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INDEX
1.植物の水分量について 2.水分の分類 3.pF−水分定数の関係 4.水分計測の原理と方式 |
4−A−1.pF 4−A−2.土壌水分定数 5.かん水 6.テンシオメーターの原理 |
7.テンシオメーターを利用した自動潅水装置 |
最近の農業事情は、例えばトマトやみかんに代表されるようにその作物の糖度を上げんが為、与えるべく潅水の量を極力控えて栽培する方法が全国の至る所で普及している。 しかしながら、私は作物の本当の美味しさは糖度も然ることながら風味つまり“コク”にあると考えている。
本来、生物と水とは切り離せないものであり、特に植物は炭酸ガスと水を以って炭水化物を合成し、そしてその炭水化物を分解 ・合成することで生命を維持している。
従って、そのような自然の摂理から逸脱した栽培方法を選択した時、植物を傷めてしまって改植しなければならないような事態が起こっている。
このページでは、今流行の潅水を制限するこの栽培法とは逆行すると思われるかも知れないが、そのような特別な栽培方法ではなく、ごく標準的な植物の代謝に配慮した栽培における水の在り方を考えて見る。
1. 植物の水分量について
植物の水分量は概ね80〜90%であると言われている。従って、植物は20〜30%の範囲で水分不足になると一時的に萎れを来たす事とな
る。
それでは、萎れが始まると、
(1) 若い葉は古い葉である下葉から水分を吸収するので、最初は下葉から萎れてくる。
(2) 日陰にある葉は吸収力が少ないので、まず最初に萎れる。
(3) 生長点は生命力が旺盛であり、他の部分が萎れようとも盛んに伸張を続ける。
(4) 果と葉については、昼間の葉の表面蒸散は大なので果から葉に水分の移動ある。また、夜間は葉から果に水分は移動する。
(5) 葉は萎れが始まると気孔を閉じて水分の蒸散を抑制する事が出来るが、根は抑制機能が無いので葉よりも先に根に生育障害を受ける。
といった状況になります。
次に、水分が50%以上の不足となった場合、植物は完全に萎れて枯れ死が始まる。
植物体内の水分という観点からみると以上述べた通りであるが、逆に潅水という点から考えるた場合、土壌水分は萎れの初期症状が現れると同時に潅水が成された場合、その萎れは回避される。
この場合の、この萎れの初期症状時の土壌水分量は60%前後となっている。また、この時の土壌水分の状態は、大孔隙の水が植物吸収かまたは流亡 ・蒸発のいずれかにより除去されて存在するのは小孔隙の水だけとなる。
この状態を水分当量(pF=3.0)と呼んでいる。
上述の土壌に潅水を行うのであるが、潅水直後においては孔隙中はすべて水に充たされており、水分の移動は無く平衡状態にある。この時の水の飽和度は100%に近い。
これを最大容水量(pF=0)と呼ぶ。
最大溶水量の飽和状態の土壌から動力で流亡させたり自然に流亡した後に存在する水分。
これを最小容水量または圃場容水量(pF=2.0前後)と呼ぶ。
2. 水分の分類
@ 重力水
A 毛管重力水
B 毛管水
C 膨潤水
D 吸湿水
E 化合水
3. pF−水分定数の関係
表−@ pF−水分定数の関係
4. 水分計測の原理と方式
A 土壌水分計
1. pF
■図−1 pF値の計測装置
従来から土壌水はいろいろな角度から、そしていろいろな尺度で分類されてきた。土壌水は土壌粒子の表面を取り巻いて存在し、
最も内側に存在する吸着水から最も外側に存在する重力水に至るまで連続的に存在し、その境界を判然と区別することは出来ない。
これら土壌水の状態の差異は本質的には吸着力の差異によるわけである。
1935年、スコフィールドは土壌に吸着されている水分を分離する力(吸引力)を水柱の高さで表示することを提案した。 その単位がpFである。但し、このpF値は水柱の高さに換算したものを対数で表示している。
言い換えれば、pF値は水柱の高さで表した土壌水分の吸引圧“h”cmの常用対数値の事である
(水柱1cmは98.07Paに相当する)
注>> Paとは圧力の国際単位(SI)のことで“パスカル”と読みます。
pF = log h
h : 水柱の高さ ( cm )
水柱10cm(980.7Pa) ⇒ log10 ⇒ pF1
pF−水分曲線を得るには、土注法や吸引法、遠心法、加圧膜法、蒸気圧法などを組み合わせて利用する。
2. 土壌水分定数
主として、土壌水分の量的特性を作物生産の立場から示したものである。
上述のpFによる分類法が提案されて以来、理論的には水分定数の重要性が薄らいだように考えられた。
しかしながら、実用的な見地からしても今なお重要な意義を持っており、実際面において大きな役割を演じている。
定数として、次のようなものがある。
a) 吸湿係数
土壌粒子表面に水分子が吸着するとき、はじめは大きな吸着熱を発生するが、次第にそれがなくなる点の含水比である。この時の
pF値は4.5 〜 6.0程度である。
この値は土壌の表面活性、内部表面積を表す指数とも考えられる。乾燥土の吸着過程では吸湿係数測定時の一つの統一基準とし
て、20℃・相対湿度98%の条件の基において求める方式がある。
b) 萎凋点
土壌水分が次第に少なくなると、そこに生育する植物は生命を維持するのに必要な水分を得る事が出来なくなり、萎凋の現象を生
ずる。このときの水分を含水比で表したものが萎凋点である。この測定方法は萎凋した植物体を飽和水蒸気中に入れて、植物の膨
圧が回復できないような状態にし、その萎凋が生じ始めるときを測定したものである。
