形態可能性空間

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自己組織化による複雑化は、自己の持つ結合特性によって自然に複雑な構造を生み出してゆくでしょうが、生物全部が複雑な方向へと変化してゆくのではないことが判りました。

生物が取り得る様々な形態を多次元の空間配置で考えます。仮に二つの形態要因だけを考え、その組み合わせを二次元平面に並べ、それぞれの位置に「起こり易さ」を振り当て、起こり易さに応じた深さの穴を掘ることにします。

形態によって起こり易さが異なるとすると、色々な深さの窪みのある立体地図のような形が出来ます。起こりやすいものが接近していれば繋がって谷を作り、離れた谷の間には山脈のような高地が出来るでしょう。

実際は形態要因は沢山あるので、空間は多次元になりますが、同じように谷や窪地を考えることが出来るでしょう。

生物は細かい変異の繰り返しによって、隣接した状態へと移動してゆくと考えると、どれかの窪みに落ちたものは、より深い場所、つまりより起こり易い場所が近所にはなく、もっと深い谷が他にあったとしても、そこへ移るには周囲の起こりにくい斜面をよじ登るか、一挙に飛び越さねばならず、当分そのままの位置に留まると思われます。(注)

沢山ある生物の種は、生物の可能な姿を示す形態可能性空間の中で、それぞれ窪みに落ちている状態、つまりその近所では一番起こり易い形に達している状態だと考えます。


「形態可能性空間」という概念は僕が勝手に作ったのですが、 カウフマンの「適応度地形」と同じもののようです。カウフマンは適応度が高い形態を高いピークに例えています。

では、何が「起こり易い」のか、谷の深さ(またはピークの高さ)を決めているのは何か、ということが問題です。手にもう一本指が生えてくることや、癌の中に髪の毛や爪が生えることはあっても、背中に翼が生えてくることはまずないことから、生物の変異には、起こり易いものとそうでないものがあることは感覚的に判ります。

この件はもう少し詳しく考えてみます。


(注)このアナロジーではもう一つ「谷が一杯になってしまい、隣の谷へ溢れてゆく」という現象が考えられます。 これがどういう意味を持つのか(又は持たないのか)は、別途考えます。

上右は先カンブリア紀の原始的クラゲ(群馬県立自然史博物館)。これが後の生物の祖先かどうかは、議論があります。 現在のクラゲの祖先でもないのでしょう。

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