第四回 2001.2.21
OVA「ねこぢる草」を買ってきた。ねこぢるの大ファンである。というわけでは、もちろんない。無論ねこぢるが嫌いなわけではなく、どちらかというと、好きなほうだ。が、それだけでは高いお金を払ったりしない。レンタルではなく、わざわざ買ってしまったのには、それなりの理由がある。
当サイトの趣旨を理解されていれば、答えは解ると思う。それは、もちろんこの作品のスタッフにある。
監督は「ナデシコ」で有名な佐藤竜雄、そしてこの作品の最大のキーマン湯浅政明の存在が最大の購入の動機となった。彼の担当は脚本・演出(佐藤竜男と共同)絵コンテ・作画監督となっており、実質、彼の為にあるような作品だといっていい。
湯浅政明。代表作は「クレヨンしんちゃん」の劇場版の作画、設定デザインなど。「クレしん」を見たことのある人ならば、その動きのおもしろさ、気持ちよさを知っているのではないかと思う。その「動き」を作っているのが彼であり、その独特のセンスと才能で注目を集めているアニメーターである。(彼の仕事については雑誌「アニメスタイル」に詳しい。)
ここ最近の傾向としてアニメは、押井監督や大友監督の流れからリアル指向の動きや表現を重視する作品が多く、また美形キャラを如何にきれいに描けるかが平均的アニメファンからは重視されがちだったため、マニアックか子供向けで地味なところでの仕事が多く、「動き」自体に魅力のある湯浅政明は、これまでおおきな注目を集めてこなかった。しかし、この「ねこぢる草」がつくられたことで、その状況は、多少変わるのではないだろうか?
ねこぢるはもともと「ガロ」という超マニアな雑誌で漫画を描いていて、自殺をきっかけに、思わぬところから火がつき、今では、カルトな人気を呼んでいる。知名度十分な原作であり、かつそのファンは、いわゆる美少女やメカといったアニメのメインストリームとは違った嗜好を持っているのではないかと思う。そういった人間が手に取ることで、この作品を見ることで、たとえ無意識であっても、湯浅政明の卓抜したセンスと才能が広く知られることになるだろう。
これはあくまで私自身の、推論ではあるが、「ねこぢる草」の企画自体が湯浅政明の為にあったのではないだろうか?ねこぢるの作品をアニメ化すれば、それなりのセールスは見込める。しかし下手なアニメをつくれば、それこそファンからブーイングものだろう。それでもアニメ化に踏み切れたのは、「湯浅政明」という才能が「ねこぢる」という才能に出会えば、必ず面白くなる。という読みがあったからに違いない。エグゼクティブプロデューサーの大月俊倫、監督の佐藤竜雄もそれを承知のうえでこの作品を作り上げた、そして湯浅政明の名が世界に浸透することを願った。私にはそんな気がしてならないのだ。
さて、肝心の本編の内容だが、「すごい」の一言に尽きる。海外のアート系アニメのコンベンションに参加させてもおかしくないくらいだ。ぜひとも見ていただきたい。
←第三回へ 第五回へ→