濾過器(フィルター)については「うんちく 濾過器を考える」で説明しましたが、各濾過器に使用できる様々な濾材が市販されていて、何を買うべきか判断に困ります。濾材はタイプによって、それぞれどのような特徴なり注意点があるのでしょうか。ここでは代表的な濾材についてタイプ別にまとめてみました。 ★濾材のタイプ別特徴★ ●ウール ウールを成型したものです。上部濾過器では超メジャーな濾材です。目が細かく小さいゴミを濾し取る能力が優れるため、物理濾過用の濾材として使用されるケースが多々あります。ウール自体にもバクテリアは繁殖しますので生物濾過効果もあるのですが、たいていの場合、生物濾過はセラミック濾材等他のものに任せ、ウールは物理濾過に重点を置くという考え方が一般的です。安価で使いやすいのですが、たいへん目詰まりしやすく、耐久性が低いというデメリットがあります。洗って再利用できますが、型くずれしやすいので、あまり長期間は使用できません。この点については、1週間毎に新品に交換するというふうに使い捨て感覚で使用しても、さほどコストは高くならないのでありがたいです。 ●スポンジ 機能面ではウールと同じようなものですが、形がくずれにくく、洗浄して繰り返し使用できるので、ウールよりは長持ちします。また、安価で成型されているので、外部フィルターや水中フィルター等、濾過槽の形が決まっているフィルターの標準濾材として多く採用されています。ただし、これもウールと同じく目詰まりしやすいので、定期的な掃除が必要です。また、濾過能力もさほどではないので、外部フィルター等の場合は、セラミック濾材等に交換している人がかなりいると思われます。 ●セラミック濾材 セラミック(焼き物)が主成分です。ガラス質の素材を成型、焼結したものが多いみたいです。たいていの商品は表面をザラつかせることで、濾過バクテリアの着生のしやすさを向上し、濾過能力(濾材の表面積)強化を図っています。また、ウールやスポンジと違って、初期コストは高くつくものの、耐久性に優れており、洗浄することで長期間使用できるので、長い目で見るとコストはかなり抑えることができます。以上から、生物濾過の濾材として最もポピュラーな濾材であるといえます。飼育スタイルや使用する濾過器に合うよう、形状や大きさが様々なものが各社から発売されており、とりわけ水が汚れやすい大型魚や肉食魚飼育において、オーバーフロー型濾過器や外部フィルターで多用されています。また、上部フィルター等でも粒の小さいタイプのものを使用しているケースが結構見受けられます。 なお、製品によっては、クリオンの「パワーハウス」等、化学的にpHを調節(維持)する機能が付加されたものがあります。、購入に際しては注意しましょう。 形状面では、大きく分けてリングタイプと粒(スティック)タイプがあります。それぞれ特徴は次のような点です。
●底砂(大磯砂) 何気なく底にしかれている大磯砂ですが、実はこの底砂もバクテリアの住処として侮れません。特に底面フィルターの場合は、基本的に濾材は底砂(大磯砂)以外選択肢がありません。表面はザラついていないので、さほど濾過バクテリアは着生しないように思われますが、粒が小さく容積あたりの表面積が大きくなりますので、濾過能力は予想外に高くなります。また、濾過のたちあがり(バクテリアの定着)が早いのも特徴です。底面フィルター使用時における、砂の径の大小による特徴は次のとおりです。
以上を踏まえ、底面フィルターでは、濾過能力とメンテナンス性の兼ね合いで、2mm径くらいの大磯砂を使用するのが一般的です。もちろん大磯砂を外部や上部のフィルターにも使用できますが、重くなることや、目詰まりしやすくてメンテナンスが大変になるなど、あまりオススメできません。 ●活性炭 濾材の範疇にいれるかどうか迷ったのですが、各種濾材に合わせてフィルターに入れることも多いので、とりあげました。活性炭はそのミクロ単位の微細な孔隙を利用して、様々な物質を化学的に吸着する化学濾過(吸着濾過)を行います。しかしそのまま使用し続けると、いくらかは濾過バクテリアも繁殖するようです。しかしながら、孔隙が微細であるため目詰まりしやすく耐久性も優れず、化学性(pH等)にも影響がありそうということで、生物濾過目的の濾材としては期待しないほうが良さそうです。