基本コンセプト

 まず使用チャンネル数(楽器の数)を決めなければなりません。 できるだけたくさんの楽器を同時に鳴らす事が出来ればそれに越し たことはないのですが、そこは予算と労力の関係である程度妥協し て、まずは8チャンネルのマルチ音源システムとしました。また曲 の再現性を考慮して、音源は出来るだけ一般的なものとします。ア ンプ・スピーカーは予算の関係上あまり凝らずに、簡単なものにし ます。できれば自作でいきます。これまでの経験から、10pのフ ルレンジスピーカーを一般的なパワーICアンプで鳴らしても、結構 大きい音は出ますし音質もそんなに悪くはありませんので、簡単で いきます。所詮家では大きなスピーカーを沢山並べられないのです から、小型のスピーカーでそこそこの音量がでれば充分なのです。


まずはパソコンから

 MIDI演奏だけなら大してMPUのパワーを必要としません。一番最
初、私は386のノートパソコンで聴いていましたが、特に大きな
問題はなかったです。問題はシーケンスソフトなのです。ウィンド
ウズ用のシーケンスソフトはMPUのパワーを必要とするものが多く
て、現在使用している486マシーンではほとんどまともに動きま
せん。ですから曲の編曲をするのに、最新鋭のマシンが必要なので
す。ということでパソコンを買い換えました。こんどのはウィンド
ウズ98搭載で、MPUもCeleron333なので速いです。体感速度は
486マシーンの10倍位。冷却ファンの音も大分小さいので、音
楽を聴くのには良い買い物をしたと思っています。
 ただ困ったのはバックアップです。曲データは外付けのハードディスク
に入れていたのですが、これをフロッピーに落とすのに苦労しました。幸い
フォルダーごと圧縮して、それを分割してフローピーに落とすフリーソフトが
あったので重宝させていただきました。前の機種がNEC9800シリーズで、
今度のはDOS/Vなので、簡単にハードディスクをつなぎ替える事が出来な
かったのです。あと32倍速のCDROMは豪快な音がします。しかしインスト
ール時以外CDROMを使う機会はほとんどないので、これは我慢する事に
しました。



音源とインターフェィス

 曲の再現性を考えると作曲者と同一のMIDI音源を使用するのが望 ましいのですが、作曲者それぞれいろんなMIDI音源を使っているの で、MIDI音源選びは難しいところです。とは言うもののローランド のGS音源が一番一般的な様なので、ローランドのSC-88STProを使 うことにしました。この音源は2系統のステレオアウトプットを持 っていて、使い方次第では4チャンネルの独立した出力が可能と言う のも大きなポイントです。つまり1台のMIDI音源で4チャンネル独 立アウトプットが可能で、2台使うと8チャンネルのマルチ音源シ ステムが可能になるのです。定価が1台5万円弱なので2台で10 万円弱。通常のステレオ音源4台を買うことを考えてみれば安い買 い物です(実際は通信販売等で2割引きぐらいで手に入ります)。 ただ各種設定用のスイッチやボタン類は付いていないので、面倒 なエクスクルーシブ命令を、使わなければなりません。  インターフェイスはこれまたローランドのS-MPU64を選びました。 このインターフェィスはUSB接続なので取り扱いが楽なのと、MIDI 出力ポートを4個持っていて複数のMIDI音源を繋げるのには非常に 適しているからです。    この段階でパソコンにインターフェイス、インターフェイスに MIDI音源を接続し、エクスクルーシブ命令を使って4チャンネル独立 アウトプットが可能であることを確認しました。また複数出力ポート 対応のシーケンサーを使って、S-MPU64で複数入力ポートが使えるこ とを確認しました。そしてとりあえずこの段階で以前使っていた6チ ャンネルのアンプとスピーカーを使い、6チャンネルのマルチ音源シ ステムとしての動作確認を行いました。あとは8チャンネルのアンプ とスピーカーがあれば出来上がりです。


アンプその1

 とりあえず部品をそろえました。電子工作用のステレオアンプキッ トを4台、これで8チャンネルのアンプとします。ボリュームはスライ ドボリュームを連結して8連ボリュームとします。普通のステレオで は回転式の2連ボリュームを使いますが、8チャンネルともなると回転 式のものは特注しないと手に入らないので、スライドボリュームを並 べてつまみを連結して同時につまみが動くようにします。ここがみそ ですね。一番問題なのが、市販品がない8連ボリュームなのです。ほ かの部品は何とでも手に入ります。
 1月31日現在部品は全部集まりました。後は組み立てです。しかし この組み立てがなかなかやっかいで時間がかかりそうです。シャーシ ーに穴をあけるのに苦労してます。体力が落ちているのですぐくたび れてしまってます。気長にやるしかないようです。


