The Nightfly Donald Fagen
The Nightfly
■大人への入り口、つながるファンタジー
 「AOR」というジャンルをご存じだろうか?例えば、「ハード・ロック」に対する「ソフト・ロック」、「ポップ」対「コア」、「歌謡曲」VS「演歌」、・・・などなど、ある特定のジャンルを際立たせるためには、その対極となるものも必要である。Adult Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)略して「AOR」を訳すと「大人志向のロック」ということになる。これの対極にあるのは、もちろん一般的なロック。イメージでいうと、ライブで騒いだり、大音量で聴いたりする音楽。つまり「AOR」をイメージでいうと「暖炉のそばで、ロッキングチェアでゆらゆらしながら、ブランデーを傾け、葉巻の煙に目を細めながら聴く音楽。」(そんな大人おるんかいな)ということになる(あくまで俺的妄想なので)。

 そんな「AOR」的アルバム「The Nightfly」が発表された当時、俺は高校生だった。完璧にどこから見ても「大人志向」ではない少年だった俺は、とある夏の暑い日に男女3人づつでプールにいった。「アダルト・オリエンテッド・ガールズ」はそんな俺らを挑発するかのように、大胆かつエロな水着で先制攻撃を仕掛けてきたのだった。飯島愛もビックリな極小ビキニは、小さすぎで紐になっている。みなさん、まだ80年代初めっすよ。先取りしすぎ!! Noサポーター& Noニプレス主義な彼女たちのその部分は水に濡れると・・・。当然、周りの男どもの視線が彼女たちに集中する。が、しかし、悲しいかな我ら愛しの純粋ロックキッズはアダルト・オリエンテッドな彼女たちに、なすすべもなかったのである。

 ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーが中心となり結成されたSteely Danは徐々にライブ活動に興味を失い、よりスタジオワークに専念するようになる。当時在籍していたジェフ・バクスターとマイケル・マクドナルドが彼らの元を去り、The Doobie Brothersに加入し、そのサウンドを変えてしまったことは有名である。その後、Steely Danはその都会的で完成度の高い音楽を追い続け、「Aja」や「Gaucho」などの名アルバムを次々と発表するが、ベッカーが活動を休止したこともあり、ドナルド・フェイゲンのソロが誕生したのである。

 フェイゲン自身がライナーノーツで「50年代終わりから60年代初めの若者が抱くファンタジー」と語っているように、冒頭を飾る「I.G.Y.」がこのアルバムのコンセプトを物語っている。「I.G.Y.」とは50年代終わりに行われた「国際地球観測年」(International Geophysical Year)の略称。歌詞では『輝かしい未来が待ち受けている』と歌われているが、俺には、その未来が現実のこととなった現代(82年当時)は果たして輝いているのか?というアイロニーにきこえてしまう。他の曲もラジオ(Nightfly)や核シェルター(New Frontier)など、コンセプトとする年代には欠かせないアイテム(?)がちりばめられている。音的にもSteely Danを受け継ぎ、ジャズ、ロック、レゲエも彼のフィルターを通し、ジャケットのようにクールで、より完璧さを追求したアルバムとなっていると思う。

 俺の当時のファンタジー、「アダルト・オリエンテッド・ガールズ」は今、どこで、どうしているのだろう?会いたい・・・いや、やめとこ。もう「ガールズ」ちゃうし。

リリース 1982 Minute By Minute
おすすめ曲 I .G.Y.
これも聴くべき!!
The Doobie Brothers /
Minute By Minute
★ ★ ★ ★
Super Bad
レコードレビュー05
レコードレビュー03
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photodelic
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