INDEX
1. 腐植(Humus) . |
2. 腐植化 . |
3. 有機物の分解 . |
1. 腐植(Humus)・・・・・植物性有機物
・生物とくに植物の枯死骸でまだ分解が進まず、肉眼でも植物の組織として識別できる暗色または褐色の腐朽物質
・これが更に分解されてできたウロン酸、アラントインなどからなる腐朽従物質
・フミン酸(腐植酸)を主体とする真正の腐植物質を意味しており、狭義にはフミン酸という。
フミン酸(Humic Acid)は主としてリグニン、微生物体のタンニン、蛋白質などから生成されている。
酸性腐植質・・・・黒または褐色のコロイドで、フミン酸による酸性反応を示す。
中性腐植質・・・・酸基が遊離塩基で飽和されたもの(Ca2+、Mg2+、K+・・・)
過剰の塩基を吸着し、他の塩基と塩基の置換をする性質がある。土壌に腐植質が混和したとき肥沃度を増す要因の一つとされる。
その他の土壌の物理的性質・・・・たとえば、保水力、通気などを良くする。
土壌中に腐植質含有量が20%以上のものを腐植土という。
1) ウロン酸(Uronic Acid)
ゴム質、ペクチン、ヘミセルロース、アルギン酸、細菌、多糖類などの細胞壁や粘液物質の主成分
グルクロン酸・・・・植物ゴムの構成部分
マンヌロン酸・・・・昆布、わかめなどの褐藻類に含まれているアルギン酸(織物のノリやフィルムとなる)の主成分
ガラフェロン酸・・・果実の皮や根などに多く含まれているペクチンの主成分
2) アラントイン
タバコの種子、甜菜、小麦の芽、尿膜液など動植物界に広く存在する
鶏糞中の尿酸 → 尿酸分解酵素(ウレアーゼ) → アラントイン --> 尿素
3) リグニン
木質素ともいう。植物の成熟した木質細胞の細胞壁に多量に存在する化学的処理や細菌の分解作用に対しても抵抗性がかなり強
く、そのため構造は明らかではないが3種ある。
紙パルプの製造工程で、リグニンの除去に亜硫酸ナトリウムを使用され、そのため製紙工場から特有の悪臭が発生する。
セルロースやその他の炭水化物と結合して存在し、セルロース(繊維素)の充填やひふくの役割を果たしており、導管、仮導管、繊
維の細胞膜の肥厚につれてセルロースの膜層中にリグニンが生成し、木化していく。
語源 ラテン語 lignum ・・・・果実の硬い部分、種子、殻
lignin ・・・・・木材
作用
@ 細胞壁に浸透 ・・・・ 強度をあたえる
A 細胞と細胞の接着剤
B 導管(水分の通導組織)に沈着し水漏れを防止
C 放射柔組織(貯蔵組織)に沈着し水漏れを防止
分解者
@ 担子菌類 担子菌亜網、菌じん類 ヒダナシタケ目
{ (白色腐朽菌)
マツタケ目
ヒダナシタケ目 ・・・・ コウヤクタケ科、サルノコシカケ科(カワラタケ属外)、スエヒロタケ科、ウロコタケ科外
マツタケ目 ・・・・・・ シメジタケ科(スギヒラタケ属、ムキタケ属、スギタケ属)
A 細菌類 ・・・・・ pseudmounas
B 放線菌
糸状菌と細菌の中間に位置、糸状を呈し、分岐形成する。
杆状体で菌体の巾は0.5μ〜0.6μ、長糸状、杆状、球菌状。
動物体内で増殖する場合、周囲に向かって放線状に菌糸を突起させる性質があり、強アルカリ性の培地に発育。
多くの放線菌は細菌、カビ、原虫などに対する抗生物質を産出する。(ストレプトマイシン)多くは褐、青、緑、橙き、黄など特徴的な
色素を生じる。
グラム陽性 嫌気性型(ヒト及び動物に放線状菌症をおこす)
好気性型(非病原性)
C 不完全菌
フザリウム ・・・・・ Cephalosporium Trichosporon Candidia
第1表 植物物質と腐植物質の元素組成の比較(コノノワ) (灰分を含まない乾物百分中)
物 質 | 炭 素 C | 水 素 H | 酸 素 O | 窒 素 N |
腐 植 酸 フ ル ボ 酸 タンパク質 セルロース ペントーザン リ グ ニ ン |
52〜62 44〜49 50〜55 44.4 45.4 62〜69 |
