので,以下のようになると思っています.
空集合, {{a}}, {{b}}, {{a}, {b}}.
このような B に対して,
∪B, ∩B を計算すればよいと思うのですが,
解のようにはなりません.
お答えします:
集合族 B ⊂ A の候補は,上に書かれた4つの集合族の通りです.
最初に,A^ について:(15.1)と(15.2)より,
B = 空集合のとき,∩B = X,
B = {{a}} のとき,∩B = {a},
B = {{b}} のとき,∩B = {b},
B = {{a},{b}}のとき,∩B = {a}∩{b} = 空集合.
ゆえに,
A^ = {空集合, {a}, {b}, X}.
次に,Av について:(15.1)と(15.2)より,
B = 空集合のとき,∪B = 空集合,
B = {{a}} のとき,∪B = {a},
B = {{b}} のとき,∪B = {b},
B = {{a},{b}}のとき,∪B = {a}∪{b} = {a, b}.
ゆえに,
Av = {空集合, {a}, {b}, {a, b}}.
以上で回答になったでしょうか.
最後になりましたが,
『はじめての集合と位相』のご購読に,
心より御礼申し上げます.
連続全射写像が閉写像になるための条件について教えて下さい.
連続全射写像 f : (X,O[X]) → (Y, O[Y]) が閉写像であることを示すためには,
任意の U ∈ O[X] に対して,{y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} ∈ O[Y]
であることを示せばよいのでしょうか.
お答えします:
よいと思います.
{y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} = Y - f(X - U) とかけるからです.
X の任意の開集合 U に対して, Y - f(X - U) が Y の開集合であることは,
X の任意の閉集合 X - U に対して,f(X - U) が Y の閉集合になることと同値です.
以上で回答になったでしょうか.
誘導位相をもつ位相空間 Y への全射連続写像が閉写像にならない例を教えて下さい.
連結ハウスドルフ空間 (X,O[X]) と全射写像 f : X → Y に対して f が連続写像になるように誘導位相をY にいれます.
つまり,O[Y] = {V ⊂ Y : f^{-1}(V) ∈ O[X]} です.
この誘導位相の定め方は f が閉写像であるための必要十分条件
「開集合 U に対して,{y ∈ Y : f^{-1}(y) ⊂ U} が開集合」
に似ていますが f が閉写像になる例とならない例を教えてください.
お答えします:
閉写像にならない例:
通常の距離をもつ平面 R^2 と通常の距離をもつ数直線 R,
および,R^2 から R への射影 f を考える.
このとき,R の位相は f による誘導位相であるが,f は閉写像でない.
たとえば,y=1/x のグラフ G は R^2 の閉集合であるが,f(G) は R の閉集合でない.
閉写像になる例:
自明なことですが,たとえば,上の R に対して,R から R への恒等写像はその例です.
以上で回答になったでしょうか.