獲得形質

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生命の誕生は物質の特性による必然であるのなら、「進化」も複雑系を目指す必然の過程であり、淘汰圧力だけがその原動力ではないとも考えられます。

雪の結晶は「より美しいものが残る」という淘汰によって生まれたのではないでしょう。マグネット式の碁石の繋がりは「より長いものが勝つ」という競争で出来るのではありません。

アゲハチョウの複雑な翅の模様も、「より美しいものを雌が好む」という性淘汰は存在したでしょうが、それだけであの模様が進化したでしょうか。日本人は手足が伸び、容貌が変化してきたけど、「脚が長く、ハンサムな男ほど沢山子供を作った」ということない!

栄養状態がよくなったり、生活環境が変化したことによって改造された体型は「獲得形質」であり、それは遺伝しないことになっています。しかし「使わないものは退化し、使うものは発達する」ことの説明に、ラマルクの用不用説やウォルフの法則を適用し、親の獲得形質は子供に遺伝する、と今でも主張している方もあります。(下記注)


発生した変異が「淘汰」により進化してゆくには、それが生存競争上有利でなければなりません。人間が体毛を失ったのは、毛の少ない個体の方が寄生虫を発見しやすく、生き残りやすかったからか、それとも淘汰とは無関係に、遺伝子の異常により毛のない人間が増えてしまったのでしょうか。ソース顔の日本人が増えたように?

突然変異と自然淘汰だけでは生物の「進化」を説明しきれないのではないか、ということから、ダーウィンの進化論そのものを否定し、何らかの根本法則、インテリジェントデザインを信ずる方々もあります。


ダーウィンは「自然選択が変化の唯一ではない、と繰り返し断っているのに誤解を招いてしまった」 「変異の原因と法則に関して、ほとんど未開拓の広大な研究分野が開けるだろう」と言っています。 しかしその後「進化論V.S.創造論」の論争が主となり、この予言が実現したのは、かなり後になってからでした。

進化には、「自己組織化」「複雑系」「用不用」「淘汰」等が全て関係しているのでしょうか。


(注):ダーウィンは種の起源の中で「習性や、体のある部分の用不用によって変異が生ずる」と書いており、 獲得形質は遺伝するという立場をとっています。 これは偶然の変異だけでは進化が達成される時間が足りないという批判に応えるためで、 進化論の本質ではなく、現在は獲得形質の遺伝は一般には否定されていますが、 信じている先生(仕事の上でご指導を受けたことがあるのです)の著書もあります。

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