3〜5.5 3.5〜5.0 6.5〜7.3 6.2 6.1 5〜6.5 |
30〜33 44〜49 19〜24 49.4 48.5 26〜33 |
3.5 2.0〜4.0 15〜19 0 0 0 |
第2表 ムギワラの分解と微生物(渡辺)
微 生 物 名 | 乾 物 量 ※※) | セルロース※※) |
アスペルギルス、フラビプス(糸状菌) トリコデルマ(糸状菌) ホーマ(糸状菌) アスペルギルス、ニーガー(糸状菌、黒、コウジカビ) アクチノミセス(放線菌) 混合微生物 ※) |
71 73 74 87 89 49 |
47 62 55 79 77 27 |
第3表 新鮮植物と土壌有機物との組成比較(ワックスマン外)
新鮮植物 % | 土壌有機物 % | |
セルロース ヘミセルロース リグニン タンパク質 可溶性タンパク質 |
20 〜 40 15 〜 25 10 〜 30 2 〜 10 15 〜 30 |
3 〜 5 5 〜 8 40 〜 50※ 30 〜 35 0 |
第4表 種々の植物体の近似的化学組成(コノノワ)
試 料 | ロウ、脂肪樹脂 | タンパク質 | セルロース | ヘミセルロースと可溶性炭水化物 | リグニン |
多年性マメ科草本 根 葉 多年性イネ科草本 根 広葉樹種 葉 木材 針葉樹種 葉 木材 コケ 地衣類 藻類 バクテリア |
10 〜 12 − 5 〜 12 3 〜 5 − 20 〜 25 − − − − − |
10 〜 15 12 〜 20 5 〜 10 4 〜 10 0.5 〜 1 5 〜 7 0.1 〜 1 5 〜 10 3 〜 5 10 〜 15 40 〜 70 |
20 〜 25 15 25 〜 30 15 〜 25 40 〜 50 20 45 〜 50 15 〜 25 5 〜 10 5 〜 10 0 |
25 〜 30 10 〜 12 25 〜 30 10 〜 20 20 〜 30 15 〜 20 15 〜 25 30 〜 60 60 〜 80 50 〜 60 粘液 |
10 〜 15 5 15 〜 20 10 20 〜 25 15 25 〜 30 0 (?) 8 〜 10 0 0 |
4) セルロース
グルコース |
300〜2,500個のグルコース(ブドウ糖)が縮合して、直線に連なった分子状態をしている。 食べたセルロースはヒトの生体内では大腸に共存する微生物によって少しは分解されるものの、その殆どはいかなる酵素によっても分解されず、そのまま尿中に出てくる。 植物細胞膜の主成分、ワタの種子に生じる単細胞毛のワタ毛は純粋のセルロースである。これは人間の消化液では分解できない。 |
分解
@ セルロース分解菌類
コウジカビ科、アオカビ科、フザリウム属、ケトミウム属、ミロテシウム属、ペニシリウム属、トリコデルマ属
木材腐朽菌 ・・・・・ ハイイロカビ科、ツキヨタケ科、マイタケ科、ウスバタケ科、サルノコシカケ科(リグニンも分解)
分解の要因
セルラーゼ(Cellulase) セルロース分解酵素
(所在) ある種の菌類、細菌類、軟体動物、高等動物
(性質) 酵素反応の結果ブドウ糖(還元糖)を生ずる。
動物性及び菌類のセルラーゼの最適PHは5.5 〜 6.0、Pseudomonas7.0、耐熱性は60〜70℃、10分で失活する。重金
属、セロビオース、グルコースなどにより阻害される。
A セルロース分解細菌
地上のいたる所に生息し自然界の物質循環、つまり耕土の化学的な条件や肥効に関して重要な働きをしている。分解はCellulaseが関与
する。
この種の細菌はセルロースだけを炭素源とした場合には容易に発育することができず、ペプトンなどの添加を必要とする。その為高温菌以
外は純粋培養は困難である。自然界では他の細菌(セルロースの分解物セロビオースを利用する)と共生している。
好気性
グラム陽性 B.thermocellulolyticus.B.cytasens.
