T.前書
皆さんは、農薬を散布するとき太陽の落ちた夕刻以降の時間帯にすると思います。これは昼間の日光がいっぱい当っているときは、 葉の気孔は全開して酸素や体内の水分を放出したり、炭酸ガスを吸収したり、場合によっては空気中の水分なども吸収しています。 葉面散布をするのも同じような現象で気孔から水分や肥料栄養素を吸収します。
また、この葉面散布は欠乏症状に一番近いところに散布して、その部位に栄養を直接注入するわけですから、人間なら点滴かカンフル注射をするようなものです、効果は抜群です。 それだけに気孔は農薬や有害ガスなども私たちの条件の如何に関わらず吸収して作物を枯らしてしまいます。 “きのうは曇りだったので大丈夫と思ったんだけどな〜”なんて、でも日中のハウスの中は温度が高過ぎた。皆さんたちの周りでもこのような失敗事例は結構あると思います。
ハウスでのガスの被害は殆んどが窒素の分解過程に発生するものです。昔、このような事例がありました。冬場のキュウリの育苗の加温に堆肥が分解する際に出る熱エネルギーを利用しようと計画した人がいました。 苗の横に大量の堆肥を置いて育苗を開始し、最初は良かったのですが、段々分解が進んでくるとアンモニアのガスがハウス内に充満してきます。
暫くして例に漏れず、“苗は黒くなりガス害で全滅”との事でした。発想は大変良かったのですが笑えない事例でした。
是非とも、このような事のないよう、また使い方は絶対間違わないようにして下さい。
1.生の牛糞・豚糞・糞尿を使用した場合
尿素 → アンモニアへ
2.乾燥鶏糞を使用した場合
尿酸 → アンモニアへ
未消化濃厚飼料(約20%が蛋白質) → アミノ酸 → アンモニアへ
3.油カスの使用
4.尿素肥料を直接施した場合
尿素CO2(NH2)2 + H2O → CO2 + 2NH3(加水分解)
5.堆肥を施した後、土壌消毒をした場合
アンモニア ─┐ ↑(ガス化)
尿素 → アンモニア ─┼─ 亜硝酸 ・・・(×)・・・ 硝酸
尿酸 → アンモニア ─┘
土壌消毒の為に → 硝酸化成菌は全滅して → 亜硝酸は → 硝酸化しない → 亜硝酸ガスが発生
V.障害の症状
1.アンモニアガス障害
アンモニアガス → 気孔から → さく状組織に侵入 → 組織は死滅
症状 ・・・・・・ 中位以下の葉が被害、葉の表面が黒色化 ・・・・・・葉全体が壊死
写真−@ アンモニアガス障害 |
ハウスに粒状のままの尿素を追肥しました。ハウスの水分と温度によって尿素は分解してアンモニアガスとなり、
そのガス障害で真っ黒色となり枯れ上がってしまいました。 露地ならば粒状のままで追肥も可能ですが、ハウス内では必ず水で溶かして、更に0.1%程度に希釈して追肥をします。 また、鶏糞などを腐熟させないでそのまま元肥にした場合もこのような事が発生します。 但し、この場合一般には黒変した葉だけが枯れてしまい、新しく出てくる新芽には影響ありません。果菜類での窒素の追肥は、硝酸態窒素で与えなければなりません。 |
2.亜硝酸ガス障害
亜硝酸による還元作用
葉の緑の細胞の死、葉肉部が斑点状に白斑死 ・・・・・・ 水あめ状で透明
3.ガス濃度と被害
表−1 アンモニアガスの濃度と被害の割合(位田、森口氏ら)
|
表−2 亜硝酸ガスの濃度と被害の割合 (位田、森口氏ら)
|
アンモニアガス → 気孔から → 柵状組織に侵入 → 組織は死滅
症状 ・・・・・・ 中位以下の葉が被害、葉の表面が黒色化 ・・・・・・葉全体が壊死