アンプその2

 あまりの体力のなさにハンドドリルは諦め、電気ドリルを買って何とかシャー
シーに穴開けをしました。そして部品を取り付け、配線もOK。ではどんな音
が出るか楽しみとばかり、スピーカーとオーディオ入力をつなぎ電源スイッチ
ON。ところが雑音ばかりでかんじんの音が出ません。そこで色々調べている
うちに発振している事が判明しました。原因はアースの取り方が悪かったから
でした。これで一件落着。ようやく8チャンネルのアンプが出来上がりました
(写真1)。左側にステレオアンプ4台(写真2)、真ん中にスライドボリューム
(写真3)を配置しています。右側に将来16チャンネルまで拡張するための空
きスペースを確保しました。スライドボリュームは各チャンネルのチェック用に、
最初は連結せず単独で使います。チェックが終わった段階で連結します。


 



写真1

写真2

写真3



使用した主な部品:
 ステレオアンプキット 4台  スライドボリューム 10KΩ 8個。  抵抗100KΩ 8本(アンプのゲインが大きすぎたので、ボリューム  調節のため)。  電源アダプター 9V用。  入力ピンジャック 必要数。  出力コネクタ 必要数。  電源スイッチ。  他 配線材料、調整用抵抗。


スピーカー

 スピーカーはかねてより用意していた13センチフルレンジを使用
しました(写真4)。ボックスを作るのは大変なので、バッフル板だ
け日曜大工の店で加工してもらい、残りは植木鉢です(写真5、6)。
値段が1個150円位でしたので、すぐ買いました。ポリエチレン製なの
で普通の接着剤はつかないので、ゼリー状の瞬間接着剤を使いました。
配置は押入の上段に写真7のように並べました。これでハード的には
全て出来上がりました。






写真4

写真5

写真6

写真7




 システム概略

 各装置のつなぎ方は以下のようになっています。



インターフェイスはOUT1、OUT2のみの使用です。OUT3、OUT4も
使えば16チャンネルまで拡張できます。MIDI音源は1台で4チャ
ンネル出力できるので2台あればOKです。アンプは市販のステレオ
アンプ4台でも構いませんが、ボリュームの連動が出来ないのが難
点です。電子工作が得意な人は私のように自作すると安く仕上がり
ます。スピーカーは好みに応じて適宜選んで下さい。アンプ付きの
スピーカーを使うのが手軽な方法ですが、ボリューム連動のために、
私のようにスライドボリュームを連結した専用のボリュームボック
ス、または電子ボリュームを使ったボリュームボックスを作ると良
いでしょう。演奏ソフトでマスターボリュームのコントロールが出
来れば、それを使うことも考えられます。
 
 スピーカーの配置は自由です。ただし奥行き、高低に差をつけな
いとあまり良い音にならないようです。私は押入の上段にスピーカ
ーを並べて聴いています。一番手軽なステージですね。


ソフト及び編集

 パソコンとMIDI音源でお金を使い果たしたので、ソフトはフリー
ソフトを使うことにしました。マルチポート対応で結構良いフリー
ソフトがあります。シーケンサーではCherry(ふみぃ氏作)、
OTAMA98(MISO氏作)、演奏ソフトではDECOPLAY97(DECO氏作)、
KbMIDI Player(Kobarin氏作)、TMIDI Player(ふみぃ氏作)、
MPVG(ain氏作)等です。
 
 私は作曲は出来ないので、シーケンサーは単に簡単な編集にしか使
いません。基本的にはポートの割り振りとエクスクルーシブ命令の追
加、エフェクトの削除、パンポットの調整、チャンネル数を8チャン
ネルにする位です。
 
 良い曲なのでどうしても聴きたいけれど8チャンネルを越えている
曲は、作曲者には申し訳ないのですが、違和感がない程度に特定のチ
ャンネルを削除します。この作業は最初は大変ですが、慣れてくると
面白くなってきます。アレンジャーの楽しみというやつでしょうか。
 
 なおマルチポートに関して注意しなければならないのは、シーケン
サー固有のファイル形式でセーブする時はうまくいっても、SMF形式
でセーブ・ロードする時にはうまくいかないものや場合があるという
ことです。これはソフトが悪いわけではありません。そういう仕様な
のです。

 エフェクトの削除がなぜ必要かというと、SC-88STProではOUTPUT1
にはエフェクトがかかった音が出力されますが、OUTPUT2にはエフェ
クト無しの音しか出力されないので、OUTPUT1、2間のバランスをと
るためです。
 
 エフェクト無しでも十分聞けます。いやむしろ無い方がさっぱりと
して分かりやすいです。

 エクスクルーシブ命令は次のものを使います。

OUTPUT2のLに特定のチャンネルを出力する命令
(アウトプット・アサイン OUTPUT-2L)。
 F0 41 10 42 12 40 4x 21 02 sum F7 xはチャンネル番号、
 但しドラムス10チャンネルは0

