牙のないゾウ

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進化のルールを敢えて単純に言えば、環境に対応して生物が変化する、ということでしょう。
問題は、その変化が何故生じ、どうやって遺伝するのか、です。毎日走って逃げれていれば、 足は速くなるでしょう。武器として使った角は丈夫になるでしょう。しかし、鍛えられた足や角は、子供に遺伝するでしょうか?

確かにたまたま生まれつき足が速いウマから生まれた子は、やはり足が速いでしょう。 でも現在の進化論では、生まれてから後に学習や環境の影響によって変化した形質は、 遺伝しないことになっています。ダーウィンは遺伝すると思っていましたが。

これは「獲得形質は遺伝しない」と表現されます。マウスの尻尾を何代にも亘って切り続け、 尾の短いマウスが生まれてこないことで、これを立証しようとした人がありました。

これは「ナンセンスな実験」と言われるのは尤もでしょう。証明されたのは 尻尾がないことは何も淘汰に有利には働かなかったので、尻尾のないマウスが増えなかった」というだけです。


アフリカでは象牙の密漁が続き、その結果生まれつき牙のない象が増えたそうです。 これは牙を取られた象の形質が遺伝したのではなく、牙のない突然変異は以前からあったけど、 生存上不利なために(結婚できなかった?)淘汰されていたのに、現在では逆に有利になってきたためと考えられます。 マウスの尻尾と象の牙は、生まれた後に変更された形質は遺伝しないことの証明になっているようです。

マウスの実験では、尻尾を切るのではなく、比較的尻尾が短かく生まれたマウスだけを選別して飼育していったら、 どんどん尻尾は短くなっていったでしょう。人間の身長同様、マウスの尻尾にも生まれつきのバラツキはあるはずですから。

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