ムダな音が一音もない。
ムダな言葉が一言もない。
「ジョンの魂」はもう10年以上聞いていない。それはあのアルバムが人間ジョンレノンと対峙せざるを得ないアルバムだからだ。生半可には聞けない、そんなアルバムは何枚もない。
川本真琴が「川本真琴」でデビューしたのとは対極的に鈴木祥子はデビュー17年を経て「鈴木祥子」へとたどりついた。前作は全ての楽器をこなし様々なストーリーテリングで愛のカタチを表現するアーティストとしての完成型だったが、ピアノと唄を軸にした本作にもはや仮想恋愛は存在しない。全曲が「鈴木祥子」そのもの。ドキュメンタリーも超越した正しく魂のアルバム。愛についてのたうち回る鈴木祥子にリスナーは必然的に自分との対峙を強いられる。
反省なんて別にしない、だって、してみても仕様が無い 『愛の名前』
あたし、誰を愛してたんだっけ ー? 忘れた 『忘却』
ガールズポップとかでグラビアを賑わせた「アーティスト」の殆どは消費されてどこかへ消えたが、歌うべき歌で自分の世界を築いて来た彼女は残るべくして残った。カーネーションのサポートや曲毎に変化するヴォーカリゼイションも相変らず素晴らしい。