種の分岐

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昔、草を食べている動物の群れがいました。そこへ、乱暴者がやってきて襲いかかりました。
みんな逃げましたが、中には遅いのがいて、追いつかれてしまいました。仕方なく何頭かは振り返って乱暴者に立ち向かいました。 乱暴者は、足がおそく抵抗もしてこなかった弱い者を捕まえて去りました。

早く走って逃げた仲間は集まって大喜び。立ち向かって成功した仲間も別に集まって大喜び。 そこで大パーティになり、一番早く走ったもの、一番強かったものがヒーローになり、一番素敵なパートナーを得ました。

走って逃げるグループと、走るのは遅いけど立ち向かって戦うグループは次第に別行動をとるようになりました。 乱暴者は、逃げるグループからは一番遅いのを、抵抗するグループからは一番弱いのを捕まえてゆきました。

逃げるグループは益々早く、抵抗するグループは益々強くなりました。逃げるグループはウマになり、抵抗するグループはサイになりましたとさ。


このお話は僕が考えたのですが、この手の「あと知恵説明」は、「キリンの首はなぜ長い」から「おそばの茎はなぜ赤い」まで、 しばしば出てきます。ナチュラリストは「だったとさ物語」(Just so story)、検証が出来ない仮説として非難します。

一部は本当かもしれません。進化は環境の変化により起こる、種の分岐は 種の一部が地域的に隔離されたことから生ずる、とされますが、全く同じ環境にいても、 いくつかの変異が同程度に有効な場合には、種は分岐するでしょう。

上のお話では、草を食べていた自然の環境には何も変化はありませんし、二つのグループは依然同じ草原で生活し隔離されていません。 分岐のきっかけは「乱暴者」の出現と、脚の早さ、戦う強さの生まれつきのバラツキです。 これらが何故生じたかについても「環境の変化」で説明できるのでしょうか。

ウマの祖先ヒラコテリウムと サイの祖先ヒラコドン(下図、Wikipedia)は 5000万年以上前に分岐したので、その頃は二つはよく似ていたのだそうです。



このような「分岐」が、数多くの生物の種類を生んだ仕組みの一つだと思います。 同一の環境下にあっても「適者生存」の結果は一つではなく、様々な「適者」を生み続けたのでしょう。
しかし何故バラツキが生ずるのか、偶然に出来るのなら何故それが長期間安定しているのかには様々な説があり、まだ謎のままのようです。

進化は環境のニッチ(異なる条件の定まった分野)に従って生じ、種の確定には隔離(地域的、季節的など) が必要だというのが一般的のようですが、木の葉に似るか、早く逃げるか戦うか、などは外因的ではなく、 内因的な変異からも生じたのではないか、というのが僕の考えです。 既に誰かが思いつき、否定されているかもしれませんが、まだ読んだことがないです。

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