土 壌 分 析 サ ン プ リ ン グ の 採 取 法  

                                   

更新日:2008年 8月17日

 INDEX
T. 前書き
U.
土壌のとり方 .
 1) 根はどのようになっているのか? .
 2) 土壌の採取法 .
 3) 土壌採取用の器具 .
 4) 土壌採取の個所とヶ所数 .
 5) 採土後の袋の処置 .
 6) 袋のマーキング .
V. 採水について .


T.前書き

 最近は土壌分析を導入し“自分の圃場の土の状態くらいは把握しておこう”という気運が盛んになってきた。

しかしながら、その土壌分析が精密に行われているかという点になると、私はかなり否定的に考えている。それは分析そのものが簡易的なものであるということ。特に、その一番入り口になる土壌サンプリングの採り方に至っては、全国各地を廻って見て、そして話を聞いてみて分かったことだが、随分私たちが考えてきた採土法と違っている。

そのようなデーターでは土壌の管理をしても効果は薄いし、むしろ土を悪くしてしまうのではないかと不安が残るのである。
そこで、ここではその採土方法について述べる。


U.
土壌のとり方

 (1)根はどのようになっているのか?

    図−@ 根の状態の模式図
根の状態の模式図

畑作において養分を吸収する根は図−@のように地表から約30cm位までの地下部に多く存在する。これを根群と言っている。

サンプリングにする土壌はこの根群に近い部分で採取する。
そのとり方は先ず表土10cmを跳ね除けて、概ね15cm前後の深さの所の土壌を均等に取るようにすると良い。

また、ケースによっては表土の部分や深さ20cm以下の部分を採取して検定することもある。


 (2)土壌の採取法

    図−A 土壌の採取位置図−1)
土壌の採取位置図−1)
    図−B 土壌の採取位置図−2)
土壌の採取位置図−2)
    図−C 土壌の採取位置図−3)
土壌の採取位置図−3)

一般の畑作では1畝に対して2条に植えるケースが多い。この場合、図−AのA・Bの箇所から採るようにする。図−Bの地表の部分を採取してはいけない。

ここには追肥または元肥として施した肥料成分がそのまま残っていたり、下方にある成分が毛細管現象などで地表に移動し、表面に集積または析出されているからである。この部分が混入することになれば分析値がプラスの誤差として計測される。この部分(図−Cの斜線部分)は必ず取除く必要がある。

作業の用具として予め用意した移植こてや竹べら又は塩ビ管を斜めに切断したようなもの等を用いて畝の外側からすくい取るように、静かに取除くようにする。

その部分を取除いた後、サンプルとなる図−Cの採取部分の土壌をステンレスやプラスチックなどの大さじで一杯をすくい取り新品のビニールまたはポリエチレンの袋に収める。


 (3)土壌採取用の器具

竹へらや塩ビ管以外の金属製器具はステンレス製を使用する事が望ましい。「ステンレス」と刻印があっても、マグネットが吸着するものは純粋のステンレスではないので購入する際、マグネットで吸着テストをすること。


 (4)土壌採取の個所と個所数

土壌分析はその圃場の平均値を以って、その値を表示している。従って、採取個所は多ければ多いほど正確なる。現場を巡回すると、“私の所では3箇所”とか、“表面をとる”とか、酷いところでは“1箇所で表面をチョット除けて採土し検定に出した”という所もあった。普通は分析をする圃場などを1点とするには10箇所以上を均等量混ぜ合わすのである。以下その方法を示す。

図−D 採土と位置関係−1)
採土と位置関係図

図−Dのように1畝を分析するときは、その畝から可能な限り等間隔に、且つ千鳥状に10ヶ所以上として採土し、ひとまとめにしてビニールまたはポリエチレンの袋に入れる。

図−E 採土と位置関係−2)
採土と位置関係図

図−Eののように、1ハウス若しくは1圃場の分析を依頼するときは、図−Dに準じて1圃場全体の中から10ヶ所以上を採土して混合する。

  << 注意事項 >>
@ 採取した土壌を新聞・コピー用紙・西洋紙などの上や金属の器の中で混ぜたり乾燥させたりしないこと。 このような行為は紙の漂白剤や金属、その他の成分で土壌が変化することがあり、PHやFeなどの数値が微妙に変化する。 採土したらその場で必要事項を記入し手順に従って密封する。
@ 乾燥については、分析者の方で“遠赤外線強制乾燥法”により短時間に処理してしまう。


 (5)採土後の袋の処置

写真−@ 採土後の袋の処置法
採土後の袋の処置法の写真です
<<サンプリング量は約500g>>

サンプリングの土を入れた後は袋の中の空気を出来るだけ搾り出すようにして密封する。口部は写真−@のように輪ゴムなどでしっかりと密封する。


 (6)袋のマーキング

写真−A 採土後の袋のマーキング
採土後の袋のマーキングの写真です

サンプリングの土を入れた後の袋は、識別するために粘着式の紙ラベルなどを用意し、必要事項を記入して写真−Aのようにマーキングをする。

 記述する項目は
@ 採取年月日
A 農家名
B 圃場No.またはハウスNo.
C 栽培植物名
D 植物の状態のコメント

例ば、下葉の枯れ上がり・果実曲がり又は先細りなどを記入しておく。これは分析を行う際その事項を特に配慮しながら行う。また、場合によっては再分析することもあり、大変重要な情報である。

更に、症状の悪い所のサンプル(葉や果実などの部位)を同封したり、写真を添付しても良い。悪い症状の葉などのサンプルはビニール袋に
入れて、一盃の水を入れ、しっかりと密封の上、痛まないように養生して同封する。


V.採水について

農業用水はPHをはじめとして、Na、その他微量元素が野菜つくりなどに大きく影響を及ぼす。新しく井戸を掘ったとか、生活廃水の混じる用水を使っているといったようなケースでは水質検査を行い現状を把握する必要がある。

図−E 採水方法の模式図
採水の方法図

新しく掘った井戸は少なくとも3日間以上は放水したままとする。また稼動中の井戸ではポンプが放水を開始した後、2〜3分間は放水したままにして水質が安定するのを待たねばならない。

予め洗浄して用意したポリバケツをその水で5〜6回洗浄し、再び水を注いで満杯にする。更に、洗浄し用意したポリ瓶(1g)もこの水で5〜6回よく洗浄する。

次に、ポリバケツの中にポリ瓶を沈め、そのままの状態でその瓶の口にホースを差し込み、水が十分に入れ替わったのを確認して、ホースを抜き取って水中(空気を遮断)にてしっかりと栓を締める。


= 完 =




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