100ステップのパラドックス

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100個の岩を100歩離れた場所へ運ぶのに、1歩1秒かかるとします。1人1回100秒、 100人で同時にやれば100秒で全部運べますが、これ以上人数を増やしても早くはなりません。 何人かで1個の岩を一緒に持っても1歩1秒は変わらないとすれば、1000人用意してもだめです。

人間の神経系の速度は1回の処理が約5msです。物陰に白いものを見て、 人の顔か、美しい凶悪な殺人鬼か、囚われの貴婦人か、囮の人形か、咄嗟に判断して行動するまでの時間を0.5秒とすると、 この間に脳が処理するプログラムは100ステップしかありません。

現在のプログラムでは、いかに多くのコンピュータを揃えても、1台につき100ステップしかないのではこの処理は出来ません。 似たようなことをするロボットはありますが、それには高速のプロセッサを使う膨大なプログラムが組まれているはずです。 これには新しいアルゴリズムが必要でしょう。

しかし生物の脳は、これ以上のことをやすやすと、平行して処理しています。このようなシステムは、 偶然による変異の積み重ねだけで、どうして完成したのでしょう?  現在のコンピュータでランダムにプログラムを組ませていて、 充分時間をかければこのアルゴリズムが偶然に出来るのでしょうか?

だって、現実に出来ているじゃないか、というのではパラドックスのままです。 複雑な生命の仕組みは脳だけではありません。蛋白質やDNAの暗号さえ、偶然の積み重ねで出来るのを待つのには、 宇宙の誕生以来の時間130億年では不足であることが判っています。

次も、何故進化論にパラドックスがあるように見えるのかを考えてみます。


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