第八回

2001.10.29 up

ゲームのキャラデザインに嫉妬してみる。

少し前のことになるが、友人が購入したPS2のシューティングゲーム「スカイガンナー」のオープニングムービーのアニメを見せてもらった。「天空の城ラピュタ」や「未来少年コナン」などの宮崎駿テイストな戦闘機や飛行艇が飛び交うそのムービーの出来のよさにほれぼれしてしまった。

何より心引かれたのは、キャラクターとメカを中心としたそのデザインセンスのよさだ。メカは前述の通り宮崎駿テイストで、実際ゲーム全体の世界観や雰囲気も宮崎冒険ロマンといった趣。スタッフは明らかにそれを意識して作っているのだろうということが覗えてしまう。しかしキャラクターはそれとは少し異なり、2〜3頭身でマスコットのようなかわいいものになっている。線もすっきりとして、キャラのシルエットもはっきりとしたわかりやすい魅力のあるデザインだ。とにかく一目見て、「これはイイ!」と反応してしまった。

「スカイガンナー」を見ていると、「これでTVアニメつくってくれないかなあ」という考えが沸々と湧きあがってしまう。以前にもデザイン的な方向性の近いゲームで「ポポロクロイス」を見たときも、同様のことを考えていて、こちらは後に現実のものとなったわけだが、果たして今回はどうだろうか?

それにつけても、実に口惜しいことがある。それはこういったデザインセンス(世界観、設定もふくめて)のアニメ作品がオリジナル企画として中々でてこないということだ。そのくせ80年代に使い古されたようなデザインのメカばかりでてくるSF・ロボット系の作品は後を絶たないのだから辟易としてくる。ゲーム業界に才能が流出しているという話を聞くこともあるが、むしろ企画を考える(決定する)人間の頭とセンスが古いのではないかと疑いたくなる。

キャラデザインのことを問題にするとき、どうしても思い出してしまう作品がある。それは1994年に放映された TVアニメシリーズ「ヤマトタケル」だ。岸田隆宏氏(最近では「lain」「地球少女アルジュナ」のキャラデザ・作画監督など)のデザインしたそのキャラは今現在見ても、アニメの世界ではかなり異質なものだといえる。平面的でシンプル、かつかなりデフォルメを加えられた体のフォルムなど、色んな意味で特徴的なのだが最も驚くことは、手に指がない!ただの丸なのだ!

一応この作品はファンタジー色の強いロボット物で、いってしまえば異世界の物語である。その為デフォルメの強いキャラデザインでも成立し得る。しかし、そうはいってもやはり大胆だった。私も当初戸惑いを感じたが、画面でキャラが動いて演技をはじめると、これが不思議と魅力的に映ってくる。アニメのキャラデザインとしてこういう方向性もアリなんだと気付かせてくれた。

ただやはり作品の人気は今一歩伸びず最終的には短縮されて放映は打ち切られてしまった。必ずしもデザインのせいばかりとはいえないが、当時「このデザインは十年先をいっているのだよ!、それが世間様にはわからんのですよ!」と悔しがったものだ。

で、まだ10年経ってないのでやはり理解されないらしく、「ヤマトタケル」のデザインラインを継承したアニメは今だ皆無に等しい。同系統のデザインというにはちょっと強引かもしれないが「スカイガンナー」をはじめ「ポポロクロイス」「僕と魔王の世界制服」などその他、ゲームの世界では枠にとらわれず様々キャラクターデザインが起用され作品が作られていることに強い羨望を感じてしまう。ゲームとアニメの表現手段としての特性の違いというものもあるかもしれないが、今のアニメのキャラデザインには新鮮な驚きというものが欠けているのは確かではないかと思う。

キャラデザイン、絵柄の好き嫌いは常に「個人の好み」によって判断は大きく異なる。特に不特定多数の視聴者を相手にするTVアニメにおいて、個性やアクの強すぎるデザインは人を選ぶことになり、視聴者からそっぽを向かれるリスクが大きくなるのは確かだ。しかし万人受けする最大公約数的なデザインなんて本当に面白いのだろうか?


↓スカイガンナー公式HP

http://www.scei.co.jp/sd2/skygunner/


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