変化の速度

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右はダーウィンの研究で有名なガラパゴスフィンチ(Wikipedia)、
左は僕が撮った、ただのカラス。

環境の変化に対応して生物が変化する速度は非常に早いようです。では何故、種としての進化の速度は遅いのでしょう。

生物が進化により変化してゆく速度の単位に「1ダーウィン」があり、 これはある形質が100万年で1%変化する速度です。一般には生物はなかなか変化しないので、化石などから推定した速度を基にしたものなのでしょう。

ダーウィンが進化論の対象として扱った、ガラパゴス諸島のフィンチは、その後、グラント夫妻が中心となり、1973年から20年に亘り詳しく調査されました。一つの島の1000羽以上の全フィンチの種類、形状寸法、採餌習性まで連続して追跡調査したので、「フィンチを見分けられるのは神とグラントしかいない」とまで言われました。

20年の間に島は旱魃と大雨を経験し、フィンチは変化する植生に対応し、嘴や体の大きさを変化させました。研究生活に一生を捧げたとも言えるグラント夫妻により、環境の変化が変異を淘汰し、種の形態を変化させる実態が観察されたのです。


研究者にとって離島の20年は長いですが、進化の歴史上では一瞬でしょう。ガラパゴスフィンチの旱魃と大雨により観察された嘴や体重の変化の量は、前述の「進化の速度」に当てはめると、25,000ダーウィンになるそうです。100万年で250倍!

環境に対応した生物の変化は非常に早いのです。特定の薬に耐性を持つ菌や害虫はすぐ発生しますし、人為的に交配を調整すれば新しい変種が生まれます。都会のカラスは・・・


ガラパゴスフィンチの場合、旱魃によって進化した種は、また雨が戻ってくると元の姿へと戻って行きました。変異が取り返しがつく範囲の場合には、元の姿の方が有利になれば淘汰は逆向きに働くことがあるのです。環境の変化が固定されることによって、種も固定されるのでしょう。

100万年で形態が1%変化する「1ダーウィン」とは、生物自身が持っている変化速度そのものではなく、 結果として生じた進化の速度でしょう。もし進化が環境に適応した淘汰の結果であるのなら、 これは変異を誘導し定着させるよう、環境が変化した速度、ということになります。

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