進化はバラツキの結果?

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スティーブン・J・グールドは、生物は全て偶然の産物だと言っています。(注)

個人の資産の分布をグラフにすると、釣鐘型の左右対称ではなく、金持ちの方が裾野が広くなります。 ゼロより低い貧乏はないのに対し、大金持ちの方は限界がないからです。

この場合、個人資産の平均値は、大多数の人のものではありません。 一部の億万長者により平均が金持ちの方へ引き寄せられるからで、平均より低い人の方がずっと人数が多いのです。

人口の丁度中央の人の資産を「中央値」、一番人数が多い資産を「最尤値」と言います。 中央値、最尤値、平均値は、全員が豊かになれば一緒に増え、格差が増えれば差が開いてゆきます。 景気がよくなっても大多数は豊かになってないのと同じです。

生物の複雑さの程度をこれに当て嵌めると、億万長者に対応するのが人間、左の方がバクテリアでしょう。 もし生物には複雑化する自然の性質があり、それにより進化するのなら、生物は全体が次第に複雑な方へ移ってゆくはずです。


現実に生存する数では、今でも生物の主体は最初と同じ単純な形、バクテリアです。 畑の土一掬いには数億のバクテリアがいるし、唾液一滴には数百万がいます。

上の二つのことから、生物は全体に複雑な方向へ向けて進化したのではなく、その複雑さのバラつきが大きく増加しただけだというのです。

人間が存在するのは、複雑さのバラつきによる全く偶然の結果であり、もう一度地球の歴史をやりなおしたら、 生物界全体が全く違ったものになるだろう、というのがグールドの見解です。 これは面白い見方なので、次回もう一度考えてみます。


(注)これは淘汰以外の進化の要因なので、進化論を否定してはいません。「利己的な遺伝子」のドーキンスも、 「ワンダフルライフ」のグールドも、基本は熱心な進化論者でしょう。

上左は、僕が適当に描いたので、実際の分布曲線ではありません。 生物の複雑さの分布はもっと左側が多いでしょうし、こんな単純なカーブではないでしょう。

上右は、大富豪ハワード・ヒューズが製作した巨大飛行艇スプルースグースです。 (Wikipedia)
以前ロングビーチに展示してあったのを見ました。入ってみた内部は思ったより小さかったですが、 小さな当時のエンジンでは、8発あってもどう見ても飛びそうもない感じでした。

映画「アヴィエーター」では、幅7.5mの巨大模型が実際に離水してました。でも実機も離水はしたけど「飛び上がる」ことはなかったのですが。

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