ジギタリス





さらさらさら。


風の音。


さらさらさら。


水の音。


土の香。
空の青。
山の碧。


さらさらさら。


柔らかな湿原。
踏み潰す、靴音。
近づいて、零れる吐息。
微笑みの吐息。


さらさらさら。


ひとり。


さらさらさら。


わたし、ひとり。


さらさらさら。


わたし、ひとりぼっち。


この、ひろぉい世界で。



さらさらさら。



風はしらんふり。


水はいじめるの。


山は閉じ込める。





でも。




靴音。




優しい。




とても、優しい。





そこで、止まって。
なんにも言わないけど。





あなた、とても、優しい。







甘い、香り。







ねえ





あなた、おとうさん?








なら、あのおはなしは本当だったのね?








お父さん。







わたし、お父さんに会いにきたの。






お花の御本を読んで、お父さんに会うための切符まで頑張って探したの。







ねえ。








きれいでしょう?










だって、天国にしか咲いていないお花だもん。






そう、書いてあったもの。






ねえ。







お父さんもそう思うよね?







きれい。






とってもきれいよ。







ジギタリスの、





お花。