続・小さな邪マモノ −3− |
ど、ど、どうすればいいの〜〜〜っ?! ソフィーはハウルに抱きしめられながらも、頭の中はこの台詞で一杯だった。 キスをして。 抱きしめられて。 また、キスをして。 ここまでは、よかった。 ここまではまだ、いつもと同じだから大丈夫。 でも、今日はいつもとは勝手が違ったのだ。 そう。 何が違うって。 ソフィーは、キスされつつも薄っすらと目を開けた。 目の前にハウルの長いまつ毛が見えて一瞬鼓動を跳ね上がらせるが、何とか視線を横に動かす。 そう。 今は、二人とも寝着を着ていて。 そのうえ、ここはハウルの部屋。 その上、月の高く上る夜更けで。みんなは夢の中。 そして―――――――――目の前にはベッド。 これって。 この状況って。 ウソでしょ〜〜〜〜っ?! ソフィーは、再び胸中で悲鳴を上げてみせた。 もちろんソフィーは、ハウルと身体を重ねるのは初めてではない。 とはいっても、片手で十分に数え切れるほどの回数なのだが。 でも、そのたび。 そのたびにソフィーは、何故か自分が自分じゃなくなるかのような錯覚にとらわれるのだ。 それがいけないことなのか。 いいことなのか。 そんなの分からなくて。 いつも夢中で。 必死で。 そんなの考える余裕もなくて。 正直ソフィーは、まだ「怖い」のだ。 自分じゃなくなるような、あの感覚が。 いつもより2度ほど高い、ハウルの熱い想いが。 と、その時。 「ん……むっ」 突然ソフィーは、そんな思考を一気に中断させられるかのような状況に陥った。 キスをしながら、ハウルに少しだけ開かされた唇。 その唇の間から。 ハウルが。 「ん………んーーー……っ」 眩暈を起こすほどの、激しいキス。 唇を触れ合わせているだけでもソフィーにとっては必死なのに、ハウルはそれだけでは足りないと言わんばかりに、ソフィーの中まで奪い続けて。 息ごと、呑まれる。 「ハ……ん……っ」 何とかハウルに、それを伝えようとするのだが、再び唇を重ね合わせられて。 ソフィーは、ただハウルに身を任せることしか出来ない。 ようやくハウルが唇を離してくれたときには、ソフィーは自分で立っていることも出来ない状況になっていた。 そんなソフィーを、ハウルはしっかりと支えて。 ふわりと抱き上げたかと思うと、ベッドに優しく座らせてやる。 そして、額にキスをした。 「……ソフィー?」 とろとろと、何かが頭の中で溶けていくような、この感じ。 頭にぼんやりと響く、ハウルの声。 ソフィーは、そんな気持ちを落ち着かせるかのように、ゆっくりと息を吐いた。 「……怖い?」 そんなハウルの言葉に、ソフィーは一瞬ピクリと反応して。 目の前に立つハウルを見上げようと、ゆっくりと顔を上げた。 かと思うと、対するハウルはソフィーの肩もとに顔を静かに埋めて。 呟く。 「……ソフィー、大丈夫。僕だって、一緒さ」 そう言って、ハウルはソフィーの首筋に顔を埋めたまま静かに目を閉じた。 いつもより彼女の体温が高いことに、胸が熱くなる。 そう。 ハウルも「怖い」のだ。 自分の熱すぎる感情をぶつけてしまうことで、ソフィーを壊してはしまわないか。 ソフィーに、つらい思いをさせているのではないだろうか。 自分の中のソフィーへの想いや感情、そして欲望が強すぎるのではないだろうか。 ソフィーのことを、想えば想うほど。 その感情は、高まるばかりで。 するとソフィーが、そんなハウルにまるで頬擦りするかのように顔を近づけた。 そして、黒髪に唇をそっと触れる。 「大好きよ、ハウル。大好き。………あなたを、愛してる」 途端。 ハウルが一瞬眉をしかめたかと思うと、ソフィーを強く抱きしめた。 |
そのまま、二人一緒にベッドに倒れこむ。 ハウルを見上げる、ソフィーと。 ソフィーを見下ろす、ハウル。 言葉は―――――――――いらない。 |
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