グラム陰性 Cellulomonas.Cellvibrio.Cellfalcicula.
嫌気性胞子形成菌
Clostridum Cellulosolvens. C.dissolvens.
細菌(好気条件下)
バチルス属、セルロモナス属、セロビブリオ属
放線菌
アクチノミセス属、ミコバクテリウム属
生成物・・・・・嫌気的発酵の場合は、炭酸ガスCO2、水素H2、酪酸、酢酸、アルコール、ときにメタン細菌によるメタンなど。
セルロース分解率・・・・・40〜70%。好熱性セルロース分解細菌の最適PH7.2〜7.8。発酵生産物として有機酸を生成しPHが低下する
ので炭酸カルシウム又は炭酸マグネシウムを添加する。
(注)好熱性細菌 60〜70℃を適温とし30℃以下では殆ど生育しない。温泉、熟成中の堆肥などには色々な種類が存在している。
thermophilic baeterium.B.Stearothemophilus
(参考)
5) 蛋白質
グラム染色・・・・・オランダの内科医Gram : 石炭酸ゲンチアナ紫で染色後アルコールで脱色、次にビスマルクブラウン、サフランなど
で後染色。
グラム陽性は濃染色または暗染色(タンソ菌、結核菌、ライ菌、ジフテリア菌、肺炎菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、破傷風菌、放線菌、
酵母)
グラム陰性は後染色に染まる(チフス菌、赤痢菌、大腸菌、ペスト菌、コレラ菌、淋菌、髄膜炎菌、スピロヘータ)
2. 腐植化
土壌の表層や内部で好気性菌などにより有機物の分解が行われる際に、酸素の供給が悪い(6〜8%以下)場合には還元分解(H+水素
が付加 → 酸性)が起こり、分解産物として腐植質ができること。
過湿は酸素の供給を妨げて酸化分解を阻害し、低温で栄養塩類を乏しくする。
土壌の酸性化は分解作用をする微生物の活動を促して腐植化を増大させる。また、針葉は揮発成分が多く、また炭素に比べて窒素の含有
量が少ない為に分解され難くく、同条件下で広葉と比較すると針葉の方が腐植化されやすい。
3. 有機物の分解(酵素分解を除く)
腐熟 ・・・・ キノコの発生があり、その確認をもって腐熟の完了とする。
(1) 糖類(炭水化物)、蛋白質の分解
・・・・ 細菌、糸状菌 → 分解と発熱 → 急速に増殖し栄養物質を分解し尽すと、胞子として休眠する。
(2) ヘミセルロース分解
・・・・ 放線菌(植物の細胞膜を構成する物質 → 酸および酵素によって容易に加水分解される → 単糖類 → アルコール化
→ ウロン酸
(3) セルロース分解
・・・・ セルロース分解菌(好熟成細菌)
好気性 ・・・・ 細菌、放線菌、糸状菌
嫌気性 ・・・・ 細菌(高温、嫌気的条件でよく生育する) → 分解 → 降温 → 生育停止 → 放線菌が発生
(4) リグニン分解
・・・・ リグニン分解菌(キノコ類)
(2)、(3)、(4)は生育が遅く、植物の枯死骸に腐生してゆっくりと増殖する。