この点は初期萎凋点=pF3.8位と言われ、この萎凋点が更に進んで枯れ死してしまう、この点を永久萎凋点(=pF4.2)と呼ぶ。
この萎凋点は作物、植物の種類によって多少は異なるが平均的にはほぼ一定値と考えられている。
他に、ポット試験による直接測定法もある。
Briggs & Shantz は次のような関係式を提案している。
萎凋点 | = | 1 -------- 0.68 |
× | 吸湿係数 |
飽和状態の土壌試料に重力の1.000倍の遠心力で50分ほど脱水した後、なお土壌中に保持される水分量を含水比で表したもの
である。この付近で大孔隙中の水は除去され、小孔隙内の水だけが残留するものと考えられている。
この時のpF値は3.0である。萎凋点とは次のような関係があり水分当量を求めることによって萎凋点を求めることができる。
萎凋点 | = | 1 -------- 1.84 |
× | 水分当量 |
d) 容水量
これには最大容水量と最小容水量があるが、何も断りのない場合は最大容水量を指す。
最大容水量とは、地下水面や停滞水面の近傍の土壌内で水の移動がなく平衡状態にあるとき、その土壌が保持している水分をい
う。このような状態では飽和度はほとんど100%に近く、空隙率を水量に換算してそれを最大容水量としている。この時のpF値は
“0”となる。
最小容水量は飽和状態の土壌から重力水を完全に除去した後に残留する水分を含水比で表したものである。
e) 圃場容水量
最小容水量と内容的には同じである。これは礫なども含む自然状態の圃場土壌における最小容水量である。
多量の降雨があった2〜3日後や灌漑の後、土壌に残存した水分を意味する。この時のpF値は“2”前後である。灌漑による水分の
補給はこの水分量まで達した時に停止すれば良いことになる。
尚、pFと水分定数の関係は表−@のようになる。
5. かん水
通常、植物はpF=3.0で萎れが始まりかけているのでpF=2.4でかん水を開始し、pF=2.0でそれを終了するのが良い。
pF = log h
h :水柱の高さ ( cm )
1 気圧 = 76 cm × 13.6 = 1033.6 g / cm2 / 20℃ ・・・・ 760 mm
水 : 1 g / cm3
13.6 g × 76 cm × 980 cm / S = 1013 × 103 dyn / cm2 < S=秒(sec.)のこと >
: 1 dyn = 1g cm / S2
1 Kgf = 980,665 dyn
760 mm = 1,013 mb ( 101,325Pa =1013.25hPa(ヘクトパスカル) = 1気圧 )
pF = 2 ・・・・・ log h = 2 → log 102
故に、pF = 2 というのは 102 ≒ 100 mbである。
pF = 3 ・・・・・ 103 ≒ 1,000 mbとなる。
以上のように理論付けが出来る。言い換えれば、土壌水分を水銀柱に置き換えることによって、そのpFを知ることができる。但し、この方法で
はpFが0 〜 2.8迄であり、1気圧以上を測定することは出来ない。このような方法の測定方式を取り入れたのがテンシオメーター法である。
6. テンシオメーターの原理
テンシオメーター
素焼き製の多孔質容器(カップ)のセンサー部とその吸引力を計測をするゲージ部の2点から構成されており、その2点を管で連結した構造をしている。(図−2)
陶器のカップ部には清浄な水が充填されている。このカップ部を土壌中の所定の深さに埋設すると、 そのカップ周辺の土壌は陶器を通してカップ内の水を吸引しようとする。そのときカップ内には吸引圧が生じ、 その差圧は連結された管を通して計器内部に予め封入された水銀の面を引き上げようとする。
この吸引圧によって移動した水銀面の高さを読み取って、その圧力の測定値とする。(図−3)。
図−2 | 図−3 |
測定範囲はpF値が0 〜 2.9である。
カップの埋設に先立って注意すべき事は土壌を充分に水で飽和したうえ、 ハンドオーガでテンシオメーター本体の直径より少し大き目の穴を掘り、所定の深さに差込し込んで埋設する。
このとき、カップと土壌の接触は密であることが必要であり、保護管の周辺にも大きな隙間が生じないよう土壌をよく充填しておく。 多量の雨または給水によって土壌が落ち着いてから測定する。計器内に気泡が入ると示度が不正確になるので、 予め内部には清浄な水を充填しておく。
最近では連続記録もでき、自動潅水装置と連結させた利用法も可能である。
7. テンシオメーターを利用した自動潅水装置
1) 自動潅水
テンシオメーターの原理を利用し、このテンシオメーターに検出器(真空継電器)を連結する。テンシオメーターは調整されたpFまで土壌水分
が減少すると、検出器によって自動的に電気回路がONとなって、潅水が始まる装置である。
検出器(真空継電器)・・・・図−4を参照
内部は充水されており、ビニールのチューブでテンシオメーター本体と連結する。
テンシオメーターが水分の減少を感知して負圧になると、その真空圧はレバーを介して電気接点をONにし、潅水を開始する構造とする。レ
バー側には負圧力に反抗する制御スプリングを取り付ける。このスプリングは函外の調整ねじで強さ(pF)を加減調整することが出来る。
潅水が始まり、やがてテンシオメーター本体には水が浸透してきて動作信号がOFFとなる。この場合OFFの信号を発するまでには暫く時
間が掛かるので水をかけすぎた状態となる。この問題を解決する為に、OFF接点としてタイマーを取り付けて水量の調整をする必要があ
る。
2) 潅水の配管法
潅水の配管法は、ループ式とする。
図−4 自動潅水指令装置結線図 |
図−5 潅水配管図(ループ式) |