OUTPUT2のRに特定のチャンネルを出力する命令
(アウトプット・アサイン OUTPUT-2R)。
 F0 41 10 42 12 40 4x 21 03 sum F7 xはチャンネル番号、
 但しドラムス10チャンネルは0

 例えばチャンネル1、チャンネル2、チャンネル3、チャンネル4
をポート1に割り振って、以下のエクスクルーシブ命令を使うと、ポ
ート1に繋がれたSC-88STProのOUTPUT2のLにはチャンネル3、Rに
はチャンネル4が出力されます。

 F0 41 10 42 12 40 43 21 02 sum F7
 F0 41 10 42 12 40 44 21 03 sum F7

 そしてチャンネル1とチャンネル2はポート1に繋がれた
SC-88STProのOUTPUT1にステレオで出力されますが、ここでパンポッ
トを調整してチャンネル1完全L、チャンネル2は完全Rとすれば、4
つのチャンネルを完全に分離できます。

 またポート2にチャンネル5、チャンネル6、チャンネル7、チャ
ンネル8を割り振り、ポート1の場合と同様の操作をすると、これま
た4つのチャンネルは完全に分離でき、合計8チャンネルの独立出力
が可能となります。

これらをまとめると、

CH
ポート
操作
オーデイオ出力先


パンポットを
完全L
ポート1に繋がれたSC-88STProのOUTPUT1のL


パンポットを
完全R
ポート1に繋がれたSC-88STProのOUTPUT1のR


アウトプット・アサイン 
OUTPUT-2L
ポート1に繋がれたSC-88STProのOUTPUT2のL


アウトプット・アサイン 
OUTPUT-2R
ポート1に繋がれたSC-88STProのOUTPUT2のR


パンポットを
完全L
ポート2に繋がれたSC-88STProのOUTPUT1のL


パンポットを
完全R
ポート2に繋がれたSC-88STProのOUTPUT1のR


アウトプット・アサイン 
OUTPUT-2L
ポート2に繋がれたSC-88STProのOUTPUT2のL


アウトプット・アサイン 
OUTPUT-2R
ポート2に繋がれたSC-88STProのOUTPUT2のR

となります。
注1)ソフトによってはポート1、2をポートA、Bと言うもの。又  はポート番号が0から始まるものがあります。 注2)上記エクスクルーシブ命令はポート1、ポート2両方に送らな  ければいけません。 注3)本手法は耳の悪いMIDI初心者が書いているので間違いがある  かもしれません。参考程度にとどめて下さい。詳しくは  SC-88STProの取扱説明書を見て下さい (26ページ及び119ページ)。


試聴

 フュージョン系のオリジナル曲で試してみました。さすがに1楽 器1スピーカーだけあって、各楽器の音がストレートにせまってき ます。MIDI音源のせいかシステムのせいかは分かりませんが、音の キレがとても良いです。そして贅沢なMIDI音源の使い方をしている ので音切れはありません(音のキレは良いけれど音切れはないので す)。やっぱり苦労しただけのことはありました。大げさですが、 これぞMIDIの極みと言うべきでしょう。ステレオでは絶対に味わえ ない音です。演奏の実体感があります。自分専属のバンドがそこで 演奏している様な気持ちです。    ストリングス系もなかなか良いですよ。音が濁らないので非常に クリアーに聞こえます。空気中に音がふんわり漂っている感じで、 昔生で聴いたヨーロッパのオーケストラの音みたいです(マリナー 指揮のフィルハーモニア管弦楽団だったかな)。


まとめ

・必要なもの: パソコン USB対応のものが良いです。 MIDIインターフェイス お勧め ローランドS-MPU64。 MIDI音源 お勧め ローランドSC-88STPro2台。 8チャンネルアンプ ボリュームが連動するのが望ましいです。 スピーカー 8個。小型のフルレンジか、ダブルコーンタイプが 良いでしょう。 シーケンサーソフト マルチポート対応のもの。 お好みで演奏ソフト。シーケンサーそのもので演奏させても良い です。 その他 体力、気力、そして精神力。 ・どれくらいお金がかかったか: 私の場合はパソコンを除いて15万円位でした。アンプは自作で、 スピーカーも安く手に入ったので。ソフトもフリーソフトでしたか ら。 ・今後はどうする: 12チャンネルや、16チャンネルを目指すのが1つの方向。 良い曲を集めて編集して楽しむのがもう1つの方向。 マルチ音源システムの普及を図るのがもう1つの方向。
そして、エネルギーを使い果たしてしばらくボーとしていることも 考えられます。



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