想いと呪文と、代償と −2− |
「えっと、今日は……」 それなりに人通りのあるがやがや町。 その通りを、ソフィーは買うものを考えつつ歩いていた。 ―――――今日の夕飯は何にしようかしら。 そういえばベーコンの残りも少なかったわよね。 それに、ハウルは朝は絶対にパンが無いといやだって我がまま言うから、忘れずに買っていかなきゃ。 そうそう。そういえば、石鹸も切れてたし油も切れてたわ。 ハウルの部屋のスス取りに使う新しい掃除用具も欲しいわね。 それから、それから――――――― 「……………」 ふと。 ソフィーは、つい真剣に考えこんでいる自分に気がついた。 思わず、顔を赤らめる。 な、何だか。 何だかこんなことを真剣に考えてる自分って。 「奥さん」みたいじゃない〜〜〜〜っ!! 思わず顔を伏せる。 うつむいた顔は、赤いまま。 もちろん、ソフィーはすでに「ジェンキンス」の姓を名乗っている。 「奥さん」という代名詞で間違いはないのだが。 今はまだ聞きなれない、その単語。 「ソフィー・ジェンキンス」という、その名前。 そう。ようは。 照れる、のだ。 だって、ちょっと前まで私は「ソフィー・ハッター」だったわけで。 それなのに、こんな時にハウルの妻だってことをストレートに思いしらされる。 正直、自分だってまだ自覚があまり無い。 まるで、自分が自分じゃ無くなってしまうような、この感覚。 頭の中で、何かがトロトロと甘いものに変わっていくような、この感覚。 でも、それはちっとも悪い気はしなくて。 嬉しいやら恥ずかしいやら、複雑な気持ちでソフィーは小さく咳払いをした。 「…………?」 そこでようやく、ソフィーは自分の体調の変化に気がついた。 どうも興奮したせいか、頭がボーっとする。 足取りも、ままならない。 「……?風邪でもひいたのかしら」 ソフィーはあまり深く考えずに、額を押さえながら空を仰いだ。 見ると、空一面を厚い雲が覆っていて。 この分だと、もうすぐで雨が降るだろう。 洗濯物を干してきたが、マイケルは取り入れてくれてるだろうか。 「い…っ急がなきゃ」 ようやく、こんなことをしている場合じゃないと気がついたソフィーは、寄るお店をもう一度頭の中で整理してから、先ほどより歩調を早めた。 |