細胞分化

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人間の体を作っている細胞の種類は約200種類、 合計60兆個だそうです。これを作るのに必要な細胞分裂の回数は、 人間全体で約50回です。一個の受精卵から人間まで、 たった50回の分裂でどうやって眼や、化学処理を行う内臓、脳というコンピュータまで完成するのでしょう。

細胞の中で生物全体の構造を支配しているのは、DNAと呼ばれる暗号書です。これは4 個の塩基、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの組み合わせを使い、ゲノムと呼ばれる約 30文字の遺伝情報を記録しています。

この文字は、3つが一組(コドン)となり、生物を構成する20 種類のアミノ酸を指示し、その順序と組み合わせから各種の蛋白質が指定され、それが複雑な生物構造を作り上げます。 DNAには生物の設計図が含まれている、と表現されることがあります。

百科事典が7000字ですから、 30字のゲノムに人体の設計図を全て含めることは可能かも知れませんが、 実際にDNAに書いてあるのは設計図ではなく、人間の作り方、料理で言えばレシピのようなものでしょう。

料理の本に書いてあるのは、使用材料と処理の方法だけです。例えばスポンジケーキのレシピは出来上がったケーキの設計図ではなく、 外観、内部の硬さ分布、気泡の個々の位置や形状等は何も記載されていません。

レシピの順序を入れ替えるか、一部を変更するだけで全く別の料理が出来ることがあります。最後にカレールーを入れるか、 味噌を入れるかで、カレーになるかトン汁になるかが決まる、というのはそのいい例でしょう。

多種多様な生命の進化は、作り方のレシピがどこかで僅かに違っただけかも知れません。 設計図を書き換えてカエルの指を6本にするには、改定図を沢山書かねばならないでしょうが、 レシピをちょっと弄れば変異を起こさせることは容易でしょうし、実際にそのようなことは生じているでしょう。

これは多種多様の生物が誕生してきたことの一つの回答かもしれません。


人間の細胞の総数は書物によって1兆個とも1000兆個とも書かれていますが、
ここではホームページで一番多く使われている60兆個にしました。


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