使用する場合は、あくまで期限付きの吸着濾材と割り切って、定期的に交換していくほうが良いと思います。 ★濾過器別濾材の使用方法・ポイント等★ ここからは、各フィルター(濾過器)毎に、使用する濾材はどのように考えれば良いかということについて解説します。 ●上部フィルター 標準では荒目と細目のウールマットを重ねて使用している場合が多いですね。しかしながら濾過能力という点ではパーフェクトとは言い難いです。そこで、せっかく濾過層に何でも入れることができますので、濾過能力アップを図るために、セラミック濾材等を使うと良いでしょう。この場合のポイントとしては、次のようなことが挙げられます。
以上、上部フィルターは外部フィルター等と比べて濾過容積は少ないものの、比較的汎用性が高く、濾材の状態もすぐに確認できるので、いろいろな濾材を試したりして、遊んだり勉強したりするには最適の濾過器だと思います。 ●底面フィルター 先述ですが、基本的に濾材は底砂(大磯砂)を使用するしかありませんので、この点はあきらめましょう。論点は次の2つくらいでしょうか。
●外部フィルター 外部フィルターは濾材がセットになっている場合、たいていはスポンジ等が添付されています。そこで濾過能力アップを図るなら、当然セラミック濾材等を使用してやればOKです。この際、上部フィルターと同じように、濾材はネット等に入れてから設置したほうが、清掃等のメンテナンス性がアップします。 ただし、外部フィルターで濾材を選択する場合に注意したいのは、濾材の状態が外から見えず、メンテナンス(清掃)にもそれなりの手間がかかるので、多少濾過能力を犠牲にしても、メンテナンス性の高い(目詰まりしにくい)濾材を選ぶ方が、後々の管理面で望ましいと思います。例えばセラミック濾材を使用するのであれば、「ちょっと目の大きいものにする」、とか、「粒状ではなくリング状のものにする」、とかいった選び方をしてみるのも手です。この点は、メンテナンス性の高い上部フィルターとは全く逆の考えで濾材選びをすべきでしょう。 また、あるいは一つの方法として、吸水ストレーナーにスポンジを被せ(専用品があることが多いが、無くても外掛け用のものが流用できたりします)、これに物理濾過(ゴミの濾し取り)を任せて、フィルタータンク内の濾材については、メンテナンス性無視で能力重視の選び方をするという考え方あります。ただしこの場合は、吸水側のスポンジが結構早く汚れて詰まってきますので、1週間おきくらいに外してもみ洗いしなければなりません。 ●外掛フィルター このタイプについては、各社から専用濾材が出ていますが、これは活性炭による吸着濾過やウールマット等によるゴミ取り(物理濾過)に重点を置いたものになっています。そこで、もしこれらのフィルターでも生物濾過機能をアップさせることを考えるなら、標準の濾材を外して、そこにセラミック濾材を入れて使用するという方法もOKです。ただしこの場合、物理濾過がほとんど期待できず、濾材の目詰まりやインペラの汚れやゴミの付着により性能低下、故障等の原因になるので、吸水側ストレーナにオプションのスポンジを取り付け、物理濾過を任せるようにしたほうが良いでしょう。このスポンジは目詰まりしやすいので、1週間に1回くらい外して、もみ荒いする必要があります。それと、標準以外の濾材を入れた場合は、濾過層全体を水が上手く流れない場合があり、プラ板でしきりをつくってやる等の改造(工夫)をしてやったほうが良い場合もあるようです。方法は、いろいろなホームページで紹介されていますから、検索してみると良いかと思います。 ●水中フィルター(投げ込み式フィルター) これも標準のウールやスポンジの代わりに、セラミック濾材などを入れて能力アップを図ることができます。ただ、やはり目詰まりはしやすいと思われますので、できれば水が入り込む部分にウールマット等を一枚挟んでおいて、物理濾過を行うようにしたほうが、濾材自体の掃除回数は減らすことができるかもしれません。 以上のとおりです。底面フィルター以外は市販のセラミック濾材等で濾過能力アップを実現することができますが、濾材の種類や大きさ等によってそれぞれメリット、デメリットがあります。どのようなタイプが最も適するかはケースバイケースです。ご自分の使用状況などから総合的に判断して、使用する濾材を決めていただければと思います。 |